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王都編

王妃様は料理チート!

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襲撃された時の荷物は屋敷に持ち込まれていた。

ラドの依頼品『プレンダーガストレッドの揃いのペアニップルピアス』は無事だった。って言うか、開けようとした痕跡はあるんだが、これって錬金術師の強力施錠ロック掛かってるし。しかも悪意を持って触れたのならタマの呪いが発動したはず。猫又パネェ。クローゼットにはちゃんと俺サイズの服が吊られていたらしい。ティグレの服は梱包されたまま隣の部屋に投げ入れられてあった。マジでめんどくせえ使用人たちだな。返却できて良かった。

昼前。『お蕎麦ランチしませんか?(要約)』と王妃殿下からお誘いを受ける。

そ…蕎麦……!ゴクリと溢れてきた唾を飲み込む。


「ティ…ティグレ……」

「俺はお城の厨房に居るから。行ってきたら良いよ」

「……すまん…」


だって従者も護衛も置いてこいって書いてあるんだぜ!?くっそ!本当にヒノモトの蕎麦ならティグレにも食わせてやりてぇのに!



そんなこんなでティグレと一緒に城まで行き、ティグレは厨房に、俺は使用人に案内されて庭っぽいところに。『ぽい』というのはあれだ。……川が流れていた。小川だが、澄んだ清流が流れていたのだ。何故か響く鹿威ししおどし。小川の横には一段高い座敷と、何故か卓袱台。そう、あの小和(*ヒノモトの元号)の丸いローテーブルだ。


「まあ、いらっしゃいませプレンダーガスト。突然のお誘いに応じていただき嬉しいですわ」


あの演習場で2、3言葉を交わした王妃殿下がニコニコと笑っていた。何故かヒノモトの訪問着で。白いレースを使った鮮やかな青の訪問着。似合っているが高身長銀髪西洋美人顔に着物それは少し違和感がある。


ざる蕎麦と温かい蕎麦は悩みましたが、冬も近いので温かい方にしました。さ、お座りになって」

「お…ぉぉ……はい…」


靴を脱ぎ、王妃殿下の向かいに座ると程なくして蕎麦が………おおおおおお!出汁!!12年ぶりの出汁の香り!!


「会席スタイルも考えましたが、お忙しいでしょうから定食風に。さあどうぞ、召し上がって?すぐに揚げたての天ぷらもお持ちしますわ」

「天麩羅…っ!!」


思わず目を見開いてしまった。この…海無し国で……まさか、まさかっ…!?


「エビはお好き?キスもイカもございましてよ?」

「大好きですっ!」

「まあ……ほほ…素直な御方」


蕎麦を啜る。………っくあ!美味え!!鰹出汁がガツンときてその後に昆布の旨み、焼きあごの香ばしさ、干し帆立も隠れてやがる…っ!しかもリオおれ用に器は小さめ。だよなー…あんまり食えねえんだよ。普段が普段だからなあ。


「………ヒノモトの御方、というのは間違いございませんのね…」

「……(ズゾゾゾゾ…)んえ?」

「ごめんなさい。わたくし、少し貴方様を試してしまいましたの…。わたくしも『贈り人』。前世はヒノモト国の人間です。同郷だと偽って近付く者も少なくなく…」


あー、それで?道理で俺が靴脱いで畳の上を歩くのをじっと見てたり、正座して蕎麦を啜り上げるのを嬉しそうに見てたのか。



……ってか、海老の天麩羅っ!うっめええええ!!





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