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紳士さん
2話 〜暗躍の怪物〜
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────あれから数日が経った。
粉々にならずに済んだ兵士や家臣達はそれぞれ情報収集、もしくは本来の仕事に戻っていた。しかし、ゼティフォールはまだ睡眠をとらずにスケルトン達を蘇生している。
魔王軍で蘇生魔法ができるモノは微力ながらも協力しているが、数が数だけになかなか終わらない。蘇生魔法が使えないモノも結界を張って吹き飛ばされないようにしたり、散乱する骨を集めている。
とは言え、兵士や家臣達まで寝ずに働かせるわけにもいかず、殆どはゼティフォールが担っているのだ。
「39987、39995! ふう……、甦れ! 40000!!! これで、は、半分か。っはあ、はあ、はあ……。流石に魔王といえど、寝ずにこの数を甦らせるのは疲れるな」
ゼティフォールは目の下にクマをつくり、くせ毛の髪は余計にボサボサ、心なしか眉間のシワも深くなっていた。しかし、まだ約半分残っている。
「ふむ、妙に魔力がうまく流れぬうえに、体にあまり力が入らぬ。まだ目が覚め切っておらんのかと思ったが、何か原因があるのか?」
ゼティフォールは手を何度か握ったり開いたりしつつ考える。
「もしや魔力路が焼けているのか? しかし、そのようなこと在りうるのか。いや、まだ弁が閉じているだけの可能性も捨てきれぬが……」
マナと心身、そして体外を繋げる魔力路。これは誰にでも有るが個体差があり、魔法を使ったり瞑想する等して鍛えられるが、才能によって扱える行と扱えない行がかわってくるのだ。
「おまえ、いい骨してるな~」「おまえこそ目元の穴の角度、鋭くてカッコいいじゃねえか」
「ケタケタ~」「骨にも個性、あるもんだなあ」「俺の筋肉が…………」
スケルトンたちは疲労困憊のゼティフォールをよそに、体が戻った順から自由にしていた。
「ごはんよ~~~♪」
このよく通る女性の声の主は、魔王城の食堂長。ふくよかな体型でエプロンをかけた、衛生兵長も兼任している凄腕のゴースト。
生身の兵士達にはできたてのパスタを。スケルトンや実体のない兵士達は半透明な骨付き肉、幽肉を配られた。
半実体のこの肉は、普通の食事をとれないスケルトン等も吸収してエネルギーに変換できる優れもの。しかし、生身のモノが食べれば殆どはうまく吸収できず、お腹をこわしてしまうのだ。
「どうも、セモリーナおばさん。ちょうど休憩しようと思ったところでしたので、助かりました」
「あらゼタちゃん、また無理しちゃって。 これでもお食べ」
魔王たるゼティフォールを"ゼタちゃん"と呼び、ゼティフォールも敬語で話してしまうこの彼女は、魔王軍発足前からの古参である。それに面倒見が良い人柄から、皆から慕われお母さんのような存在だ。
「トマトソーススパゲッティですか。ほう! トマトとオリーブオイルのいい香りだ」
「ゼタちゃんはニンニクが苦手だったから、ひとつだけ入れてないわ」
ゼティフォールは貰ったパスタを木でできたテーブルに置き、さっそく口に運ぶ。
「いただきます。ふむふむ、美味い。美味いな。これは美味い……」
好物を食べる手と口は止まらない。しばらく眺めていたセモリーナはふとおもった。
「スケルトンさん達を復活させるのは良いんだけど、何か補助魔法でも使って範囲を広げることはできないの?」
「え?」
「いやね、お仕事の合間に少し見てたんだけど、ちょっと考えちゃったのよ。そんな便利な魔法、流石に無いわよね? 魔法が得意なゼタちゃんだもの、知ってたら使うのが普通よね。ごめんね、老婆心がでちゃったわ」
「いえ、殆ど魔法は感覚で覚えているので、全てを把握しているわけではないんです」
「そうだわ、作っちゃえないかしら!? 魔法なんて、もともと誰かが考えたものでしょ。あたしもいくつかオリジナルの魔法作ってるし、いけないかしら?」
ゼティフォールは不意を突かれ、ぼんやりしていた頭に稲妻が走る。思わず立ち上がり、
「それだ!!」
と、叫んだ。
「ふぁ?! びっくりしちゃった」
「無ければ作ればいい。なぜ、そのような簡単な事を思いつかなかったのだ…………」
ゼティフォールはスッキリとした気分になり、空を見上げる。よく晴れていて心地よい朝だ。
セモリーナは満足して、皆の食器をカートに回収していく。
「へ~。魔法ばっかりの気難しい頭でっかちかと思ってたんだが、案外可愛げあるじゃねえか。ははっ!」
