32 / 160
王都編
ええ…食欲のほう?
しおりを挟む非常に不本意だがエルマー・ゲージが専属護衛になった。
なーんか嫌なんだよなー、こいつ。舐めてるっつーか、甘ったれてるっつーか……。まあ中坊なら仕方ないのか?反抗期真っ盛りってやつ?えーと、元部下が言っていた。なんて言ったけ?『ちゅうにびょう』?中等部2年生くらいの少年少女が『自分は特別な存在なんだ』って思い込む黒歴史。高等部くらいになってその頃の妄想ノートとか本棚の奥から出てくると、泣くほど恥ずかしくて軽く 愧死できるやつ。
前世の俺もやった。
中等部の頃は実家関係で自由が全くなくて、俺の秘められた力が顕現したら親父をボコる、とか、夕陽と共に妖魔大戦が始まって俺だけがそれに気付く…とか、伝説の維新志士の叔父さんに並ぶ俺……とか…。そのノートはすぐさま庭で燃やしたけど。今考えても恥ずかしい。あのノートの他に残ってねぇだろうな……実家のやつに見られてたら舌噛んで死ぬぞ?まじで。
エルマーは明日から正式配属。一旦、御前を辞した。……っていうかさあ!王兄に向かってあれはどうなんだ!?「じゃ、しつれいしまぁーっす!」って……駄目だ。絶対に俺とは合わない。ティグレも眉間に皺寄せてたし。
「エルマーの人事は貴方に任せます。解雇も取り立ても貴方が決めなさい。ああ、それと、王都まで貴方を護衛した騎士ですが、生き残った10名全てが貴方の下に付きたがっています。それも『お詫び』として差し上げましょう」
「………御意…」
さすが腹黒宰相。どこからどこまでが仕込みなんだ。あの冷た~い目の使用人や護衛たちは確実に『エルマーを護衛にすることを呑ませる』ために集められた。わざわざ俺に悪感情を持っている人間をピックアップして。ではエルマーを俺の護衛にすることによってラドにもたらされるメリットはなんだ?まさか本気で俺に配慮して『同年代の転生者』を付けた……わけねぇよなあ…。
「ごしゅじーん♡」
「おっと…どうした、タマ?ポチも」
探索を終えたのか、葉っぱをいっぱい体に塗したポチタマが帰ってきた。タマもポチもご機嫌で、目を爛々と輝かせている。
「ねね、ご主人!あれ、ご主人のものになるのニャン?」
「ああ…エルマーか?まあ……そうかな?」
人事権だけどな。
「いいニャ!いいニャア!あれ、いらなくなったら欲しいニャン!」
「ガァウ!」
む?気に入ったのか?まあ転生者だしな。ちょっと寂しいがそういうことも……
「食べたいニャ!美味しそうだニャン!ご主人は食べたらなくなるから絶対イヤニャけど、あれなら食べても良さそうだニャン♡」
「バウバウッ」
ええ…食欲のほう…?どこの世界も、妖は妖かぁ…。
2,405
お気に入りに追加
2,524
あなたにおすすめの小説
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる