64 / 160
領地編2
マグレーディの悲劇
しおりを挟む無事に転移門が復活したので、元プレンダーガスト侯爵領に行くことにした。王家直轄領になったその土地の名はマグレーディ。『不毛の大地』とはよく付けたもんだ。めっちゃ悪意。
そう思っていた。
「………なぁにぃこれぇ…」
見渡す限りの荒野。草原。荒地。掘立て小屋はあるが民家らしきものも見当たらない。領民皆無。……おかしくねぇ!?曾祖父様の治めていた領地は豊かな農耕地だと聞いていたのに…!
「リオ、俺もセバスさんに聞いたばかりなんだけど…」
ティグレが教えてくれた元プレンダーガスト侯爵領の顛末。
曾祖父様と曾祖母様は、大恋愛にの後に国際結婚をした。北方諸国から嫁いできた、女神のように美しい領主の息子の妻。領民との距離も近く、気さくで優しく、誠実な息子夫婦。領民たちは熱狂した。領主の息子の妻 ーーー ヘスティア様は女神の化身!…と。
……なんで?
それなのに、結婚と出産の報告に向かった王都で起こった国王の暴挙。人妻であり、一児の母であるヘスティアを妾として差し出せ、と。領主の息子は当然拒否した。領主夫婦も憤った。当然だと領民たちは拳を振り上げた。だがそこで話は終わらなかったのだ。
まあ当然だよな?
国王のさらなる暴挙。『君主の望むものを献上しなかった罪』として、プレンダーガストは侯爵家から伯爵家へと降爵。さらに領地は豊かなプレンダーガスト領から、不毛の大地マグレーディへ。そこで土地自体の名前の交換も行われたらしい。
クソだな、国王。
領地替えされてからの苦難の歴史は俺も習った。砂漠に近いプレンダーガストは食べ物はほぼ育たず、慢性的な飢饉状態。それでも領主たちは自らの貯蓄を切り崩しながら領民を支え ーーー 今に至る。
死ね国王。あ、もう死んでるか。
問題だったのは元プレンダーガスト。名をマグレーディと改められたとが呪いのように不作が続いた。だが当時の領主は前領主のように「不作なんだから税は軽くしよう」なんて言ってやる甘っちょろい善人ではない。逆に締め上げて一揆が起こる。「女神に不敬を働き、我らが領主を追い出し死に追いやった」「女神ヘスティアの祟りである」「ヘスティア様を返せ」「神は我らと共にあり」。そう言って鍬や鋤、草刈り鎌を手に反乱を起こした農民たちは吊るされた。
まあ当たり前だろう。この辺は異世界もヒノモトも変わんねえなァ…。
ここからが、この話の怪談じみてくるところだ。一度に大量の領民を殺した新領主たちは頭の捻子が捻じ切れちまった。なにも罪を犯していない領民たちまで捕らえ、拷問の限りを尽くして1人残らず吊るした。危機を感じて農地を捨て、動けない老人を捨て、足手纏いの赤子を食い、這う這うの体で逃げ出した領民を捕らえて噴水にある広場で処刑した。時間をかけてゆっくりと、残虐の限りを尽くして殺された領民たちの血で広場は真っ赤に染まり、それは『赤の広場』と呼ばれる。そうして終わったかに見えた狂乱は、領主たちが挙って罹患した奇病によって本当の幕を閉じた。連絡が途絶えたことを不審に思った王都の役人が到着した時には、領主たちは痩せ細り、口から真っ黒い土を吐きながら絶命していた。
怖っっっっえええええええええ!!チビるぞ、マジで!?盛ってねえ!?盛ってるよなセバスゥ!?作り話って言えよオオオオオオオオオオ!!!
「……この話は『王家の罪』として最近まで隠されていたらしいよ」
待って…待って陛下!!なんっでそういう曰く付きの場所を下賜したかなあッ!!??
1,872
お気に入りに追加
2,557
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?
まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。
☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。
☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。
☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。
☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。
☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる