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モブと輸入停止
しおりを挟む国境封鎖から数日も置かずに秋津國がロタリンギアに宣戦布告。戦場となっているロタリンギアは酸鼻を極めた状態らしい。
秋津の王様、全然優しくなかった…。
秋津國というのは実は遼と遥の今世の故郷らしく、鬼人と呼ばれる超人種の国らしい。そこの姫とロタリンギアの王が学生時代に婚約者同士だったらしいのだが、王太子であったロタリンギア王が浮気をして一方的に婚約を破棄。そこから国同士の関係が拗れたのかと思いきや、その時に姫が連れ帰った青年が今回の戦争の引き金らしいが……うん、聞きたくないね。
ただ、秋津國が戦争中なので米や醤油の供給が止まっている、とアリストさんが嘆いていた。
米醤油味噌!!これは死活問題だ。自分でも大変鬼畜だとは思うが、ロタリンギアの国がなくなるより、日本食の食材の輸入がストップするのは耐えがたい。
考えた末に、アリストさんから種籾と麹菌を購入。秋津國の輸入が再開したらまた大量購入しますと約束して。
まず米を蒸す。蒸して冷まして、アリストさんから購入した麹菌を満遍なく混ぜる。分量?知らないよ。だって前世の図書館の本で見たっきりだし。
清潔な布に上に板状に広げて、麹菌が元気な摂氏30度くらいに錬金術で保温して菌を培養。他の雑菌なんかを雷魔法で殺しながら2日ほど放置すると、フルーツみたいな匂いがし始める。うん、成功。
この辺でいつも暇そうな精霊たちがなんだなんだと集まってきたので、この菌で美味しいものが作れると説明したところ、めっちゃやる気で手伝い始めた。食いしん坊どもめ。
味噌を仕込んでいると、昼食の準備を終えたらしい厨房スタッフが手伝いに来る。ボール状に握った味噌ダネを容器にぶつけるのが楽しいそうだ。ピタッと封をして地面に埋める。
小麦を炒って潰す。培養した麹と混ぜて、蒸した大豆と混ぜる。醤油麹?いいんだよこの麹しかないんだから。大きな樽に入れて塩水イン。
残った麹で甘酒を作った。
あと種籾。これはほんとに未知の領域。
……と思ったら、緑色の精霊が「任せて!」とジェスチャーしたのでお願いした。
茶色の精霊が地面を掘り返し、水色の精霊がどこからともなく水を引いてくる。光、闇、炎に風。色んな精霊がイルミネーションみたいに点滅しながら田圃を作っていく。素晴らしい。何かご褒美を作ろう。
厨房に行くと麻袋に入ったままのナッツが大量にあったので、砂糖を煮溶かして焙煎したナッツを絡める。錬金術で作ると鍋とかバットを使わないので、洗い物が非常に楽である。カリッカリにキャラメリゼしたナッツに少量の塩を振る。例に漏れず、ポンコツ精霊王と竜どもがヨダレを垂らして目の前をウロウロするので味見程度に渡しておく。
「オズぅ!おやつ、おじいちゃんにも、もっていくね!」
《蜃》の奴…。カムイにまで『おじいちゃん』とか呼ばせ始めた。怖い。外堀がガンガンに埋められていってる気がする。
隣国が地獄と化しているのにこんなに穏やかに過ごして良いのだろうか。
《八雲》と混ざってなくなってしまったはずの、人間としての道徳心がチクチクする。
「オレたちができることはもうねぇぜ?秋津の若様は資源となる人材には優しいし、捕虜を甚振る趣味も……うーん、ねぇ、かな?ねぇって信じてぇなあ…。まあ、さっさと降伏しちまえば被害も少ねぇだろうし…」
遼が言う。うん、わかってる。わかってるんだけど、ね…。
戦争が始まってちょうど40日。
ルミナが網に掛かったと《蜃》から連絡があった。
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