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メーシャ印のカリふわタコ焼き
54話 『リフォームの匠なあーしと、タコ焼き屋さん』
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「では、いただきます……」
「……どう?」
メーシャは固唾を飲んで、店主がタコを食べるのを見守った。
いくら自分が美味しいと思っていても、個人の好みはある。万が一店主が『まずい』と言えば、いくら売れる可能性があったとしてもそれまでなのだ。
「……ああ、結構美味しいじゃないか! クニクニしてコリコリして、なかなか良い食感してるね、これ。
知ってるかもしれないけどカリふわ焼きは、味はもちろんなんだけど、やっぱり食感を売りにしてるんだよね。今のままでも美味しいと思うんだけど、このタコの食感はもしかするとそれに良いアクセントになるかもしれないよ!」
どうやら、店主はタコを気に入ってくれたようだ。
「良かった~」
メーシャは安心して胸を撫でおろした。
「生地の用意はあるし、さっそくその『タコ焼き』をつくってみよう!」
覇気を取り戻した店主は、テキパキとした動きで用意をしていく。
「店主さん、ふと思ったんだけどさ」
「なんだ?」
「カリふわ焼きってどう見てもあーしの知ってるタコ焼きと見た目おんなじなんだよね。でさ、中身だけが無いわけ。そんでさ、もしかして元々は『中身があったんだけど、何か理由があってなくしちゃった』んじゃないかな~? ってさ、あーし思うんだけど、違った?」
メーシャはタコ焼きができていくのを観察しながら、店主が嫌にならないようにふわっとした感じで尋ねた。
「元々は魚介が手軽に食べられるようにって事で作られた料理だったんだよ。だから、魚、エビ、貝なんかが入っていたんだけど、友人がやっていた頃に一時期、不漁になってしまってねぇ。それから代替案としてショウガ、ノリ、チーズを入れ始めたんだ」
「そっか……」
メーシャは他にも異世界転移者がいるかと思ったのだ。
ちなみに、デウスに訊いたら『少なくともこの時間軸、この世界においてで言うなら俺様はメーシャ以外知らねえな』とのことだった。
「よし、焼けたぞ!」
店主は皿に熱々のたこ焼きを乗せ、青のりとカツオ節、ソースをたっぷりかけてメーシャに渡した。
「おぉ! めちゃおいしそうじゃん!」
メーシャは目の前にある、念願のタコ焼きを目にしてテンションが上がる。
「な? じゃあ、さっそく食べてくれるかい?」
「わかった。じゃ、いっただっきま~す!」
メーシャはタコ焼きを『フーフー』した後、大きな口で頬張った。
「…………」
店主は黙って笑顔でメーシャを見守った。会心の出来だったので、なにも心配はしてなかったのだ。
「ん~、おいしい~! これこれ、これだし~!」
メーシャは自分が望んでいたタコ焼きに出会えて、もうテンションマックス。抑えきれずにジタバタとするしかなかった。
「それ、私も食べてみようかな。……ほう! これはこれは……」
店主が目を見開く。
「ね? おいしいっしょ!」
「と言うより、まるであるべき所に戻ったようじゃないか……!」
店主はよほど気に入ったのか、ふたつみっつとドンドン食べ進めていく。
「そう、そうなんだよね! タコ焼きはタコがあってこそ、タコがないタコ焼きは“焼き”だかんね……!」
メーシャは『うんうん』と頷いて、ようやく理解してもらえたことを噛みしめる。
「それじゃ、さっきの旗を店前に出して、この『タコ焼き』? を売ればいいんだっけ? ……あれ、どこだ?」
店主は旗がどこにあるか見回して探す。
「ちょい待ち!」
だが、メーシャがそこでストップをかけた。
「ん?」
「あのね、言いにくいし失礼かもしんないけどさ、お店汚れてるし、寂れすぎ。それに、ちょっと他にも思う事あんだよね」
「……正直だね」
「ごめんね。あーしウソはつけないからさ」
「いいけどね。それで、どうするつもりなの?」
「リフォームすんの」
「改修工事するにもお金と時間がかかるし、そんなことしてたらお店を開けるようになった頃にはもう期限切れだよね」
さすがにリフォームは無理と思ったのか、店主は呆れ気味だ。
「あ、このメーシャちゃんのこと、侮ってるな? おけおけ! じゃあ、あーしのパワー見せたげる」
メーシャは髪を後ろにまとめて、本気モードに入る。
「パワー? って言ってもね、数日とかでどうにかできる状態じゃないし……。それに、さっきも言ったけど借金があるから、お金はかけられないよ?」
意見は至極真っ当だ。
「甘い! あーしはこう見えて、めちゃお金持ちだから! いや、リフォームはあーしだけでやるから、それはどうでも良いんだけど、とにかく、店主さんは外で待ってて! あーしが言うまで入っちゃダメだかんね! いい?」
しかし、そんな事ではメーシャは止められないのだ。
「でも……」
しかし、そう言われても店主も引き下がれないのだ。
「わ~かった! 暇して待つのは大変だもんね! じゃあ、1時間。1時間だ!
それでリフォームを終える。ついでにお小遣いあげちゃう。それに、灼熱さんとヒデヨシを護衛につけるし。これでいい?
つか、それ以上は思いつかないから勘弁してくれると助かるんだけど……」
メーシャなりの妥協案を提示した。そして、店主の答えは……?
「……そこまで言うなら」
「っし! じゃ、そういうことで!」
メーシャはヒデヨシたちを呼んで店主の護衛兼、話し相手になるように伝えると、スマホで店主にお金をいくらか渡して外に出した。
これで心置きなくリフォームに専念できるようになったのだった。
「……どう?」
メーシャは固唾を飲んで、店主がタコを食べるのを見守った。
いくら自分が美味しいと思っていても、個人の好みはある。万が一店主が『まずい』と言えば、いくら売れる可能性があったとしてもそれまでなのだ。
「……ああ、結構美味しいじゃないか! クニクニしてコリコリして、なかなか良い食感してるね、これ。
知ってるかもしれないけどカリふわ焼きは、味はもちろんなんだけど、やっぱり食感を売りにしてるんだよね。今のままでも美味しいと思うんだけど、このタコの食感はもしかするとそれに良いアクセントになるかもしれないよ!」
どうやら、店主はタコを気に入ってくれたようだ。
「良かった~」
メーシャは安心して胸を撫でおろした。
「生地の用意はあるし、さっそくその『タコ焼き』をつくってみよう!」
覇気を取り戻した店主は、テキパキとした動きで用意をしていく。
「店主さん、ふと思ったんだけどさ」
「なんだ?」
「カリふわ焼きってどう見てもあーしの知ってるタコ焼きと見た目おんなじなんだよね。でさ、中身だけが無いわけ。そんでさ、もしかして元々は『中身があったんだけど、何か理由があってなくしちゃった』んじゃないかな~? ってさ、あーし思うんだけど、違った?」
メーシャはタコ焼きができていくのを観察しながら、店主が嫌にならないようにふわっとした感じで尋ねた。
「元々は魚介が手軽に食べられるようにって事で作られた料理だったんだよ。だから、魚、エビ、貝なんかが入っていたんだけど、友人がやっていた頃に一時期、不漁になってしまってねぇ。それから代替案としてショウガ、ノリ、チーズを入れ始めたんだ」
「そっか……」
メーシャは他にも異世界転移者がいるかと思ったのだ。
ちなみに、デウスに訊いたら『少なくともこの時間軸、この世界においてで言うなら俺様はメーシャ以外知らねえな』とのことだった。
「よし、焼けたぞ!」
店主は皿に熱々のたこ焼きを乗せ、青のりとカツオ節、ソースをたっぷりかけてメーシャに渡した。
「おぉ! めちゃおいしそうじゃん!」
メーシャは目の前にある、念願のタコ焼きを目にしてテンションが上がる。
「な? じゃあ、さっそく食べてくれるかい?」
「わかった。じゃ、いっただっきま~す!」
メーシャはタコ焼きを『フーフー』した後、大きな口で頬張った。
「…………」
店主は黙って笑顔でメーシャを見守った。会心の出来だったので、なにも心配はしてなかったのだ。
「ん~、おいしい~! これこれ、これだし~!」
メーシャは自分が望んでいたタコ焼きに出会えて、もうテンションマックス。抑えきれずにジタバタとするしかなかった。
「それ、私も食べてみようかな。……ほう! これはこれは……」
店主が目を見開く。
「ね? おいしいっしょ!」
「と言うより、まるであるべき所に戻ったようじゃないか……!」
店主はよほど気に入ったのか、ふたつみっつとドンドン食べ進めていく。
「そう、そうなんだよね! タコ焼きはタコがあってこそ、タコがないタコ焼きは“焼き”だかんね……!」
メーシャは『うんうん』と頷いて、ようやく理解してもらえたことを噛みしめる。
「それじゃ、さっきの旗を店前に出して、この『タコ焼き』? を売ればいいんだっけ? ……あれ、どこだ?」
店主は旗がどこにあるか見回して探す。
「ちょい待ち!」
だが、メーシャがそこでストップをかけた。
「ん?」
「あのね、言いにくいし失礼かもしんないけどさ、お店汚れてるし、寂れすぎ。それに、ちょっと他にも思う事あんだよね」
「……正直だね」
「ごめんね。あーしウソはつけないからさ」
「いいけどね。それで、どうするつもりなの?」
「リフォームすんの」
「改修工事するにもお金と時間がかかるし、そんなことしてたらお店を開けるようになった頃にはもう期限切れだよね」
さすがにリフォームは無理と思ったのか、店主は呆れ気味だ。
「あ、このメーシャちゃんのこと、侮ってるな? おけおけ! じゃあ、あーしのパワー見せたげる」
メーシャは髪を後ろにまとめて、本気モードに入る。
「パワー? って言ってもね、数日とかでどうにかできる状態じゃないし……。それに、さっきも言ったけど借金があるから、お金はかけられないよ?」
意見は至極真っ当だ。
「甘い! あーしはこう見えて、めちゃお金持ちだから! いや、リフォームはあーしだけでやるから、それはどうでも良いんだけど、とにかく、店主さんは外で待ってて! あーしが言うまで入っちゃダメだかんね! いい?」
しかし、そんな事ではメーシャは止められないのだ。
「でも……」
しかし、そう言われても店主も引き下がれないのだ。
「わ~かった! 暇して待つのは大変だもんね! じゃあ、1時間。1時間だ!
それでリフォームを終える。ついでにお小遣いあげちゃう。それに、灼熱さんとヒデヨシを護衛につけるし。これでいい?
つか、それ以上は思いつかないから勘弁してくれると助かるんだけど……」
メーシャなりの妥協案を提示した。そして、店主の答えは……?
「……そこまで言うなら」
「っし! じゃ、そういうことで!」
メーシャはヒデヨシたちを呼んで店主の護衛兼、話し相手になるように伝えると、スマホで店主にお金をいくらか渡して外に出した。
これで心置きなくリフォームに専念できるようになったのだった。
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