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「おやすみなさい、アオイさん」
しおりを挟むとりあえず俺たちが天幕に入る時にロリコンも引き摺って運んだ。夜は冷えるみたいだからな。多分こいつ妹と二人っきりでも襲ったりしないと思う。紳士とかそういうんじゃなくて、ヘタレの方で。
天幕の中はちゃんとティティスが簡易ではあるがベッドを運び込んでいて、中々の快適空間だった。一番端っこに陣取った妹の横に俺、その横にアオイさん、入り口付近にロリコン殿下という配置だ。
「おやすみ、ウサギくん」
「おやすみなさい、アオイさん」
アオイさんは何故か俺を『ウサギくん』と呼ぶ。そういえば俺から自己紹介してないんじゃないだろうか。明日はきちんと名前を名乗って、ちゃんと呼んで欲しい。ああ、でも俺たちはもうハルフォードを名乗れないんだろう。まったく血の繋がってない俺はともかく、本当はハルフォード男爵令嬢の娘である妹はちょっと可哀想かもしれない。
母ちゃんはハルフォードのおっちゃん ーーー ハルフォード男爵の妹だ。母ちゃんは16歳の時に行方不明になって、1年後に記憶を無くして妊娠した状態で、オウルの港町で父ちゃんに保護された。最初は『保護』だったらしいけど、父ちゃんと母ちゃんはすぐにお互いを想い合って結婚した。出会って1月もかからなかったそうだ。焦っていたのかもしてない。父ちゃんは俺の母親の時に同じような状態で保護して、告る前に亡くしたそうだから。
ハルフォードのおっちゃんが母ちゃんを見つけたのは偶然だったらしい。自分のとこの領民が儀式の際に海に落ちた王子を助けたってので、見舞いがてら褒賞持っていったら行方不明中の妹がその男の子の母だったという。
記憶を無くして別人になった妹との繋がりが欲しかったんだろう。王家に命令されるより先に、ハルフォードのおっちゃんはシャーロットを養女にするために動いていた。俺はまあ……うん、オマケだ。父ちゃんみたいに漁師にはなれなかったが、おかげで剣と魔法と礼儀作法は身についた。
そういうことをつらつら考えながら目を瞑っているといつのまにか熟睡だ。
朝起きて、目の前にアオイさんの顔があった時はびっくりした。
朝イチからの美人の顔、半端ねぇ…。
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