11 / 101
嫁のお仕事
しおりを挟むなしくずしに嫁になった。まあループから救出してくれた人だし、何より顔がいい。なんていうか、もうドストライクだ。性格はアレだけど、それを減点しても顔がいい。それになんかすっげえ優しいし。
千早はなんと魔王様だったらしい。
この世界にいる7人の魔王の1人、傲慢のルシファー。
んー、まあ傲慢って言えば傲慢なの?でも優しいし、筋は通ってると思う。ちょっと俺に対する感情が振り切れまくってると思うけど。
んで。
嫁のお仕事は通訳だ。なんの?って……魔王である千早と《眷属》とかいう鬼っぽツノを生やしたマッチョおにーさんたちの。
千早たち魔王たちはこの異世界に転移するときに『代償』を支払った。大きなものが通るほど、大きな代償がいるらしい。それは年齢だったり言葉や視覚、記憶……そのひとが大切だったものが奪われることが多い。
千早が支払ったのは聴覚。
千早はもう500年近く、無音の世界で生きてきたらしい。
怖いと思うよ?だって聞こえないんだもん。自分の声さえ。聞こえないから自分の声が段々とおかしくなったのを知った千早は、喋るのをやめた。指先に魔力を灯らせ、空間をタブレット代わりに筆談で生きてきた。それでも戦闘力は魔王随一っていうんだから恐ろしい。
千早たち魔王は、《伴侶》とかいうお嫁さんを見つけて『互いに愛し愛される』ようになれば代償は戻ってくるらしいけど……。
そんで、千早は俺を見つけた。
正直本当に俺なの!?って思うんだけど、千早が聞こえるのは今んとこ俺と兄弟である魔王たちの声らしい。
「タぶん親父タチのコエもきこエるとおもウ。あア、ユきハ可愛くテかワいくてカワイイ、おレの救世主ダ」
そう言いながら、千早は俺を抱きしめて頬擦りする。
最初はデスボイスだった千早の言葉は、今は抑揚とかめちゃくちゃだけど俺と一緒に訓練中だ。500年喋らなかったんだ。ゆっくり根気強くやっていけばきっと戻る。眷属のみんなも「千早様が喋った…!」とまるで『クラ●が立った!』みたいに涙ぐんで喜んでたし。
俺が眷属のみんなの声を千早に教えて、千早が直に喋る。それだけでこんなに喜んでもらえるんだから俺も嬉しくなってくる。
なにかご褒美はいるかと千早に訊かれて、つい「お芋食べたい!」って叫んだ。
「イも?」
「うん、お芋!俺が育った村って、芋がよく育ったんだ。まあ…芋しか育たなかったっていうか。甘いサツマイモみたいなのとか、ジャガイモみたいなのとか、サトイモみたいなもっちりしたのとか……あ、サトイモみたいのは茎も食べれたよ!スポンジみたいでシャクシャクしてね…」
「……いモ、スきカ?」
「うん……えっと…芋とか…野菜、好きだよ?」
「ふム…」
千早は顎に手を当てて考え込んでしまった。
え……だって、魔王城ってお肉が主食なんだもん。初日は吐いちゃって食べれなかったけど、お肉も好きだよ?転生して滅多に食べれなかったけど。脂ののったお肉はまだ無理だけど、今はササミっぽいお肉を食べさせてもらってる。あと、城下?の固いパンを小さく切ってもらって飲み物でふやかして食べてる。
「よシ、親ジをよボウ」
んっ???
96
お気に入りに追加
974
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる