上 下
25 / 49
幼女+紳士さん

21話 〜やんちゃというより歴戦の猛者〜②

しおりを挟む
「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ……。何という速さだ。最後まで、追いつく事すら、できなかったぞ……!」
 息も切れ切れで倒れこむようにステラの待つ牧場の入り口に辿り着いたゼティフォール。
「ステラのかちー!」
 ステラは嬉しそうに跳ね回っている。
「まだそれ程までに元気を残していたか。おそるべし……」
 受付近くに設置してある椅子に、ゼティフォールはよろよろと座った。
「ジュース買ってくる?」
 まだ息が整わないゼティフォールに、ステラが訊いた。
「はあ、はあ、売っているのか?」
「うん、あそこ!」
 ステラは自動販売機を指さした。
「あれで、買えるのか……。便利なモノだな」
「それで、かう?」
 ステラは再度ゼティフォールに確認する。
「待て……。はあ、ふう、試乗の料金は……」
 ゼティフォールは料金表を探す。
「ひとり3700ディアですよ」
 受付のヒトが先んじて答えた。
「ああ、ありがとう。ふむ……。よし、すまないがステラ、これで買ってきてくれ」
 財布の中身を見て、足りるのを確認したゼティフォールは小銭をステラに渡した。
「はーい」
 ステラはお金を受け取ると、近くに設置してあった自動販売機に駆けて行った。
「あのまま別の所で何かを買っていたら、足りぬところであったわ……」
 ステラに渡した小銭を省くと、もう財布の中身は試乗体験ふたり分丁度しか残っていなかった。
「はい!」
 戻ってきたステラがゼティフォールに飲み物を渡す。
「助かる……。何故、牛乳なのだ?」
 渡された飲み物のパッケージには、“特濃牧場牛乳”と書いてある。ついでにステラも同じものを持っている。
「え? チョコにあうでしょ?」
 ステラは何故牛乳がいけないのか分からないようだ。
「まあ、相性は良いだろうが、私は喉が渇いてしようがないのだ。お金は? 釣りはどうしたのだ」
 ゼティフォールはステラに手を出した。
「これだけー」
 ステラはポケットに入れていたお金をゼティフォールの手に乗せた。
「40ディアしかないのか!」
「あ、紳士さん当たってますよ!」
 ゼティフォールが頭を抱えていると、他の利用者のヒトが声を掛けてきた。
「む、何が当たっているのだ?」
 ゼティフォールが顔を上げると、自動販売機が軽快な音楽を奏でつつ光っている。
「自動販売機、早く飲み物選ばないと貰えないですよ!」
 そのヒトは急いた口調でゼティフォールに言う。
「よく分らぬが、み、水を頼む……!」
 結局何がどうなって事になっているのか、自分がどう動けばいいか分からなかったゼティフォールはその利用者さんに水を頼んだ。
「はいどうぞ、水ですよ」
 そのヒトは水のボタンを押して、出てきた水をゼティフォールの所まで持ってきてくれた。
「ありがとう。貴殿は命の恩人です……」
 ゼティフォールは座りながらも礼をして水を受け取る。
「はははっ。子どもの体力は底なしかって、思えるくらい元気ですもんね!」
 そのヒトは楽しそうに笑う。
「ごく、ごく、ごく……。ぷはぁっ! 百年越しに朝日を浴びた気分だ!」
 水を飲んで元気が戻ったのか、ゼティフォールは清々しい顔をしていた。
