上 下
173 / 179

モブと輸入停止

しおりを挟む


国境封鎖から数日も置かずに秋津國がロタリンギアに宣戦布告。戦場となっているロタリンギアは酸鼻を極めた状態らしい。

秋津の王様、全然優しくなかった…。

秋津國というのは実は遼と遥の今世の故郷らしく、鬼人と呼ばれる超人種の国らしい。そこの姫とロタリンギアの王が学生時代に婚約者同士だったらしいのだが、王太子であったロタリンギア王が浮気をして一方的に婚約を破棄。そこから国同士の関係が拗れたのかと思いきや、その時に姫が連れ帰った青年が今回の戦争の引き金らしいが……うん、聞きたくないね。



ただ、秋津國が戦争中なので米や醤油の供給が止まっている、とアリストさんが嘆いていた。

米醤油味噌!!これは死活問題だ。自分でも大変鬼畜だとは思うが、ロタリンギアの国がなくなるより、日本食の食材の輸入がストップするのは耐えがたい。

考えた末に、アリストさんから種籾と麹菌を購入。秋津國の輸入が再開したらまた大量購入しますと約束して。



まず米を蒸す。蒸して冷まして、アリストさんから購入した麹菌を満遍なく混ぜる。分量?知らないよ。だって前世の図書館の本で見たっきりだし。

清潔な布に上に板状に広げて、麹菌が元気な摂氏30度くらいに錬金術で保温して菌を培養。他の雑菌なんかを雷魔法で殺しながら2日ほど放置すると、フルーツみたいな匂いがし始める。うん、成功。

この辺でいつも暇そうな精霊たちがなんだなんだと集まってきたので、この菌で美味しいものが作れると説明したところ、めっちゃやる気で手伝い始めた。食いしん坊どもめ。

味噌を仕込んでいると、昼食の準備を終えたらしい厨房スタッフが手伝いに来る。ボール状に握った味噌ダネを容器にぶつけるのが楽しいそうだ。ピタッと封をして地面に埋める。

小麦を炒って潰す。培養した麹と混ぜて、蒸した大豆と混ぜる。醤油麹?いいんだよこの麹しかないんだから。大きな樽に入れて塩水イン。

残った麹で甘酒を作った。



あと種籾。これはほんとに未知の領域。

……と思ったら、緑色の精霊が「任せて!」とジェスチャーしたのでお願いした。

茶色の精霊が地面を掘り返し、水色の精霊がどこからともなく水を引いてくる。光、闇、炎に風。色んな精霊がイルミネーションみたいに点滅しながら田圃を作っていく。素晴らしい。何かご褒美を作ろう。

厨房に行くと麻袋に入ったままのナッツが大量にあったので、砂糖を煮溶かして焙煎したナッツを絡める。錬金術で作ると鍋とかバットを使わないので、洗い物が非常に楽である。カリッカリにキャラメリゼしたナッツに少量の塩を振る。例に漏れず、ポンコツ精霊王と竜どもがヨダレを垂らして目の前をウロウロするので味見程度に渡しておく。



「オズぅ!おやつ、おじいちゃんにも、もっていくね!」



《蜃》の奴…。カムイにまで『おじいちゃん』とか呼ばせ始めた。怖い。外堀がガンガンに埋められていってる気がする。




隣国が地獄と化しているのにこんなに穏やかに過ごして良いのだろうか。

《八雲》と混ざってなくなってしまったはずの、人間としての道徳心がチクチクする。



「オレたちができることはもうねぇぜ?秋津の若様は資源となる人材には優しいし、捕虜を甚振る趣味も……うーん、ねぇ、かな?ねぇって信じてぇなあ…。まあ、さっさと降伏しちまえば被害も少ねぇだろうし…」



遼が言う。うん、わかってる。わかってるんだけど、ね…。






戦争が始まってちょうど40日。











ルミナが網に掛かったと《蜃》から連絡があった。












しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...