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ギルド番長
76話 『ビッグでバッドなバットと、あーし』
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『────そんで、世界そのものでもあった俺様は、世界の危機にいち早く気付いたからよ。下手に動けない王に代わって邪神討伐に出かけたってわけだな』
「王が下手に動けば、世界の均衡が崩れて混沌に陥るかもしれない……。想像するだけで恐ろしいですね」
石の上で日向ぼっこをしているヒデヨシが、これでもかというくらい真剣な顔をして言った。
『まあ、フィオテリーチェのお陰でだいぶん世界が安定してるし、少しくらい王の力を使っても問題ない……。とは言っても、複数の王の力を同時にとか、連続で何回もとなるとヤバいけどな』
「デウスの旦那が、そんなに大きな存在だったとは……。お嬢のマブダチくらいにしか思ってなかったぜぃ」
灼熱さんは、メーシャから貰った豆をパクパク食べながら聞いていたようだ。難しい話を聞くと、もう、豆が進む進む。
『まあ、な。これからはそこそこ敬ってくれてもいいぜ?』
「で、その邪神に返り討ちに遭って、身体まで奪われて、はるばる違う世界のあーしのところまで来たんだね? つか、ちゃんと邪神がデウスの身体持ってんだよね? パワー吸い取って、出涸らしをどっかに捨ててる、とか無いといいんだけど」
メーシャはいつの間に用意したのか、お茶碗の白米を食べながら話を聞いていた。デウスの話がおかずだとでも言うのか。
『……まあ、そうだな。あいつら、手下どもは大したことなかったんだけどよ、ボスが予想以上にやっかいでな……。ようやく倒したと思ったらなぜか復活するし、強さ増してるし、いつの間にか俺様の体力切れるしさ。散々だったぜ! へへっ』
「復活? 強くなる? 第2形態とかそんなカンジかな? まあ、そうなら何回か倒せばいけるかな? でも、なんか違う効果なら、対策しなきゃだし……。デウス、なんかわかんない?」
ご飯を片付けたメーシャがデウスに尋ねた。
『どうだろうな? とりあえず、勝ったと思っても気を抜かずに攻撃を続けることと、イヤな感じがする半透明の粒子? を出してくるから、それに気をつければ何とかなるかもな。まあ、それでもどうにもならない時は命を最優先してくれ』
「それもそうだね。命あっての物種~っていうもんね」
「いやはや、兄ちゃんがこんな世界の一大事に関わっているなんて、ウチ、考えてもみなかったよ……」
氷河は姿勢を正してデウスの話を聞いていた。しっかり者というのはダテではないようだ。
『今は旅をしたりクエストをしたりしながら、手の届く範囲のヒト助けをしてる感じだけどな』
「そうでしたか。……もしかして、先程洞窟にいたのは、そのクエスト? をするためでしたか?」
『そういうこった。ま、メーシャはコウモリに触れたくないと逃げ出したんだけどよ。へへっ』
デウスは冗談っぽく毒づいた。
「いや、コウモリって菌がいっぱい付いてるらしいじゃん? 触りたくなくなるのも仕方ないっしょ。つか、ピリピカ鉱石さえ手に入れば、バトルしなくても問題ないし~!」
メーシャも負けじとデウスに張り合う。
『確かにコウモリは菌がたくさん付いてるけどな、それを言ったら鳩や雀だって、ネズミや犬猫だって有害な菌を持ってたりすんだろ。そもそも、今のお前じゃ並大抵の菌なら無害化できんだろうに。まったく……』
デウスは『やれやれ』と言った感じだ。
「ぐぬぬぬ……。何も言い返せない~……」
「わかりました! では、ウチが道中のバッドバットを凍らせて、戦わないようにしましょう! 先程迷惑をかけ────」
──ドゴーン!!
声を容易にかき消す程の爆音が、突如として洞窟の方から放たれた。
「なになに!?」
「なんですか!?」
「今度はなんでしょうか!?」
「祭りかぃ!?」
メーシャたちが爆音の方に目をむける。
「Gyhaaaaa!!」
そこには黒く染まった、5mくらいの大きさのバッドバットが洞窟の天井を貫いていた。
「なんで大きくなってんの……?」
『ラードロにとり憑かれて身体が変異してるんだろうな。なんだっけ? ああ……そうだ! “タタラレ”って呼び名にしたんだったな!』
「そう、タタラレ。でも、何を原因にして大きくなったかじゃなくて、大きくなったら触りにくさ倍増するのに、なんで大きくなっちゃったの? ってことね」
『ああ、そっちか。確かに、大きくなると見たくない部分まで大きくなるもんな』
「そうですね。あのバッドバット、ここからだと鼻の孔がクッキリです!」
日向ぼっこをしてゴキゲンなのか、ヒデヨシが元気よく報告した。
「いや、そんなこと報告しなくていいからね、ヒデヨシ」
「……確かに! 逆の立場なら困っちゃいますね!」
「あっしなら、風でなびく毛の波を報告するぜぃ!」
「灼熱さん、ちょっと風流なカンジにしても困るわ」
「皆さん、安心してください! あのコウモリはウチが倒して見せましょう!」
氷の豹を作り出しつつ氷河が言った。
「おお~、助かるし~。てか、良いの?」
「ええ。よく見てくださいな、あのバッドバットの肩の辺りを! あれ、ピリピカ鉱石じゃないかい?」
氷河が指を差す。
「ほんとだ! 黄色いし、電気がバチバチしてるもんね! お手柄じゃん!」
バッドバットのタタラレの両肩には、大きなピリピカ鉱石がひとつずつ付いていて、翼をはためかせる度に電気が放たれている。
「僕も戦いたいところですが、氷河さんのお手並みも気になりますし、ここは潔くお譲りしますよ!」
『くれぐれも気を付けろよ、氷河。ラードロはまだ謎が多いからな』
「ありがとうございます。……では、ハムオブザスター、氷河参ります!」
「Gryyyhaaaa!!」
氷河はバッドバットのタタラレに向かって、走っていった(走っているのは、乗っている氷の豹だが)。
「王が下手に動けば、世界の均衡が崩れて混沌に陥るかもしれない……。想像するだけで恐ろしいですね」
石の上で日向ぼっこをしているヒデヨシが、これでもかというくらい真剣な顔をして言った。
『まあ、フィオテリーチェのお陰でだいぶん世界が安定してるし、少しくらい王の力を使っても問題ない……。とは言っても、複数の王の力を同時にとか、連続で何回もとなるとヤバいけどな』
「デウスの旦那が、そんなに大きな存在だったとは……。お嬢のマブダチくらいにしか思ってなかったぜぃ」
灼熱さんは、メーシャから貰った豆をパクパク食べながら聞いていたようだ。難しい話を聞くと、もう、豆が進む進む。
『まあ、な。これからはそこそこ敬ってくれてもいいぜ?』
「で、その邪神に返り討ちに遭って、身体まで奪われて、はるばる違う世界のあーしのところまで来たんだね? つか、ちゃんと邪神がデウスの身体持ってんだよね? パワー吸い取って、出涸らしをどっかに捨ててる、とか無いといいんだけど」
メーシャはいつの間に用意したのか、お茶碗の白米を食べながら話を聞いていた。デウスの話がおかずだとでも言うのか。
『……まあ、そうだな。あいつら、手下どもは大したことなかったんだけどよ、ボスが予想以上にやっかいでな……。ようやく倒したと思ったらなぜか復活するし、強さ増してるし、いつの間にか俺様の体力切れるしさ。散々だったぜ! へへっ』
「復活? 強くなる? 第2形態とかそんなカンジかな? まあ、そうなら何回か倒せばいけるかな? でも、なんか違う効果なら、対策しなきゃだし……。デウス、なんかわかんない?」
ご飯を片付けたメーシャがデウスに尋ねた。