皿を返しに来たついでに話が聞こえたのか、ひとりのスケルトンが話しかけてきた。
「うるさいぞ」
ゼティフォールは軽く睨んだ。
「怒らせちまったか? すまないな、はははっ。そうだ、この姿になってからは初対面だったな、ダンテだ。久しぶり、魔王さん」
このスケルトンことダンテは、並のスケルトンよりひとまわり太く、強靭な骨を持っている。腰から下は白銀を基調とした重装鎧だが、上半身は何も身につけていない。
そして、彼は不死身という言葉の通り何度倒しても必ず立ち上がり、最後は勇者と共に魔王を倒した英雄。光の戦士ダンテである。
「ああ、ダンテか。あれ程鍛え抜かれた筋肉も骨になってしまえば見る影もないな」
「残念で、しかたないぜ……」
「そういえば、何でスケルトンさんだらけになっちゃったのかしら? 昨日までは殆ど生きてるヒトでお仕事してたのに、今はお城の中がスケルトンだらけよ」
手早く食器を回収し終えたセモリーナが、質問をなげかける。
「多分、神が私が世界を救うのに手助けが必要だろうと嘗ての魔王軍や仲間等を蘇らせたのでしょう。しかし、長い間魂が消えずに残っていたとは皆、なかなか執念深い」
「オレ達は敷地内にある集合墓地で寝てたんだけどよ、急に起こされたと思ったらさっそくチャピランとぴーころさんに仕事の割り振りされてな。つうか、あいつらずっと起きてたのかよ! 寿命どうなってんだ?」
「遅いと思っていたらチャピラン、そのような事をしていたか。抜け目ないな」
「ヒトが多いと助かるからいいんだけどね。あ、そろそろ仕事にもどらないと。新人さんの教育もしてあげないといけないからね」
「ごちそうさまでした、セモリーナおばさん」
「うっし、オレも戻りますぜ魔王陛下。骨を鍛えねえといけないからな」
「ダンテ、お前は何の仕事を割り振られたのだ?」
「んぁ? ああ、城の警備だな。とはいっても、攻めて来る奴はいねえみたいだし、万が一来ても城にも城下にも強いやつばっかりだから、今はせめて万が一の時に遅れをとらないように、しっかり鍛えるのが仕事だな。魔王さんも、無理すんなよ! へへっ」
そう言うとダンテは訓練中のスケルトンの所に去っていった。
「あまり話をした事が無かったが、一応主従の関係のはずだがなかなかに馴れ馴れしいと言うか、無礼と言うか、よく言えば気さくと言うか、度胸のあるやつよ」
訓練するスケルトンの集団を眺めつつ、一息ついた。
「まあ、よいか」
少し体力の戻ったゼティフォールはさっそく、粉々になっている方のスケルトンの所へやってきて魔力を練る。
新しい大魔法でも作って、骨達に威厳をみせつけてやろう。そう思って思案する。
「魔法の範囲を広くすれば一気に蘇生できるか? いや、はみ出てしまえば何度もしなければならぬな、それでは余計に手間がかかる。連鎖的に広がるようにすればあるいは……。だめだな、変なものまで復活しても困る。では、全体魔法にするか? ああ、これも似たようなものか? そうだ、風魔法で集めつつ空中に浮かせて、その中心に蘇生魔法をはめこめばいけるか? ふむ、組み合わせであって新しい魔法ではないかもしれぬが、見栄えは良さそうだな。それに、戦闘中であっても仲間を安全な所に運びつつ、蘇生後も暫く風の壁で守ることができるな。そうしよう」
「では、このような譜で良いかな。──────高く聳えたる導の光、半ばで倒れし風の旅人に再び目覚めを齎せ!」
光が螺旋を描いて高さ十数メートルの所に収束する。が、風を起こすべく放出された魔力は不完全のまま粒子のようになって漂う。
「む? おかしい、風が吹かぬぞ!」
それだけでなく、暴走した魔力がかざしていた手をジリジリと焼き、それが広がっていく。
魔法も次第に暴走していき、少しでも気を抜けば魔力が槍のように降り注ぐ。近くに居たモノ達は止めようにも手が出せず、避難を余儀なくされた。
「ぐっ! このままでは……!!」
今、下手に魔法を中断すれば大爆発を起こし、自身含めより甚大な被害がでてしまう。故に体が焼けていこうとも、ゼティフォールは慎重に魔法を処理しなければならない。
「風に繋がる魔力路が焼けているのか! 少しずつ収めていては身体がもたぬ」
そこでゼティフォールは暴走した魔法を抑えつつ、別の魔法を唱える。
「飢えた闇の化身よ、影より出でて彼のモノを貪り尽くせ!」
ゼティフォールの影から大きな黒色の球体が現れる。それは赤い血管のような文様が脈動していた。
