上 下
85 / 160
学園編

理由がわからないと尻の座りが悪いんだよ

しおりを挟む


北に位置するプレンダーガストもそろそろ春が訪れるという冬の終わりの日。ラドに呼び出されて登城すると何故か四公爵と王妃様、ラドに陛下が揃って待っていた。

なにごと!?

プレンダーガストとケレスの発展とか、先日の魔物暴走スタンピードの話とかした後でコホン、と王妃様が咳払いをして空気が変わった。

……あ、これ、面倒な話だ。


「プレンダーガスト侯爵、単刀直入に申しますが、貴方は花の月からモンサロ王立学園に通っていただきます」


………なんて???


「期間は1年間。もちろん従者のティグレ・プレンダーガストも同行してください」

「………理由をお聞かせ願えますか?」

「………………」


王妃様は視線を落とし、憂い顔をする。美人が困っている。これだけで前世の悪友西ノ宮なら騙されてやるんだろう。だが俺はホイホイ黙って頷くわけにはいかない。プレンダーガストもケレスも今からが領地経営の本番だ。今はまだ目新しいと話題にも上るが、これからが舵取りの難しい場面だ。現場指揮の俺が1年という長期に渡り外れることは難しい。俺一人の問題じゃあない。今や俺の肩には11万人を超える人間の命がかかっている。

たぶん、この日のために俺は2年間も好き放題させてもらった。多少は魔物狩りや反社会組織壊滅とかに手を貸したが、妨害らしい妨害も入らず、結果、異例の速さでプレンダーガストとケレスは発展した。



………あー、いやらしいなぁ、こういうのって。「大切なものは作るな」と前世の糞親父が言っていたのを思い出しちまった。戦になれば躊躇した一瞬が命取り。いざという時に切り捨てられないものは最初から持つな、と。

リサにセバス、屋敷の使用人たちくらいなら身軽だったんだ。そこにオズウェルが来て、ポチタマを連れて帰り、ティグレを拾った。プレンダーガストの領民たちは働き者で、ケレスの民は少し過激。王都でもアンティエーヌという友達もできて、四公爵のオッサン爺さんたちも嫌いじゃない。陛下は人が良すぎて放って置けないし、王妃様は暴走しないか心配だ。メアリーばあちゃんも癒し系すぎて危なかしいし、大公邸のアイザックさんはティグレが大変世話になった。……ラドは ーーー まあ、ラドはラドだし?

あー…あああー!もー!!

落ち着くために、深~い溜息をひとつ。何を勘違いしたのか、ラド以外が震え出したのは見なかったことにする。うん、俺は見てない。見てないったら!







「理由をお聞かせ願えますか、モンサロ王国上層部の方々」





しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...