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【使者視点】
しおりを挟む私はノルトライン王国筆頭公爵家当主、ロレンツォ・ベーレンドルフ。クソ陛下に「魔王と会って懐柔してこい」と無茶振りで丸投げされた。
懐柔も何も…話は通じるのか?勇者パーティーとゼノドア軍を一瞬で壊滅させた『魔王』は目撃情報はないが、ゼノドア人を鏖殺した魔物たちは人型で黒い翼を持つ…だけしかわからない。陛下はこれを機にベーレンドルフの勢力を削ぐつもりなのだろう。死ぬわけにはいかない。下の息子はまだ乳飲み子で、真ん中の娘は王太子との婚約が決まったばかりだ。亡き親友と初恋の君に「幸せになってみせる」と誓ったのだ。彼らの復讐も果たしていない。死ねるものか…!
「顔を上げることを許可する」
謁見の間で目にした『魔王』は ーーー 美しくて傲慢で、何より恐ろしかった。
その手に天女のような美女を抱き、こちらを睥睨していた。『ゴミクズ』と呼ばれたが、あれはそんなものを見る目じゃない。毒虫を見る目だ。確実に潰される。冷や汗……いや、身体中の穴という穴から体液が滲み出て止まらない。若い頃は騎士に混じって災害級の魔物を討伐し、獣型の魔王とも対峙したことがある……が、これ、は………!
「陛下、そこまでに致しましょう」
救いの手が現れた。尤も、それが救いかはわからない。だが不快感を露わにした『魔王』よりは数段マシだ。
ティディ・ランメルツ。魔王に攫われた最初の被害者。亡国ゼノドアの王太子の恋人。侯爵家令息。なぜ彼が、魔王の傍に侍っている…?我々の情報は正しいのか…!?
「さて、交渉しましょうか?この件に関しては私が陛下に一任されました。私はティディ……ええ、ランメルツ家はもうないので、ティディとお呼びください」
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