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正体不明の求婚者
しおりを挟む歪む視界の、二つの青。涙を瞬きで押しやると、見たことがないようなきれいな顔があった。黒い髪と、ちょっと吊り気味の青い目。アーモンドアイっていうんだっけ?とにかく美人だ。えっ…なにこれ?死神?天使?
『縺雁燕縲∽ソコ縺ョ雖√↓縺ェ繧後h』
「……へ?」
美人がツイと指先を動かすと、訳の分からない模様が空中に浮かんだ。文字?ああ…でも俺の育った村、村長と神官様くらいしか読み書き出来なかった。覚えなくても生きていける村だった。
……わかんない…
『縺翫l縺ョ繧医a縺ォ縺ェ繧�』
「ご…ごめ……わかんない…」
美人は怒るわけでもなく、色んな文字を描いてきた。書くんじゃない、描くんだ。だって図形にしか見えない。
なんなんだろう、これ。俺の妄想?夢?とうとう俺って頭イカれちゃった?
『お前、俺の嫁になれよ』
「……え…?よめ…?」
俺が呟くと、美人はパァってお日様みたいに笑った。えっ…眩しいんですけど。っていうか……
「に…ほん、ご…?」
『大日本帝国からの転生者か?』
「う、うん…」
『よっしゃ、言葉も通じる。お前可愛いな?嫁になれよ』
「え…」
えええええ…。
「ねえ…普通さ……なんでこんな酷いことになってるとかさ…そっからじゃない…?」
『虐待されてんだろ?助けてって泣いてたじゃん。俺なら優しくするぞ?なあ、うんって言えよ』
なんだろう…この、微妙な言葉通じない感……ああ、でも…。
きっとこれは俺の妄想だ。
俺、もうすぐ死ぬのかな?だからこんな都合のいい夢を見てるんだ。だからこんな……
「……俺さ、もうずっとここでループしてんの。明日になったらお前も俺のことなんか覚えてねえよ」
『はあ?』
久しぶりにこんなに喋った。喉がカラカラだ。
「もうずっと、ずーーーっと!こうやってモノみたいに扱われてんの!オナホかよ俺は!?あんた俺のカッコ見えてる!?ズタボロだろ!?それなのになんなの、もう…っ!お、お前だって……明日になったら…俺のことなんか忘れてるくせに……!」
『なんだそれ』
「なんだそれって、俺が聞きたい……なんで…こんな……」
またブワッて涙が溢れた。
『で?嫁になってくれるの?』
「………っ」
プチッと俺の中で何かが切れた。こいつ…!!話が通じねえんじゃねえ!聞く気がないんだ!!
「明日まであんたが俺を忘れてなけりゃ……嫁でもなんでもなってやるよ…っ!」
『ほー?忘れんなよ?その言葉』
美人は俺の頬をするりと撫でる。
『焦らされるのは好きじゃねえんだけど、明日、だな?』
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