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モブと子竜1
しおりを挟むはい、障害物のフェルディナンドを華麗に乗り越え、ただ今、竜舎に向かって進んでおります。ダンナ、何故かめっちゃご機嫌です。
「ルクレツィアには聞いてはいたが……『急所を突いて小突き回す』と言うのが初めてわかった」
クックック…って笑ってるけど、だって初手でガツンとやっとかないと後々面倒だろ?地味だし大人しそうに見えるらしいから、舐められやすいんだよね、俺。
城壁の近くに……要するに城の敷地の端っこに作られている竜舎には、飼い慣らされた飛竜が数匹飼育されている。
その奥の、金属でできた重そうな扉の向こうに子竜は居た。
ギィィィイイイイギャギャギュァァァァアアアアアアア!!!
大音声のお出迎えだ。……なんだ、まだ元気じゃないか。ちょっとホッとした。
暗い、湿った部屋の中は酷い臭いだ。大方、排泄物の掃除もなにも出来ていないのだろう。
錆が浮いた檻の中。黒く乾いた血と汚物に塗れて、子竜が牙を剥いていた。
結構デカい…。前世で実家で飼ってたレトリーバーくらいの大きさだ。
俺はじっと子竜を見る。
ああ、これが、俺が運命を捻じ曲げた結果だ。
俺は檻の目の前に下ろしてもらう。
……ほんと、外出するたびに服を汚す嫁で申し訳ない。
「………おい、ちびすけ」
這うようにして、檻に手を掛けた。
ギュイイイィィ……ギィ…?ギ?
竜に話し掛ける変人は居なかったのか。子竜の声が小さくなった。
賢い子だ。言葉がわかるのか……。
「お前の親は、俺が、殺した。俺の浅はかなエゴで、運命を捻じ曲げて、予測できたはずだったのに……救えなかった」
ギュイイイィィ……
「死ぬな。生きろ。お前の親の仇は ーーー ここだ。俺を憎んで、生きて、俺を殺すために……生きろ」
ギュ……ギュ………?
不思議そうに首を傾げて。
子竜が檻を掴んだ俺の指に鼻先を近付ける。
あー…指くらい無くなるかな………
そう思った。
ペロ…
………………ん?
ペロペロペロペロペロベロベロベロベロカミカミカミ………
なにこれ味見かな?
キュ……キューンキューン…クフン、クゥーン………
犬かな!?
急に甲高く鳴きだした子竜は、俺の指の味見をし終わったと思ったら……
「………!!オズ!離れ………!!」
距離を取り
ドンガシャ!!ガン!!
パワフルに檻をブチ破った。
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