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新世界にて【聖龍視点】1
しおりを挟む今日も今日とて大量の仕事が積み上がっている。おかしい。こんなはずではなかった。
「ぼんやりしないで手を動かす。1289西地区の地慣らしは終わったの?221地区の湖の水質はデーターでてる?55590地区の迷宮予定地の内装はどうなってる?」
目の前でバリバリ仕事を片付けるのはかつて殺し合った男だった。しかも私が負けた。あ、と思った瞬間に首を刎ねられ、そのまま再生が間に合わない速度で切り刻んでくれた男だった。
もう気の遠くなるような随分と昔。この《世界》の跡地に来た時は大変だった。この男 ーーー 『吾』と呼ばれる《ふるきものども》が一柱は食事中だった。《ふるきものども》は悍ましいことに共食いをする。がりがり。ぼりぼりと、同胞を喰っていた。その凄惨な現場で、この男はなんの前触れもなく、ぐるん、と私を見た。わかるだろうか、この恐怖が。
生前、私を殺した男が、魂魄剥き出しの状態の私を捕捉したのだ。
私は必死で伝えた。声は出ないし、男から見れば私はぼんやりあやふやな靄のような存在だろう。手振り身振りで必死で訴えた。
『私 子 お前 子 伴侶 殺すな 来る 子 待つ 頼む』
『吾』は少しだけ首を傾げ、「ああ、お前あの桃色頭か?」と笑った。
「そうか。守備よく子供たちは誑かしてくれたのか」
……ん???なんだか不穏な言葉が……
「いいよ。たらふく喰って今は機嫌がいい」
私は死んだ時と時を逆行するように蘇生された。それからなぜかこの男の助手のように扱き使われている。
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