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【竜王国近衛視点】
しおりを挟む「話が違う!」と瀕死の勇者が怒鳴り込んできた。どうやら宰相があの子供を取り戻す為に唆したようだ。怒鳴り込まれて軍を貸せ、といってもこちらもはっきり言うと頭陀襤褸なのだ。
陛下の発作は今では毎日の事となっている。後宮は見る影もなく瓦礫の山となり、100人はいた陛下の『供物』たちは全て食われた。
もう……無理だろう。
宰相は密かに陛下の御酒に毒を入れたようだが、苦しみ悶えて被害を大きくするだけだった。あの子供がいれば……
そう思いかけて、私は首を振る。
あの子供の居場所は魔王の一人、『傲慢のルシファー』の居城だとすぐに知れた。『ラストダンジョンの街』ではあの子供がルシファーを誑かしたのだと実しやかに囁かれ、宰相はあの子供は陛下の妃で、愛し合う2人をルシファーに引き裂かれた、と嘘を誠にしようと声高に叫ぶ。
その二つの話を噛み砕けば、あの子供は幸せなのだと知れた。
相手は魔王の中でも最悪の凶悪さを誇るルシファーだ。だが、『誑かした』と言われるほど仲睦まじいのならば、きっと大切にして貰っているのだろう。
先程会議では決まったのは、勇者の援軍として3万の兵と500の竜騎士を送り込むことになった。……そして。
そして、その戦には陛下も同行される。
宰相閣下も形振り構わなくなってきた、と言う事だ。この戦で、陛下は不慮の事故にあわれるのだろう。
そして、護衛である私たち近衛騎士が罪を被ることになる。
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