次の瞬間球体は大きく横に裂け、裂け目を口のように使い、暴走した魔法を喰らい尽くした。
「終わったか……」
「ゼティフォール様ー!!?」
ゼティフォールは事態が収束したのを見届けると、気が抜けたのか力尽きたのか、その場で気を失い倒れてしまった。
──────視界が黒く閉ざす。何も見えない。声が聞こえるが、ノイズがかかったようにまともに聞きとれない。
少し、夢を見た。何もない砂漠の真ん中。いや、周りは暗くて見えなかった。そのような所で私は倒れ、重力にすら抗えぬ程に疲れ切っていた。あとは……、そう、誰かが居た。顔は判らぬ。顔の半分は砂に埋もれ、意識も混濁していたからな。何か、大事なことを言われた気がする。ただ、覚えているのは、
『……流れ星は願いを叶えてくれるんだって』
それだけだ────────────────── 。
「む? ここは、衛生棟か?」
ゼティフォールは目を覚ました。周りには清潔なベッドがいくつか並び、傍らにはローランが座っていた。
「ゼティフォール様! 目が覚めたのですね、良かった~」
安堵したローランはケタケタ笑う。大げさだと思い訝し気な顔をしていると、声に気付いたセモリーナがやってきて、ほっとした顔で告げる。
「3日眠っていたのよ」
「そんなに、ですか……」
400年という長い間眠っていたとはいえ、平常時には3日も眠りに落ちることはない。
「ええ。見た所外傷は殆どないけれど、体内をスキャンしたら魔力路が焼き切れていたわ」
「まさかと言うべきか、やはりと言うべきか……」
「魔力路って、物理的に存在してるわけでは無く、精神の中にあるんですよね? そんなのが焼き切れる何てことあるんですか?」
ローランがふとした疑問を投げかけた。
「分不相応な魔法を使えば、傷がつく事はあるわね」
「治るんですか?」
「そうね、ここでは無理だわ。今焼き切れてしまっている、それぞれの行に長けたヒトから魔力を流してもらえれば、補修できるかもしれないけれど……」
ゼティフォールが掌で魔力を練ってみると、黒い球、白い球、それに電気の球が精製された。
「使えるのは闇、光、雷か。では、少なくとも火、水、風、地の魔法は使えなくなってしまっているみたいだな」
「そんなに負担のかかる魔法を何時つかったんですか? たしか、倒れた時は光と闇の魔法が見えましたけど、使えていますもんね……」
「見ていたのか?」
「この子が運んでくれたのよ」
「巡回してたら魔法が暴走しているのが見えて、駆け付けたらゼティフォール様が倒れているんですから、もう無い心臓が飛び出てしまいましたよ~」
「と、飛び出したのか……。ああ、それより、あの時既に風魔法は使えなくなっていた。それに、他の行も目覚めてから使ってはおらぬ」
「じゃあ、寝ている間に焼き切れたっていうの?」
「おそらくは」
「そういえば、ゼティフォール様は行の王の方々と契約して魔法を使えるようにしてるんですよね?」
「ああ。魂ごと消されない限りは契約は切れぬ血の契約だ。それがどうかしたか?」
「もしかして、もしかしてですよ? その契約者さんがどうにかなちゃったのかもしれないと思いまして」
「ありえない話ではないな…………」
ゼティフォールは少し考える。
「闇の王は私自身ゆえ良いとして、光と雷の王の安全を確認せねばな」
「どちらから行きますか?」
「光の王は神だ、そうやすやすとはやられはせんだろう」
「じゃあ、雷の王さまは確か白雷の塔に居たかしら、そこにいくのね?」
「そうなります」
「そうだ、相性の良い血を持つヒトも探さないといけないですね、このローランがお伴します!」
「ああ、そうだな。血を吸わなければ怪物になるか、内側から破裂するからな」
「きゃー! やっぱり、吸血鬼は血を吸うんですね!? やっぱり、うら若き乙女の血を欲しているの?」
白い衣服を身に着けたニンゲンの女性がいつの間にかそこにいた。そして、話を聞いて何やら興奮していた。
「誰だ?」
「この娘はね、最近衛生塔に入ったばかりの新人さん。なんでも、吸血鬼が好きらしいのよ」
「吸血鬼の良さがわかるなんて、見る目がありますねえ!」
ローランは腕を組んで感心している。
「そうか、ご苦労だったな。それで、何か用でもあるのか?」
「えっと、声が聞こえて、もしかしたら挨拶くらいできるかなって、思いまして……。その、良かったら、わたしの血をすってみませんか!」
「ふむ……。余り大丈夫な気はせぬが一応試してみるか、相性が良いの時の場合は電気でも走る様な感覚がしたのだが、万が一の可能性もあるからな」
