【７人の魔王 終】白の恋と、黒の愛

【ウィンストン視点】

時折遺跡から発掘される我々は《遺物レガシー》というらしい。

発見された時は固く冷たい石像のようだが、外部に持ち出してやると動き始める。美しいものは王族貴族に献上され、壊れていたり動きが鈍いものは売りに出される。

俺は売りに出され、たまたま頑丈だったために金持ちの息子に買われた。曰く、「金で勇者の称号を買ったのにタンクがいない」……と。俺は盾として勇者パーティーとやらと迷宮ダンジョンを探索する。

順調に勇者は功績をあげた。俺の体は骨フレームが曲がり関節ギアが錆び付いたが頑丈さが災いした。俺は動き続けた。

アルムントダンジョン最下層。ここで俺を使う勇者は初の踏破者になるはずだった。はず ーーー だった。

勇者が功を焦ったのか、昨日の酒が残っていたのか。階層主ケルベロスの頭を潰し損ねた。俺は「盾になれ」と命じられて一人この場に残る。


ああ、どうしてこうなったのだ。


わからない。以前の自分も。自分の意思も。心も。

何故あのようなモノに仕えたのだ？俺のあるじはアレだったか？いいや違う。仕えるべきあるじはどこだ。どこに消えた。どこに行ったんだ。

ケルベロスの頭を捻じ切って外へ……


外は……どこだ。


破壊された転移陣。階層主を倒せば外界と繋がる扉は壊されていた。


……そうか………俺が、逃げないように…俺が死んでも階層主が逃げられないように……。


壊れた扉を蹴破ると、そこにはまた闇が広がっていた。今までのモンスターと格が違う。群がるモンスターを破砕し、逃走し、やり過ごして。


グルル…と低い唸り声がした。


もう動けない。


終わりだ。任務は失敗……いや、放棄、か…。


GAAAAAAAAAA！！！


ミノタウロスの倍はあるかという大きさのクマだった。勇者なら失神しそうな《威圧》をぶつけて四つ足で突進してくる。


「………っ…！！」


終わりだ。

その瞬間に思い出したのは、あるじの最期の言葉。



『いきなさい』



それは『生きなさい』だったのか、『行きなさい』だったのか。




『次の主人を見つけなさい。お前の存在意義を証明できる主人を』





とすん。




何かが落ちて、次に大熊の体が勢いのまま地を滑っていった。





「………お、生きてるな？ズタボロだけど」





そのひとは笑った。