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上げて落とすは基本
しおりを挟むロゼをアレクシスに預けてふらりと《転移》したルーカスは数分もしないうちに帰ってきた。酷い顔色で。
「疲れた…」
そう言ってアレクシスに凭れ掛かりそのまま眠ってしまった。諜報として至る所に潜んでいるレイブンの一人からの報告で、ルーカスがかつての友人と孫(血縁上は甥っ子)に絶縁宣言を叩きつけて帰ってきたのだと知った。
友達から裏切られるって辛いだろうなあ。こんなに大事にしている妹を任せた友人だ。俺で例えればヒナや千早に裏切られるような感じか。……キツい。マジキツい。想像しただけで吐きそう。無理。無理無理絶対無理!俺なら泣く。泣き縋るね、間違いなく!
「起きたら美味しいご飯が食べれるようにしましょうね。美味しいものをお腹いっぱい食べると元気が出るんですよ」
……うん。まあそうなんだがクリス、お前は美味しいものが食べたいだけなんじゃ…。
もうレーヴァンシュタインの事は忘れてもらおう。傷跡は消えなくても、その上からパラパラと幸せが降り積もるように。
けど俺がムカつくから報復はするけどな!
「んん~?椿、悪い顔~」
凛が俺の頬を突く。
「魔王サマだからな?悪いことするから悪い顔なんだ」
「うん、僕、悪い椿も大好きだよ」
フヒッと凛が笑う。
「上げて落とすは基本だよね?」
「お前も悪い魔王サマだなあ…」
凛が気付いたように、今は何もしない。そのヒロインとやらと幸せに暮らしてもらおう。魔王サマは影からこっそり支援しちゃうぞ。それと同時にレイブンたちに言って反王制組織を掌握して育てさせよう。なに、金ならある。俺たちは使わないからザックザクと。レーヴァンシュタインを潰すって言ったら一条も快く資金を大放出してくれた。まあその組織はまるっとアヴァロンが掌握するんだから問題ない。必要経費だと。
ロゼから聞いた『ストーリー』は、『逆ハーレムルート』。聖女だかなんだかの一人の女を複数の男が囲むハッピーエンド。女王が死んだ今、トビアスとかいうクソ野郎はただの貴族の男。なら、ヒロインとやらが幸せになるのは王太子が国王になり、ヒロインが『王妃』になってから。もしくは第一子が産まれてからだな。
幸せの絶頂でドン底に落ちて頂こう。
俺が直接手を下すわけじゃない。遅かれ早かれ、アレクシスという絶対のカリスマを失ったレーヴァンシュタインは民主化するしかなかった。レーヴァンシュタインという国は、そうでないと生き残れない。少し時間を早めてやるだけだ。
凛がクスクスと笑う。
「お祝い、しなきゃね?」
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