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偽神編
蕃神討滅 5
しおりを挟む目の前で人が喰われた。肉と骨をゆっくり咀嚼して、偽神は笑う。
「あら?あたりかしら?大事なものだった?」
……うん。せめて飲み込んでから言ってほしい。グロ注意だ。
エルマーと、知らない肥えたオッサンだった。ウォーレンが「父上」とか言ってたからヘイウッド侯爵なのか…。
申し訳ないが、俺はエルマーが擦り潰されて喰われても「あー…死んだかぁ」くらいの気持ちしかない。あいつはやりすぎた。俺が見捨てるくらいに他者を踏みつけ過ぎた。きっと今助けられていてもエルマーには更なる地獄しかなかっただろうから死んで幸せだったんじゃないだろうか。本人もよくわからないまま死んだみたいだし。
けどウォーレンは……
ちらりと隣を見ると、「清々した」と言わんばかりに鼻息をひとつ。ウヮーオ…。温厚でムードメーカーなウォーレンにここまで嫌われるって……ヘイウッド侯爵、何したよ!?
ぼこり。
目玉がまた浮かび上がる。
ぼこり。ぼこり。ぼこりぼこりぼこぼこぽここ……
「ま、やることは変わんねえよな!」
生えてきた眼球を撃つ。赤い目玉なのはエルマーたちを喰ったせいか。
「ギャッ!?あ…ああ、アンタら、まだこっちにはエサが……いっ!痛ァ!?」
『リ…リオ様!こちらは結界を張ります!構わずやっちゃってくださいませ!!』
アンティエーヌの声が拡声魔法で張り上げられる。
「させないわ!」
「……っし!」
一閃。
二の太刀、三の太刀。
どこぞの武士が『二の太刀要らず』とかやっていたが、偽神相手なら愚の骨頂。こいつらが一撃で死ぬことはない。それこそとどめをさしたと思ったら狂化して復活しやがる。神に造られし、神たり得ない、神の成り損ない。それが偽神。
一般人の避難誘導も終え、プレンダーガストの騎士全員が揃う。いやはや、圧勝だろ?こいつらうちの騎士になってから、あっちこっちの化け物退治に放り込まれ、今じゃあその道のスペシャリストだぞ?楽勝、楽しょ………
「ぁぁぁあああああ……アーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「…退避ッ!!」
残り少なくなった手が狂ったようにダンスホールの結界をぶん殴り始める。……まずい!
パキン!
「キャァ!!??」
「アンティエーヌ!?」
結界の。清浄なモノが割れる音と共にアンティエーヌの悲鳴が響く。
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