【7人の魔王1】転生したら悪役令嬢の父だったらしい

【イチ視点】さあ、楽しみだ。

出稼ぎ組の報告書を見て私は笑う。ああ、まったく…良い拾い物だったと思う。

何が？ああ、あれだ。先日落ちてきたアレ。ユスだ。

暁様の感情が珍しく動いた。

暁様は御子息様の中では一番おっとりしている。他の御子息様たちはこの千年でさっさと伴侶を決められたと言うのに、あのお方は我ら眷属たちだけでいいと、この裂け目クレバスに引きこもった。まあそれはそれで嬉しいのだが、それではあの御方の御命令に背くことになる。

ユスの見てくれは文句なしに整っているし、眷属になる前から暁様にデレデレだった。渡界人とかいびとで暁様と話も合う。暁様の望む食事もせっせと作って奉仕しているし、まあ、まずまずだ。しかもあの隠しスキルと内蔵魔力の量。伴侶としては申し分ない。

ユスの ーーー ユスティア・ヴァル・エネシア・ヴェルミアの、上っ面のステータスだけを見れば至って平凡。魔道演算系統が飛び抜けてはいるが、構築するには魔力はあっても経験が足りないだろう。僅かな内政スキルがある程度の、見てくれだけのお人形。そう思ってエネシアはアレを生贄に差し出したのだろう。

だがおかしいと思わなかったのか。エネシア王国の中で、あのヴェルミア公爵領だけが発展しているのを。

衛生、運輸、土木などの公共工事。学校制度の教育による脅威の識字率。冒険者ギルドと商人たちと提携した職業訓練学校。税が高いとは言うが、その全てが領の発展に使われている。治安部隊の徹底で安全が保証されれば当然人は集まるし、石畳の舗装も行き届いているから商人の出入りも多い。『上下水道』などという夢のような技術があるのはエネシアでは…いや、この近隣諸国ではあそこだけ ーーー だった。


さあ、楽しみだ。


あの国に、アレが甘やかした民を御ぎょせる賢者がいるのか。