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陽咲の嫁取り
しおりを挟む陽咲んとこの筆頭眷属が『嫁取り』と称してあっちこっちを襲撃していたのは知っていた。色んな国、色んな人種、時には種族を変えて。その血を一滴ずつ飲ませて陽咲の舌が反応した者を嫁にする。そういう野望というか願いというか暴力的な祈りのような何かを繰り返していた。健気だな筆頭眷属。うちのフォージは見習ってほしい。いや、違う方向でフォージは俺への献身が振り切れてるんだが。
そういう襲撃を繰り返して、奇跡のように見つけた『嫁候補』。陽咲曰く、「めちゃくちゃイケメン」らしい。
……ん?男?えっ!?男なの!?男同士でくっついちまった俺が言うことじゃないだろうけどさあ!?
その『嫁候補』、転生者らしい。なんかほら、映画化とかして社会現象までなった絵本だ。ピ…なんとかの冒険?あれの作者らしい。あれの作者ってさあ……めっちゃ週刊誌に載る率多くなかったか?女優とかアイドルとか取っ替え引っ替えの……。
ちょっと不安だが、まあ陽咲を弄んだりしたら俺が脳味噌弄って監禁でもさせよう。そう身構えたのに、夢の中のミーティングで出てくる言葉は「イケメン」「優しい」「尊い」「ずるい」「かっこいい」「かわいすぎ」……とまあ幸せそう。作る飯は不味いらしいがデレッデレじゃねえか。心配して損した…。
「ひーちゃん幸せそうだねえ」
陽咲が幸せそうだと凛も幸せそうだ。良いことだと思う。
「……見に行こうか?ヒナの嫁」
「……!うん!」
ぱあっと凛の顔が嬉しそうに輝く。あー、尊いってこれか。確かに尊い。可愛すぎかよ!?
《星辰》である俺たちが集まれば少なからず影響が出る。それこそアヴァロンの時みたいにガッチガチに結界で囲っておかないと。過ぎた魔素は毒になる。
「ならば儂が磁場を抑えようかのぅ」
爺さんが協力してくれた。まあ爺さんは陽咲のカナンに別の目的があるそうだ。
「あの中にのぅ、かつて儂を捨てた男が居るのじゃ」
!!!???
「えー!おじいちゃんフられちゃったの?」
「そうじゃ。それまで鬱陶しいほど愛を囁いておったのに、ニンゲンの雌を娶った途端に牙を剥きおった。頭の悪い男じゃと思うておったが、儂が折檻する前に首を刎ねたくらいで死んでしもうてのぅ」
「あー…」
大戦前の爺さんの恋人が生まれ変わってカナンにいるらしい。
「次は失敗せぬように調教せねばのぅ。洗脳して、甘やかして、儂以外を見ぬように厳しく躾けねばの?」
ご愁傷様です…。
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