「きゃー! ありがとうございます!! 血を吸われるってどんなかんじかしら? やっぱり吸血鬼の物語の定番の首からガブリと? それとも指先から滴る血を吸うの? ああ、もしかしてわたし、このまま女王様になっちゃうのかな? いえ、でもまだ心の準備が。それに、パパやママにはどんな風に説明しようかしら、わたし政治もわかんないし♪」
「…………。ひとりで盛り上がっている所済まないが、試すのか、試さないのか?」
「もちろん試します!」
「落ち込むでないぞ……」
衛生塔女性職員は手の指先を針で刺し、にじみ出た血を水で満たしたコップに落とす。
「なんか、地味ですぅ……」
「文句をいうでない。直接濃いまま吸って相性最悪であれば、そのまま死ぬかもしれぬのだぞ」
「は~い!」
女性職員は少しガッカリしながらも、テンションは変わらずに高いままだ。
ローランは彼女の勢いに圧倒されて見守ることしかできない。
セモリーナは料理長と兼任していて忙しいため、既に退出している。
「では、飲むぞ……」
「はい! 運命の瞬間……」
「どどどど、どうなってしまうんだ……?」
ゼティフォールは一口、コップの中身を飲んだ。
「どうですか! わたし、女王様になっちゃう?」
「苦い……」
「え?」
ゼティフォールはいつも以上に眉間のシワを寄せ、なかなか渋い顔つきになる。
「すまない。死ぬ程ではないが、相性は悪いようだな」
「しょっく! およよよよ……。では、失礼しました」
女性職員は心底落ち込んだ様子で、よろよろと去って行った。
「大丈夫ですかね? 彼女」
「私にはどうすることもできん。すまないがローラン、後でなぐさめてやってくれ」
「わかりました」
体力も戻ったゼティフォールは数日ぶりに、粉々のスケルトンの待つ広場に戻ってきた。白雷の塔へ行ったり、相性の良い血を持つモノを探さなければならないが、ひとまずはこれを片付けなければならない。
「今度は、闇魔法で集めるか。しらみつぶしにやっていた時より早く済むはずだろう」
そうして、ゼティフォールが大方復活させた頃、ぴーころとチャピランが帰ってきた。
「にゃう!」
「ぴーころせんせー、お戻りでしたか」
「ごろごろ~」 「わたしもおりますがな、へへ」
「流石せんせーです。せんせーならその辺の魔物なぞ、塵芥と差なぞ無いでしょう」
「うにゃん」 「して魔王様、周りを見てくだされい」
「なに!? 勇者がふたりいるかもしれないだと! では、どちらと協力すれば……」
「にゃ~」 「確かにそちらも重要でしょうが」
「すみません。取り乱してしまいました。しかし、勇者は神の力の恩恵を最大限受け取るもの……」
「しゃ~」 「こちらもお願いしますぞい」
「はい、どちらかは偽者かもしれません」
「うにゃうにゃん」 「ま~お~う~さ~ま~」
「早急に。っと、先程からどうしたのだ、チャピラン」
「へへっ! 気付いているのにスルーしていたとは、魔王様もヒトが悪いですな!」
「ふん! 嘗て世界を闇に包んだくらいだからな。それに、私とお前の仲ではないか、ふはははははっ~」
「むふふふふ~」「にゃぴぴぴぴ~」
「ああ。忘れるところであった。で、何の報告だ?」
「ええ、呼び名は様々ですがな、どこからともなく黒いモヤモヤから出てきてヒトや町、モンスターなんかまでも襲う怪物が、ここ1年あたりで現れていましてな。世界各地で被害がでているみたいですじゃ」
「ほう、この国は大丈夫なのか?」
「それはもう、ワタシとぴーころがだいたい蹴散らしていますからなっ。それより、その怪物の厄介な所は相手の魔法を使えなくする攻撃があるところなんですな。それにあたると、魔力路が焼けてしまうとか」
「本当か!?」
「ええ、被害者と会いましたからな」
「400年の眠りについている間に、私の魔力路も焼けていたのだ。もしやその怪物を寝室に通してはいまいな?」
「それは無いですな。魔王様の部屋は、振動、温度、魔力、動き、全て把握できるようにセンサーとカメラを設置しています故」
「そこまでチェックされていたのか。それは流石に少し恥ずかしいな……」
「なうなう」
「そうでしたな、言い忘れておりましたが、行の王がいくらか行方知らずになっていましてな、それになにやら怪物が関わっているとか、なんとか」
「ふむ。ではやはり、行の王の安全を確保した方が良さそうか」
「なう? うにゃにゃん」
「はて、何故スケルトンの兵士がやられているんですかな? 襲撃? 不甲斐ないですな~」
「いや、それは……」
「うにゃにゃん!」
「怒るのはこちらだ。せんせーたちがやったんでしょう! とぼけるのも、いい加減にしなさい!!」
「にゃぴ!」「わお!」
粉々にならずに済んだ兵士や家臣達はそれぞれ情報収集、もしくは本来の仕事に戻っていた。しかし、ゼティフォールはまだ睡眠をとらずにスケルトン達を蘇生している。
魔王軍で蘇生魔法ができるモノは微力ながらも協力しているが、数が数だけになかなか終わらない。蘇生魔法が使えないモノも結界を張って吹き飛ばされないようにしたり、散乱する骨を集めている。
とは言え、兵士や家臣達まで寝ずに働かせるわけにもいかず、殆どはゼティフォールが担っているのだ。
「39987、39995! ふう……、甦れ! 40000!!! これで、は、半分か。っはあ、はあ、はあ……。流石に魔王といえど、寝ずにこの数を甦らせるのは疲れるな」
ゼティフォールは目の下にクマをつくり、くせ毛の髪は余計にボサボサ、心なしか眉間のシワも深くなっていた。しかし、まだ約半分残っている。
「ふむ、妙に魔力がうまく流れぬうえに、体にあまり力が入らぬ。まだ目が覚め切っておらんのかと思ったが、何か原因があるのか?」
ゼティフォールは手を何度か握ったり開いたりしつつ考える。
「もしや魔力路が焼けているのか? しかし、そのようなこと在りうるのか。いや、まだ弁が閉じているだけの可能性も捨てきれぬが……」
マナと心身、そして体外を繋げる魔力路。これは誰にでも有るが個体差があり、魔法を使ったり瞑想する等して鍛えられるが、才能によって扱える行と扱えない行がかわってくるのだ。
「おまえ、いい骨してるな~」「おまえこそ目元の穴の角度、鋭くてカッコいいじゃねえか」
「ケタケタ~」「骨にも個性、あるもんだなあ」「俺の筋肉が…………」
スケルトンたちは疲労困憊のゼティフォールをよそに、体が戻った順から自由にしていた。
「ごはんよ~~~♪」
このよく通る女性の声の主は、魔王城の食堂長。ふくよかな体型でエプロンをかけた、衛生兵長も兼任している凄腕のゴースト。
生身の兵士達にはできたてのパスタを。スケルトンや実体のない兵士達は半透明な骨付き肉、幽肉を配られた。
半実体のこの肉は、普通の食事をとれないスケルトン等も吸収してエネルギーに変換できる優れもの。しかし、生身のモノが食べれば殆どはうまく吸収できず、お腹をこわしてしまうのだ。
「どうも、セモリーナおばさん。ちょうど休憩しようと思ったところでしたので、助かりました」
「あらゼタちゃん、また無理しちゃって。 これでもお食べ」
魔王たるゼティフォールを"ゼタちゃん"と呼び、ゼティフォールも敬語で話してしまうこの彼女は、魔王軍発足前からの古参である。それに面倒見が良い人柄から、皆から慕われお母さんのような存在だ。
「トマトソーススパゲッティですか。ほう! トマトとオリーブオイルのいい香りだ」
「ゼタちゃんはニンニクが苦手だったから、ひとつだけ入れてないわ」
ゼティフォールは貰ったパスタを木でできたテーブルに置き、さっそく口に運ぶ。
「いただきます。ふむふむ、美味い。美味いな。これは美味い……」
好物を食べる手と口は止まらない。しばらく眺めていたセモリーナはふとおもった。
「スケルトンさん達を復活させるのは良いんだけど、何か補助魔法でも使って範囲を広げることはできないの?」
「え?」
「いやね、お仕事の合間に少し見てたんだけど、ちょっと考えちゃったのよ。そんな便利な魔法、流石に無いわよね? 魔法が得意なゼタちゃんだもの、知ってたら使うのが普通よね。ごめんね、老婆心がでちゃったわ」
「いえ、殆ど魔法は感覚で覚えているので、全てを把握しているわけではないんです」
「そうだわ、作っちゃえないかしら!? 魔法なんて、もともと誰かが考えたものでしょ。あたしもいくつかオリジナルの魔法作ってるし、いけないかしら?」
ゼティフォールは不意を突かれ、ぼんやりしていた頭に稲妻が走る。思わず立ち上がり、
「それだ!!」
と、叫んだ。
「ふぁ?! びっくりしちゃった」
「無ければ作ればいい。なぜ、そのような簡単な事を思いつかなかったのだ…………」
ゼティフォールはスッキリとした気分になり、空を見上げる。よく晴れていて心地よい朝だ。
セモリーナは満足して、皆の食器をカートに回収していく。
「へ~。魔法ばっかりの気難しい頭でっかちかと思ってたんだが、案外可愛げあるじゃねえか。ははっ!」
皿を返しに来たついでに話が聞こえたのか、ひとりのスケルトンが話しかけてきた。
「うるさいぞ」
ゼティフォールは軽く睨んだ。
「怒らせちまったか? すまないな、はははっ。そうだ、この姿になってからは初対面だったな、ダンテだ。久しぶり、魔王さん」
このスケルトンことダンテは、並のスケルトンよりひとまわり太く、強靭な骨を持っている。腰から下は白銀を基調とした重装鎧だが、上半身は何も身につけていない。
そして、彼は不死身という言葉の通り何度倒しても必ず立ち上がり、最後は勇者と共に魔王を倒した英雄。光の戦士ダンテである。
「ああ、ダンテか。あれ程鍛え抜かれた筋肉も骨になってしまえば見る影もないな」
「残念で、しかたないぜ……」
「そういえば、何でスケルトンさんだらけになっちゃったのかしら? 昨日までは殆ど生きてるヒトでお仕事してたのに、今はお城の中がスケルトンだらけよ」
手早く食器を回収し終えたセモリーナが、質問をなげかける。
「多分、神が私が世界を救うのに手助けが必要だろうと嘗ての魔王軍や仲間等を蘇らせたのでしょう。しかし、長い間魂が消えずに残っていたとは皆、なかなか執念深い」
「オレ達は敷地内にある集合墓地で寝てたんだけどよ、急に起こされたと思ったらさっそくチャピランとぴーころさんに仕事の割り振りされてな。つうか、あいつらずっと起きてたのかよ! 寿命どうなってんだ?」
「遅いと思っていたらチャピラン、そのような事をしていたか。抜け目ないな」
「ヒトが多いと助かるからいいんだけどね。あ、そろそろ仕事にもどらないと。新人さんの教育もしてあげないといけないからね」
「ごちそうさまでした、セモリーナおばさん」
「うっし、オレも戻りますぜ魔王陛下。骨を鍛えねえといけないからな」
「ダンテ、お前は何の仕事を割り振られたのだ?」
「んぁ? ああ、城の警備だな。とはいっても、攻めて来る奴はいねえみたいだし、万が一来ても城にも城下にも強いやつばっかりだから、今はせめて万が一の時に遅れをとらないように、しっかり鍛えるのが仕事だな。魔王さんも、無理すんなよ! へへっ」
そう言うとダンテは訓練中のスケルトンの所に去っていった。
「あまり話をした事が無かったが、一応主従の関係のはずだがなかなかに馴れ馴れしいと言うか、無礼と言うか、よく言えば気さくと言うか、度胸のあるやつよ」
訓練するスケルトンの集団を眺めつつ、一息ついた。
「まあ、よいか」
少し体力の戻ったゼティフォールはさっそく、粉々になっている方のスケルトンの所へやってきて魔力を練る。
新しい大魔法でも作って、骨達に威厳をみせつけてやろう。そう思って思案する。
「魔法の範囲を広くすれば一気に蘇生できるか? いや、はみ出てしまえば何度もしなければならぬな、それでは余計に手間がかかる。連鎖的に広がるようにすればあるいは……。だめだな、変なものまで復活しても困る。では、全体魔法にするか? ああ、これも似たようなものか? そうだ、風魔法で集めつつ空中に浮かせて、その中心に蘇生魔法をはめこめばいけるか? ふむ、組み合わせであって新しい魔法ではないかもしれぬが、見栄えは良さそうだな。それに、戦闘中であっても仲間を安全な所に運びつつ、蘇生後も暫く風の壁で守ることができるな。そうしよう」
「では、このような譜で良いかな。──────高く聳えたる導の光、半ばで倒れし風の旅人に再び目覚めを齎せ!」
光が螺旋を描いて高さ十数メートルの所に収束する。が、風を起こすべく放出された魔力は不完全のまま粒子のようになって漂う。
「む? おかしい、風が吹かぬぞ!」
それだけでなく、暴走した魔力がかざしていた手をジリジリと焼き、それが広がっていく。
魔法も次第に暴走していき、少しでも気を抜けば魔力が槍のように降り注ぐ。近くに居たモノ達は止めようにも手が出せず、避難を余儀なくされた。
「ぐっ! このままでは……!!」
今、下手に魔法を中断すれば大爆発を起こし、自身含めより甚大な被害がでてしまう。故に体が焼けていこうとも、ゼティフォールは慎重に魔法を処理しなければならない。
「風に繋がる魔力路が焼けているのか! 少しずつ収めていては身体がもたぬ」
そこでゼティフォールは暴走した魔法を抑えつつ、別の魔法を唱える。
「飢えた闇の化身よ、影より出でて彼のモノを貪り尽くせ!」
ゼティフォールの影から大きな黒色の球体が現れる。それは赤い血管のような文様が脈動していた。
次の瞬間球体は大きく横に裂け、裂け目を口のように使い、暴走した魔法を喰らい尽くした。
「終わったか……」
「ゼティフォール様ー!!?」
ゼティフォールは事態が収束したのを見届けると、気が抜けたのか力尽きたのか、その場で気を失い倒れてしまった。
──────視界が黒く閉ざす。何も見えない。声が聞こえるが、ノイズがかかったようにまともに聞きとれない。
少し、夢を見た。何もない砂漠の真ん中。いや、周りは暗くて見えなかった。そのような所で私は倒れ、重力にすら抗えぬ程に疲れ切っていた。あとは……、そう、誰かが居た。顔は判らぬ。顔の半分は砂に埋もれ、意識も混濁していたからな。何か、大事なことを言われた気がする。ただ、覚えているのは、
『……流れ星は願いを叶えてくれるんだって』
それだけだ────────────────── 。
「む? ここは、衛生棟か?」
ゼティフォールは目を覚ました。周りには清潔なベッドがいくつか並び、傍らにはローランが座っていた。
「ゼティフォール様! 目が覚めたのですね、良かった~」
安堵したローランはケタケタ笑う。大げさだと思い訝し気な顔をしていると、声に気付いたセモリーナがやってきて、ほっとした顔で告げる。
「3日眠っていたのよ」
「そんなに、ですか……」
400年という長い間眠っていたとはいえ、平常時には3日も眠りに落ちることはない。
「ええ。見た所外傷は殆どないけれど、体内をスキャンしたら魔力路が焼き切れていたわ」
「まさかと言うべきか、やはりと言うべきか……」
「魔力路って、物理的に存在してるわけでは無く、精神の中にあるんですよね? そんなのが焼き切れる何てことあるんですか?」
ローランがふとした疑問を投げかけた。
「分不相応な魔法を使えば、傷がつく事はあるわね」
「治るんですか?」
「そうね、ここでは無理だわ。今焼き切れてしまっている、それぞれの行に長けたヒトから魔力を流してもらえれば、補修できるかもしれないけれど……」
ゼティフォールが掌で魔力を練ってみると、黒い球、白い球、それに電気の球が精製された。
「使えるのは闇、光、雷か。では、少なくとも火、水、風、地の魔法は使えなくなってしまっているみたいだな」
「そんなに負担のかかる魔法を何時つかったんですか? たしか、倒れた時は光と闇の魔法が見えましたけど、使えていますもんね……」
「見ていたのか?」
「この子が運んでくれたのよ」
「巡回してたら魔法が暴走しているのが見えて、駆け付けたらゼティフォール様が倒れているんですから、もう無い心臓が飛び出てしまいましたよ~」
「と、飛び出したのか……。ああ、それより、あの時既に風魔法は使えなくなっていた。それに、他の行も目覚めてから使ってはおらぬ」
「じゃあ、寝ている間に焼き切れたっていうの?」
「おそらくは」
「そういえば、ゼティフォール様は行の王の方々と契約して魔法を使えるようにしてるんですよね?」
「ああ。魂ごと消されない限りは契約は切れぬ血の契約だ。それがどうかしたか?」
「もしかして、もしかしてですよ? その契約者さんがどうにかなちゃったのかもしれないと思いまして」
「ありえない話ではないな…………」
ゼティフォールは少し考える。
「闇の王は私自身ゆえ良いとして、光と雷の王の安全を確認せねばな」
「どちらから行きますか?」
「光の王は神だ、そうやすやすとはやられはせんだろう」
「じゃあ、雷の王さまは確か白雷の塔に居たかしら、そこにいくのね?」
「そうなります」
「そうだ、相性の良い血を持つヒトも探さないといけないですね、このローランがお伴します!」
「ああ、そうだな。血を吸わなければ怪物になるか、内側から破裂するからな」
「きゃー! やっぱり、吸血鬼は血を吸うんですね!? やっぱり、うら若き乙女の血を欲しているの?」
白い衣服を身に着けたニンゲンの女性がいつの間にかそこにいた。そして、話を聞いて何やら興奮していた。
「誰だ?」
「この娘はね、最近衛生塔に入ったばかりの新人さん。なんでも、吸血鬼が好きらしいのよ」
「吸血鬼の良さがわかるなんて、見る目がありますねえ!」
ローランは腕を組んで感心している。
「そうか、ご苦労だったな。それで、何か用でもあるのか?」
「えっと、声が聞こえて、もしかしたら挨拶くらいできるかなって、思いまして……。その、良かったら、わたしの血をすってみませんか!」
「ふむ……。余り大丈夫な気はせぬが一応試してみるか、相性が良いの時の場合は電気でも走る様な感覚がしたのだが、万が一の可能性もあるからな」
「きゃー! ありがとうございます!! 血を吸われるってどんなかんじかしら? やっぱり吸血鬼の物語の定番の首からガブリと? それとも指先から滴る血を吸うの? ああ、もしかしてわたし、このまま女王様になっちゃうのかな? いえ、でもまだ心の準備が。それに、パパやママにはどんな風に説明しようかしら、わたし政治もわかんないし♪」