「もう大丈夫そうですね。では、俺は帰りますので、さようなら!」
「はい。お気をつけてさようなら」
「さよーなら」
 ゼティフォールは立ち上がり、恭しく挨拶を返した。それを見てステラも後に続く。
「いいヒトだったね。チョコたべる?」
「そうだな。……ここで食べて良いのだろうか?」
「あ、大丈夫です。そこのテーブルを使ってもらっていいですよ」
 聞いていたらしく、受付のヒトが即座に答えた。
「助かる」
「ぅおー!」
 ステラは喜びのあまり唸りを上げる。
「では、開けるぞ?」
 ゼティフォールは紙袋から箱を取り出して、近くのテーブルに置いた。
「うん……!」
 ステラの瞳は、もうチョコレートの箱以外映していない。
「それ!」
 ゼティフォールが箱を開けて中に入っていたチョコレートが露わになる。一度店頭で見たモノではあるが。
「きゃー!!」
 ステラの喜びは頂点に達し、思わず叫んでしまった。
「おっと、ステラ喜ぶのは良いが、少し声を小さくしなさい。それに踊りも控えて。受付のお兄さんが驚いてしまっているぞ」
 ゼティフォールは謎のダンスを踊っているステラに注意する。受付のヒトは苦笑いをしている。
「……は~い!」
 注意されても気は落とさず、少しだけ声を落としつつ返事をした。
「ほら、戻ってこないと先に食べてしまうぞ」
 ゼティフォールはチョコレートをひとつ摘まんでステラに見せた。
「たべるたべる!」
 それを見たステラはダンスを止めて、急いでテーブルの所に戻って椅子に座った。
「はい、よく味わうのだぞ」
 ゼティフォールは戻ってきたステラにチョコを渡す。
「うん。いっただきまーふ。ん~、おいしー!」
 待ちきれないステラは、いただきますの“す”を言い終える前に口に入れた。
「そうか、牛乳もあるぞ」
 ゼティフォールはステラに牛乳も渡す。
「うん。ごく、ごく……。きゃは~! おいしー!」
 ステラはよほどお気に召したのか、目を力強く瞑ってじたばたしている。
「ふむ。それ程までに美味そうに食べられると、買って良かったというものだな。では、私も……」
 ゼティフォールもチョコレートを口に放り込んだ。
「ふむ。間違いないとは思ったが、高いだけあって美味いな。甘いモノ好きも満足できる甘さでありながら、ラズベリーソースの酸味が調和する事でくどさを感じさせにくくしているのか……。これは牛乳によく合う」
 中々のお値段で、ゼティフォールは4個も買ってしまったのを後悔していた。だが、お値段以上の美味しさだったので考えを改める事となった。
「ないなった!」
 ステラはもう自分の分の2個を食べてしまったようだ。
「味わえと言っただろうに。……私の分も食べるといい」
 少しぼやきながらも、ゼティフォールは残っていた最後のひとつをステラにあげる事にした。
「いいの!?」
 驚いたステラは、目を丸くしてチョコとゼティフォールを何度も見比べる。
「ああ。私よりステラの方がこのチョコレートを美味しく食べるからな、その方がきっと作ったヒトも喜ぶだろう」
 そう言ってゼティフォールはステラの口にチョコレートを放り込んだ。
「あ、む! おいしゃー」
 ステラはまたじたばたしてチョコレートを堪能した。
「少し大げさではないのか? ふふっ」
 その姿にゼティフォールは少し笑ってしまった。


