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ヴィヴィアンの恋と革命

(27)イルザとアーサー

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「サポゲニン理事長、いつからそこに」

「あなたが呪いの核を自分に乗り移らせようと説得しはじめたところからよ」

 王都病院からマルド商会内に転移してきたイルザ・サポゲニンは、隠蔽の魔術で姿と気配を消して、アーサーたちの会話を聞いていたのだった。

「…全部、聞かれてたみたいっすね」

「ええ。どうやら以前にも、自分の身を犠牲にする禁術で薬壺やっこの呪いを解いたことがあるようね」

 いろいろバレたことを悟ったアーサーは、開き直ることに決めたようだった。

「他に方法がないことは、理事長もご存じっすよね。放置すれば犠牲者が出続けることも」

「知ってるわ」

「だったら、今回だけでも見逃してくれませんかね。解呪した後なら、どんな処罰でも受けますんで」

「以前の行為については不問とするけど、あなたが無駄に死ぬのを見逃すわけにはいかないわね。今回の件は、私たちに任せなさい。いいわね?」

「ですが…」

 アーサーが返答を渋っているところに、スカーレットがマルド家の息子たちを引き連れて戻ってきた。

「イルザお姉様、いらしていたのね」

肉蠅ニクバエ退治に間に合わなくてごめんなさいね。結局、何匹いたの?」

──全部で二十匹でしたじゃ。

 ノラオの報告に、イルザ・サポゲニンは顔をしかめた。

「ずいぶん多かったのね。皆、怪我などなかったの?」

「マルド家の長男が噛まれましたが、すぐに処置して王都病院に搬送済みです。肉蠅退治は、アーサーとヴィヴィアンのところの子たちのおかげで、問題なく済みましたわ」

「あのアーチバルさんでも太刀打ちできなかった肉蠅を、あっさりと倒すとはね…」

 感心するというよりも、半ば呆れたようなイルザのつぶやきに、アーサーが反応した。

「アーチバルって、もしかしてグリッド家の?」

「そうよ。つい昨日、一家揃って薬壺の呪いから解き放たれたばかりよ」

「解き放たれたって、一体どうやって…」

 イルザとアーサーの会話を聞き咎めたスカーレットが、口を挟んだ。

「イルザお姉様、もしかしてアーサーは、薬壺の呪いについて、知っておりますの?」

「知ってるどころか、当事者よ。そうよね、アーサー・メルリヌス?」

「まあ、そうっす……それで、グリッド家の薬壺は、どうなったっすか?」

「誰かを犠牲にすることなく、無害化されたわ。同じ方法でマルド家の薬壺を処理するために、私たちが来たのよ」

「そんな……嘘だろ」





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