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【妹友人視点】「愚かな王太子に、馬鹿な子…」
しおりを挟む王宮は蜂の巣を突いた状態になった。
それもそのはず。先の夜会で王太子殿下が婚約の破棄を言い渡したのだ。
わたくしではなく、わたくしの友人に。
してもない婚約の破棄を言い渡され、あの子は笑った。良かったね、ウリエラ ーーー と。
ああ、なんて馬鹿な子。わたくしは貴女が聖女だから態々お友達になってあげたの。そうでなければ元平民の男爵令嬢などに話しかけるはずもないでしょう?貴女の美しい兄にも興味があったの。わたくしが王妃になったら愛人にしようと思ってたの。
なのに、あの子は笑ったのだ。
馬鹿なシャーロット。明るくて、賢くて、優しくて、美しくて。大好きだった。大嫌いだった。貴女と一緒にいる時だけ、わたくしは狡猾なオールディントン侯爵家の娘ではなく、ただの愚かな娘になれた。
この醜いわたくしの、たった一人のお友達。
我がオールディントン侯爵家は、王家に対して多額の慰謝料を請求中だ。それこそ、国が傾くような金額を。
「いくらでも家に払ってやる」。
王太子殿下がそう仰ったのだもの。王家は無効だと言っているが知ったことではないわ。あのお父様がこの機を逃すことは有り得ない。お父様はずっとスタンスフィールド公爵家を引き摺り落とそうと狙っていたのだから。
王太子が婚約者であるわたくしを10年以上冷遇し、茶会もエスコートも無視して贈り物のひとつもしていないのだ。そのくせスタンスフィールド公爵令嬢には湯水のように貢いでいたことは周知の事実だ。証拠も山のように揃っている。
「……愚かな王太子殿下…」
わたくしは冷めてしまった紅茶を口に含む。
まさかここまで愚かだとは思っていなかった。噂通り、暗愚の王太子。シャーロットの兄に管理されて少しはマシになったと笑っていたのは誰だったのか。
愚かな王太子に、馬鹿な子…。
期限は1年。
さあ、あの子たちが戻ってくる前に掃除をしておかないと。
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