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久しぶりのお肉は劇物です

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恩人らしい謎の美人は指先から小さな黒い蝶を飛ばした後『脱げ』と俺の服……と言うかスケスケの布切れを毟り取った。


「ひぇ…っ!?」


ちょおおおお!?やめてやめてやめて!!まずいって!!俺の足首に巻き付いてた金色の鎖を引き千切り、ネックレスっぽい宝石の首輪も千切って投げ捨てる。

嘘だろ…まさか!?

ちょっと泣きそうになった俺を満足気に見た美人は、足元に落ちてた黒い服で俺を包んだ。

……んっ?


『今日から俺の嫁なのに、他の男のモンは要らねえだろ』


え……あー…あー……そういう?

って言うかさあ、昨日は極限状態でおかしかった自覚はあるけど、……その…よ、嫁…って……


『俺色に染めてやるから覚悟しとけ』


ええええ……


どうしよう。ついて行けねえ…。


『俺は千早。お前は?』

「え…えー………ゆ…ユキ……」


前世は由希で、今生も俺は『ユキ』だった。最後まで奪われなかったのは、神官様がくれた名前だけ。


『ユキかあ……ユキ、可愛いな、ユキ』

「えええ…」


千早と名乗った美人は、髪の毛を弄ったりつむじにチューしたり……。ど…どうしよう。嫌じゃないから暴れないけど、すげえ困る。なにが困るって、なんで俺いやじゃないの!?

目を回しながらチュッチュされてると、何やらガサゴソガチャンと音がして


「千早様、食事をお持ちしました」


ええ…。

ゴミの山を乗り越えて、長身のイケメンがお盆を手に現れた。


「……っ…………ぅ…」


俺は思わず口元を押さえる。香ばしい肉の匂いとニンニクの匂い。以前の俺なら目を輝かせて齧り付いてただろう食事それ


「…うっ……げ……、げほっ…」


吐いた。

いや、正確には吐けなかった。当然だ。ループの前も絶食させられて水さえ飲ませてもらえなかった。ループ中に出た飯は怖くて絶対口にしなかった。


ああ…クソ……俺の体、めっちゃ弱ってない?……おかゆ。おかゆ食べたいなあ。塩で少しだけ味付けた白粥。そんなものない。あるわけない。ここは異世界だ。


「……おかゆ………………」




俺の意識はもう一回暗転した。









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感想 16

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