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転生商人がやってきた
しおりを挟むレーヴァンシュタインの件も終わったし、しばらくまったり過ごしていたら隣接国の首がごっそり入れ替わった。隠居、処刑、暗殺と様々だが、ベーレンドルフのオッサンはとりあえず隠居らしい。俺の最後のおはなしを聞いてた護衛とか侍従とかが囀ったんだろうなあ。わざと消音魔法とかしてなかったもんな。最初に取引のあった商会たちは沈黙してるからアヴァロンとの取り引きは諦めたんだろう。諦めたって判断しよう、めんどくせえ。
各国から非公式な話し合いが申し込まれ一条が途端に忙しくなった。謁見じゃなくて会議だから、魔王じゃなくて、まずは一条と話し合いたいらしい。馬鹿だなあいつら。俺より一条の方が酷えぞ?俺は物理だけどあいつは経済でジワジワいくやつだぞ?まあ俺も出席してやったがな。そんなに絶望した顔すんなよ。
大まかに決まったのは、今後アヴァロンは国同士の取り引きはしない、ということ。あと信仰は自由だが、大っぴらに魔王と呼ばれる7人と敵対したりヘイト活動を行ったりしたらアウト。魔王や邪神を蔑める像を建てたり、演劇や書籍でのプロバガンダやっちゃったり、抗議デモやったりは連帯責任だからよく考えろと言っておいてもらった。
「魔王陛下を崇拝する神殿は建てて良いですか!?」と良くわからないことを訊かれたが、凛と俺を見て目を輝かせてハアハア言ってたから好きにさせることにした。小国の皇女様らしい。あー、あそこだ。ヴァルハラの真下にある島国だ。魔素にでも当てられちゃったんだろうなあ…。その時の俺はその小国が魔王崇拝国として聖地になると知らなかった。知ってたら止めてたあんなイカれた宗教……!
あー、話を戻そう。そうそう、貿易だ。輸出入の話。やるなら商会を通してってことだ。個人貿易みたいなもんか?こっち側の商会はすでにエーヴェルシュタイン入りしている。実質その商会が窓口ってことだ。元大日本帝国人の転生商人は性根たくましく「自分が窓口やります!」と挙手してきた。アヴァロンの商品は小売するけど、他の商会にも卸す。当然転生商人が売る方が安くなるだろうし、他の商会は転生商人と同じ価格にするなら知恵を絞らなければならない。とんでもなく儲かるかもしれないが、その分危険度が高すぎる。ハイリスクハイリターン。転生商人は自身がAランク冒険者である程度の危機回避はできるらしい。Aランクってどんくらい?と栢木に訊いたが、ヒュドラくらいなら楽にソロで倒せるくらい…と。わっかりずれえ…。要するに野党程度なら瞬殺できるけど暗殺のプロとかに囲まれたら厳しいとのこと。
「問題ないっす!うちの旦那を使います!」
転生商人 ーーー アンブローズ・アップルヤードの配偶者はSランク冒険者だった。栢木が現役の時に何度か大規模討伐で一緒になったことがあるようだ。
「あいつかあ…。腕は立つし性格もまあ悪くはないんだが…」
渋い顔をする栢木の情報では件の配偶者、殺し方が汚いらしい。
「大剣がエモノなんだけど、なんつーか、斬るっつーより撲殺?内臓やら脳味噌ぶち撒き系だから、戦闘は外でやらせてくれ」
あー…(察し)
それでもSランクとAランク2人じゃあ勇者クラスを投入されたら心許ないって事で、アンブルローズは旦那ともどもアヴァロンに移住することになった。エーヴェルシュタインの家は商館として改装するらしい。
ちなみにアヴァロンに住むと漏れなく俺と凛の加護っぽいのがつくからパワーアップする。兄貴たちが気にいるとこっそり夜中に進化させられる。良いのか悪いのか…。
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