90 / 174
クリスは実は賢かった!?
しおりを挟む「あっ、ホントに『人工太陽』の子だ!移住してきてくれたんだ!」
籠に入れた大量のパンを持ってクリスが部屋に入ってきた。後ろに控えるエルンストとレイブンたちも寸胴鍋やら食器やら抱えている。
「しばらく何も食べてない人はよーく噛んで下さいね。お粥かパン粥かで悩んだけど、食べ慣れたパンがいいかな~って」
「おかゆ……こ、米!?米があるのか!?」
「ありますよ!おにぎりもどんぶりも思いのままです!」
「っ~~!!しゃあ!!勝ち組!!魔王選んで勝ち組!!うおお!パン!柔けえ!!!スープうんまっ!!」
オッサン聖女が落ちた。うんうん、異世界の飯に絶望してたらクリスの飯は悪魔の味だからなあ。
クリスはぼんやりしているベンジャミンにパンを渡してそのままストンと隣に座った。
「久しぶり!」
「………?」
「人工太陽できた?俺もね、あの後理論纏めようとしたんだけど直後に事故にあってね?気が付いたら君の名前聞いてやっと思い出しちゃったくらい時間が経ってたよ」
「……あ、『人工太陽の構築と運用』…」
「そう!あれができたらお米がもっとおいしくなるよね!?他の魔王様のとこにも使ってもらったら農作物の収穫量も増やせると思うし栽培のコントロールが容易になるよね!」
「……そうか、君か………」
「ん?」
「いや……いい。良いんだ……人工太陽は…もう一歩のところで全て置いてきた…」
「えっ、そうなの?」
「研究所の皆がこちらに来たのなら、あの国では研究は続けられないだろう」
「ふぅん…?じゃあもう一回ここで考えたら良いよ!」
「………」
「俺ね、あの時の事思い出しながら頭の中でイメージしてたんだけど、やっぱりこのくらいの小型化したのをこう…ぎゅっと詰め込んでね」
「……ほう?だがそれでは効率が悪い」
「効率より安定化でしょ!」
「配線が大量に要るだろう。美しくない」
「ええ~!カバーかけちゃえばわかんないって!」
「メンテナンスも複雑になる」
「ええ……んー、じゃあさ、無線充電でいけない?」
「ジュウデン…?」
「あー、んーと…魔力か……それの受け取り器を作って配線を無くして…」
「待て、その無線という理論を詳しく聞こう」
「えっとねえ、あー…エル兄、紙。紙持ってない?えーと、つまりね?魔力を流すと魔力が巡回するシステムを作ってその範囲に…」
「こらクリス。食事の後にしろ。ベンジャミン王子も困って…」
「困っていない。続きを」
「磁界っていうのがあるんだけどそれを魔力に応用して……」
「だがそれだと待機中の魔力のロスが……」
「ベン、先に飯食え!お前しばらく食ってねえだろ!?」
「待ってください先生、今なにか閃いた気がするんです」
「飯の後にしろ!!お前今ハイになってるだけだって!!」
「範囲が広いと大量の魔力と圧がいるからそのシステムをね…」
「クリス!食事が先だと言っているだろう!?」
あっ……これ混ぜたらダメなやつだ。クリスはのほほんとして食べ物の話ばかりしているから気付かなかったけど……実は結構賢くないか!?そういや遠心分離機とか缶詰工場とかクリスの主導だもんなあ…。
「「先に食え(食べてください)!!」」
ああ…こりゃあお守りが大変だあ……。
30
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる