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私と妹の夜会 1
しおりを挟む馬車が停まる。王宮に着いたのだ。……着いてしまった。楽しい時間が終わってしまった寂しさと、今から口さがないお喋り淑女たちのネタになるかと思うと……うっ…胃が……!
「うふふ…大丈夫ですわお姉様。今日のエスコートはルビィ様ですのよ!こんなにもお美しいお姉様に文句がある奴ァ、ルビィ様がけちょんけちょんのギッタギタにしてくださいますわぁ!」
「……まあ、ニナったら…」
ふふ……私の緊張を解そうとしてくれるのですね…。この子は本当に良い子です。胃のあたりがズーンと重かったのに、今はなんともありません。
「けちょんけちょんのギッタギタはちょっと外交上どうかと思うけど、ちょっと殺気を当てるくらいなら…いい?かな?」
「やめてよルビィ。また母上に怒られる。父上とお祖父様は笑ってくださるだろうけど」
……サフィ殿下も苦労が多そうです。
「失礼します」
静かに扉を開けてくださったのは見慣れぬ美少年。侍従の方でしょうか。大国の王子様は侍従もイケメンですのね。
「到着しました。どうぞ」
「うん、ご苦労様」
「じゃあ行くか。……あ、エイリック、例の件は?」
「は。買収は予算内に収まりました。あちらも予定通りに動いておりますので概ね順調かと」
「うん、良いな。ご苦労だった、良い感じだ」
「光栄です」
あらまあ?お仕事ですか。お忙しいのにルビィ殿下にエスコートしていただいてしまいました。お詫びを…と視線を動かすと、侍従の方と目が合いました。
「………………」
にこぉ!と天使の笑顔で微笑まれました。ですが何故でしょう。なんだか値踏み……いえ、観察しているような目です。
「ふむ…ふむ…。なるほど!若様は母親至高主義でいらっしゃいましたか!」
「………っ!?…っ……!?………!!」
「あ、やっぱりエイリックもそう思う?」
「月の女神のような陛下とはお姿は違いますが、こちらのお嬢様のお姿は、しっとりとした旧き琥珀色の女神の如く麗しい。そしてさらに、なんとまあ……酸いも甘いも嗅ぎ分けた年嵩の女のような図太そうな瞳!知性というよりは『なにかやっちゃいました?』系の面構え!このどっしりとした母性!!最高です!!!」
真っ赤になってアワアワしてらっしゃるルビィ殿下。侍従の方、サフィ殿下、そして何故か妹までがウンウンと頷いている。えええ…
ほ…褒められてるのか貶されてるのかわからないわ…。
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