「──────やんちゃだったり、おとなしかったり、皆性格は色々ですがヒトに慣れていますので、本気で噛むことはまずありません。ですが、急に大きな声を出したり、叩いたりすると驚いて暴れてしまうかもしれません。ですから、できるだけ優しくしてあげてくださいね。そうすれば、きっと仲良くなれますよ」
「はーい!」
 指導員の女のヒトが一通り説明した後、ステラが大きな声で返事する。
「いい返事ですね~。お名前は、なんですか?」
「ステラ!」
「では、ステラちゃん。どの子に乗ってみたいですか?」
 指導員さんがステラに色んな種類のモンスターを指さして訊いていく。
「どうしよ~」
 ステラが悩むのも無理はない。種族がひとつだけなら見た目や雰囲気で選べば良いが、ここにはイノシシ型、鹿型、馬型、トカゲ型、ウシ型、ウサギ型等、他にも色んな種類のモンスターがいたのだ。
「しんしさんからきめて!」
 悩んでしまって一向に答えが出なかったステラは、ゼティフォールに先に選ぶよう言った。
「私か?! そうだな……。すまない指導員さん、一番おとなしくて噛まない種はどれだろうか?」
 このような事を訊くのは少し恥ずかしかったが、万が一、そう万が一噛まれてしまったら抜け出せる自信が無かったのだ。
「ははは。そうですねー。“走りトカゲ”はどうですか? 爬虫類型なんですが人懐っこくて、それに果物なんかをメインに食べる草食モンスターですよ」
「ほう。草食ならばヒトを食べる事もないし、人懐っこいなら襲う心配も少なそうであるな。では、その子にしよう!」
 ゼティフォールは即決した。
「しんしさんはトカゲかー。じゃあステラは……、イノシシ!」
 ステラは楽しそうに言った。
「“ヤマクズシ”はやんちゃな子だけど、大丈夫かな?」
 指導員さんが心配そうに訊く。
「なかなか強そうな名前であるな、そのヤマクズシとは。どのようなモンスターなのだ?」
「ヤマクズシは、大きな個体ですと体長5m、体高3mに達する大型の雑食イノシシモンスターです。名前の由来はその長くて強靭な牙で、小さな山を崩してしまったという逸話からきているんです」
「……それで、そのような種、本当に乗れるものなのか?」
 ゼティフォールは恐る恐る訊いた。今の話だけなら、もし怒らせてしまえば命はなさそうだ。
「ああ、ここにいるのは小さいですし、騎乗用に育てているので問題ありませんよ。ですが、ちょっとやんちゃな子なんで、お子さんにはあまり向かないな、と思いますが……。ほら、あそこの」
 指導員さんの指し示す場所には、確かに説明よりは小さいかもしれないが、体長4m近くありそうな、いや牙の長さを含めれば4mを優に超える大きさの“ヤマクズシ”がいた。
 そして、片方だけ半端に折れてしまっている牙と、所々ついている傷跡が、そのさがちょっとで済まない事をを物語っている。
「……ステラ、あのヤマクズシは危ないのだ! ほら、他のモンスターはどうだ? ウサギなんて可愛くて良いのではないか?」
 ゼティフォールは説得を試みるが、
「や! ヤマクズシにのるの!」
 ステラの意思は固い。
「怪我をしたらどうするのだ! いや、あれは怪我で済めばまだ良い方だぞ」
 ゼティフォールはそれでも諦めず再度ステラを言い聞かせようとする。
「そんなに……?」
 一瞬迷いが見えるが、
「そこまで心配する程危険ではないですけどね、私もいますし……」
「きけんじゃないなら、ステラのりたい!」
「指導員さん、少し静かにしてください! 今せっかく揺らいだというのに!」
 指導員さんの言葉で熱が入ってしまった。
「ああ、すみません。良い子なんですけどね……」
「ほら! いいこって、いってるよ!」
 今度は逆にステラがゼティフォールを言いくるめようとする。
「きっと、あれだ。そう、どのような強力なモンスターであっても、余裕で倒せる程にこの指導員さんは途轍もなく強いのだ。故に危険ではないと言ってるのだ。そうであろう、指導員さん!」
 ゼティフォールは早口になりながら指導員さんに話を振った。
「う~ん。そこまで強いわけではありませんが、それなりに自身はありますねー」
 強いと言われるのがまんざらでもないようで、指導員さんは乗せられてしまう。
「むー! しんしさん、わがままだよ!」
 ステラが怒る。
「怒っても無駄だ」「あ!」
 ゼティフォールは最後の詰めをしようとするが、
「危険なものは危険なのだ。どのような相手であれ、」「やた!」
 ステラは何かに気を取られて、ゼティフォールの話を聞いていない。
「侮って挑めば足を掬われる事になるのだ。なあステラ、聞いているのか?」「むふふ~」
 しかし、ゼティフォールの声は届かない。
「まったく、せっかく私が話していると、……くすぐったいな。いうのだから最後まで、何だ少し刺さる……?」
 ゼティフォールは首元にまとわりつくゴワゴワな毛に、集中を乱される。
「何だこれは……」「あ、きづいた!」「きっと驚かれますね!」
 眉間にシワの寄っているゼティフォールと裏腹に、ステラと指導員さんは楽しそうに笑う。
 そして、痺れをきらしたゼティフォールは、邪魔するモノの正体を暴いてやろうと振り向いた。
「誰だ、話を邪魔するやつ、は、ヤマクズシ────────!?」
『ブフォオ!』
 ゼティフォールは驚きのあまり、盛大にひっくり返ってしまった。
「ヤマクズシー!」「ヤマクズシー!」
 そしてしばらくの間、ステラと飼育員さんの笑い声が響いたという。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です

堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」  申し訳なさそうに眉を下げながら。  でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、 「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」  別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。  獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。 『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』 『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』  ――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。  だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。  夫であるジョイを愛しているから。  必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。  アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。  顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。  夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。 

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...