「…………。ひとりで盛り上がっている所済まないが、試すのか、試さないのか?」
「もちろん試します!」
「落ち込むでないぞ……」
衛生塔女性職員は手の指先を針で刺し、にじみ出た血を水で満たしたコップに落とす。
「なんか、地味ですぅ……」
「文句をいうでない。直接濃いまま吸って相性最悪であれば、そのまま死ぬかもしれぬのだぞ」
「は~い!」
女性職員は少しガッカリしながらも、テンションは変わらずに高いままだ。
ローランは彼女の勢いに圧倒されて見守ることしかできない。
セモリーナは料理長と兼任していて忙しいため、既に退出している。
「では、飲むぞ……」
「はい! 運命の瞬間……」
「どどどど、どうなってしまうんだ……?」
ゼティフォールは一口、コップの中身を飲んだ。
「どうですか! わたし、女王様になっちゃう?」
「苦い……」
「え?」
ゼティフォールはいつも以上に眉間のシワを寄せ、なかなか渋い顔つきになる。
「すまない。死ぬ程ではないが、相性は悪いようだな」
「しょっく! およよよよ……。では、失礼しました」
女性職員は心底落ち込んだ様子で、よろよろと去って行った。
「大丈夫ですかね? 彼女」
「私にはどうすることもできん。すまないがローラン、後でなぐさめてやってくれ」
「わかりました」
体力も戻ったゼティフォールは数日ぶりに、粉々のスケルトンの待つ広場に戻ってきた。白雷の塔へ行ったり、相性の良い血を持つモノを探さなければならないが、ひとまずはこれを片付けなければならない。
「今度は、闇魔法で集めるか。しらみつぶしにやっていた時より早く済むはずだろう」
そうして、ゼティフォールが大方復活させた頃、ぴーころとチャピランが帰ってきた。
「にゃう!」
「ぴーころせんせー、お戻りでしたか」
「ごろごろ~」 「わたしもおりますがな、へへ」
「流石せんせーです。せんせーならその辺の魔物なぞ、塵芥と差なぞ無いでしょう」
「うにゃん」 「して魔王様、周りを見てくだされい」
「なに!? 勇者がふたりいるかもしれないだと! では、どちらと協力すれば……」
「にゃ~」 「確かにそちらも重要でしょうが」
「すみません。取り乱してしまいました。しかし、勇者は神の力の恩恵を最大限受け取るもの……」
「しゃ~」 「こちらもお願いしますぞい」
「はい、どちらかは偽者かもしれません」
「うにゃうにゃん」 「ま~お~う~さ~ま~」
「早急に。っと、先程からどうしたのだ、チャピラン」
「へへっ! 気付いているのにスルーしていたとは、魔王様もヒトが悪いですな!」
「ふん! 嘗て世界を闇に包んだくらいだからな。それに、私とお前の仲ではないか、ふはははははっ~」
「むふふふふ~」「にゃぴぴぴぴ~」
「ああ。忘れるところであった。で、何の報告だ?」
「ええ、呼び名は様々ですがな、どこからともなく黒いモヤモヤから出てきてヒトや町、モンスターなんかまでも襲う怪物が、ここ1年あたりで現れていましてな。世界各地で被害がでているみたいですじゃ」
「ほう、この国は大丈夫なのか?」
「それはもう、ワタシとぴーころがだいたい蹴散らしていますからなっ。それより、その怪物の厄介な所は相手の魔法を使えなくする攻撃があるところなんですな。それにあたると、魔力路が焼けてしまうとか」
「本当か!?」
「ええ、被害者と会いましたからな」
「400年の眠りについている間に、私の魔力路も焼けていたのだ。もしやその怪物を寝室に通してはいまいな?」
「それは無いですな。魔王様の部屋は、振動、温度、魔力、動き、全て把握できるようにセンサーとカメラを設置しています故」
「そこまでチェックされていたのか。それは流石に少し恥ずかしいな……」
「なうなう」
「そうでしたな、言い忘れておりましたが、行の王がいくらか行方知らずになっていましてな、それになにやら怪物が関わっているとか、なんとか」
「ふむ。ではやはり、行の王の安全を確保した方が良さそうか」
「なう? うにゃにゃん」
「はて、何故スケルトンの兵士がやられているんですかな? 襲撃? 不甲斐ないですな~」
「いや、それは……」
「うにゃにゃん!」
「怒るのはこちらだ。せんせーたちがやったんでしょう! とぼけるのも、いい加減にしなさい!!」
「にゃぴ!」「わお!」
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