『どうだろうな? とりあえず、勝ったと思っても気を抜かずに攻撃を続けることと、イヤな感じがする半透明の粒子? を出してくるから、それに気をつければ何とかなるかもな。まあ、それでもどうにもならない時は命を最優先してくれ』
「それもそうだね。命あっての物種~っていうもんね」
「いやはや、兄ちゃんがこんな世界の一大事に関わっているなんて、ウチ、考えてもみなかったよ……」
氷河は姿勢を正してデウスの話を聞いていた。しっかり者というのはダテではないようだ。
『今は旅をしたりクエストをしたりしながら、手の届く範囲のヒト助けをしてる感じだけどな』
「そうでしたか。……もしかして、先程洞窟にいたのは、そのクエスト? をするためでしたか?」
『そういうこった。ま、メーシャはコウモリに触れたくないと逃げ出したんだけどよ。へへっ』
デウスは冗談っぽく毒づいた。
「いや、コウモリって菌がいっぱい付いてるらしいじゃん? 触りたくなくなるのも仕方ないっしょ。つか、ピリピカ鉱石さえ手に入れば、バトルしなくても問題ないし~!」
メーシャも負けじとデウスに張り合う。
『確かにコウモリは菌がたくさん付いてるけどな、それを言ったら鳩や雀だって、ネズミや犬猫だって有害な菌を持ってたりすんだろ。そもそも、今のお前じゃ並大抵の菌なら無害化できんだろうに。まったく……』
デウスは『やれやれ』と言った感じだ。
「ぐぬぬぬ……。何も言い返せない~……」
「わかりました! では、ウチが道中のバッドバットを凍らせて、戦わないようにしましょう! 先程迷惑をかけ────」
──ドゴーン!!
声を容易にかき消す程の爆音が、突如として洞窟の方から放たれた。
「なになに!?」
「なんですか!?」
「今度はなんでしょうか!?」
「祭りかぃ!?」
メーシャたちが爆音の方に目をむける。
「Gyhaaaaa!!」
そこには黒く染まった、5mくらいの大きさのバッドバットが洞窟の天井を貫いていた。
「なんで大きくなってんの……?」
『ラードロにとり憑かれて身体が変異してるんだろうな。なんだっけ? ああ……そうだ! “タタラレ”って呼び名にしたんだったな!』
「そう、タタラレ。でも、何を原因にして大きくなったかじゃなくて、大きくなったら触りにくさ倍増するのに、なんで大きくなっちゃったの? ってことね」
『ああ、そっちか。確かに、大きくなると見たくない部分まで大きくなるもんな』
「そうですね。あのバッドバット、ここからだと鼻の孔がクッキリです!」
日向ぼっこをしてゴキゲンなのか、ヒデヨシが元気よく報告した。
「いや、そんなこと報告しなくていいからね、ヒデヨシ」
「……確かに! 逆の立場なら困っちゃいますね!」
「あっしなら、風でなびく毛の波を報告するぜぃ!」
「灼熱さん、ちょっと風流なカンジにしても困るわ」
「皆さん、安心してください! あのコウモリはウチが倒して見せましょう!」
氷の豹を作り出しつつ氷河が言った。
「おお~、助かるし~。てか、良いの?」
「ええ。よく見てくださいな、あのバッドバットの肩の辺りを! あれ、ピリピカ鉱石じゃないかい?」
氷河が指を差す。
「ほんとだ! 黄色いし、電気がバチバチしてるもんね! お手柄じゃん!」
バッドバットのタタラレの両肩には、大きなピリピカ鉱石がひとつずつ付いていて、翼をはためかせる度に電気が放たれている。
「僕も戦いたいところですが、氷河さんのお手並みも気になりますし、ここは潔くお譲りしますよ!」
『くれぐれも気を付けろよ、氷河。ラードロはまだ謎が多いからな』
「ありがとうございます。……では、ハムオブザスター、氷河参ります!」
「Gryyyhaaaa!!」
氷河はバッドバットのタタラレに向かって、走っていった(走っているのは、乗っている氷の豹だが)。
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