【7人の魔王2】してもない婚約を破棄された聖女の兄なのだが、なんだかんだで魔王の嫁になっていた。

「俺の旦那に近寄るな」

勇者パーティーとクソ王太子って言ったのに、ハルフォードの屋敷の応接室は収容人数が大幅に超過していた。

うん。俺と碧海が座る場所がない。


「おっちゃん……なんで食堂とかに通さなかったんだ…」

「神聖な食堂が穢れる」

「あー…」


ハルフォードのおっちゃん、意外に食い道楽なんだよなあ…。そこは妹めいと似てるんだろうな。

応接室のソファーに座っているのは勇者と思しき男と俺の魔法の師匠でもあった魔導部隊長、神官服を着た幼女……じゃなくて女性、黒い頭巾を被った色っぽい姉ちゃんは肘掛けの部分に腰掛け、父ちゃんといい勝負の筋肉達磨男は座れずに立っている。王太子側は王太子に何故かスタンスフィールド公爵令嬢、妹の友人のウリエラ嬢、その他王太子の使えねえ太鼓持ちたちは立っている。


「「……リアム！！」」


俺を見るなり魔導部隊長とクソ王太子が同時に立ち上がった。そしてお互いを牽制するように睨み合う。なにこれ怖い。


「リアム！！もう大丈夫だ！助けに来た！」

「リアム！もう許してやる！帰ってこい！」


……は？


殺気を漲らせて魔導部隊長が歩き出した。幼女を飛び越えて。


「リア…っ……！」


目の前まで来た魔導部隊長に


「俺の旦那もんに近寄るな」


碧海を背に庇い、剣を突き付けた。