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ルーカス・フェリエーラと女神裁判 3
しおりを挟むごくり…と喉を嚥下させた音は誰のものだったか。もはや卒業生や保護者たち観衆も、当事者であるロゼマリアも息を殺している。きっと別室でこの光景を見ている者たちも同じだろう。 ーーー 陛下以外は。
「報告。前任の王家の影は次期国王と推定されたルドルフ・レーヴァンシュタイン王子の指示の元、ロゼマリア嬢の行動記録を改竄。ウルリカ・バッヘム嬢に悪質な嫌がらせを繰り返したと虚偽の報告を少なくとも2年以上続けていたと把握。またそれ以前にも… ーーー 」
「嘘よっ!でたらめ……っきゃあ!!」
緊張した声色で報告を始めた王家の影当主。その報告を大声で遮った糞売女の頬が切れた。
「い…痛ぁい!!痛いっ!あ、あ、…わ、私の、顔が…っ!」
「ウルル…!!」
『嘘を吐くと罰を与える。そう言ったでしょう、小猿?』
うん、そんなに大袈裟にしなくて良いのにね?浅いしそんなに大きな傷じゃない。
「続けてください、ブリュンヒルト隊長」
「……それ以前にも、ルドルフ・レーヴァンシュタイン王子はロゼマリア嬢との定期的な茶会の欠席も改竄。婚約者へ贈り物をする為の公費を横領、城下の飲食店で使用した。こちらは飲食店の帳簿を押さえてある」
あー、多分娼館だな。エロ猿め。まあロゼマリアを襲うよりマシか。
「ロゼマリア嬢からウルリカ・バッヘム嬢に行った軽犯罪の内容。器物破損。名誉毀損。殺人未遂。共に証言者を王宮に召集。リンドパイントナー子爵令嬢、ローエ商会令嬢、シェンク男爵令嬢、ツァイラー男爵令嬢、グーラ村ユッテ、アーレンス子爵令息、ヴルフ卿子息、バイルケ伯爵令息、全員が証言を覆す。現在勾留中。全員の証言を纏めると「犯行現場を見たのではなく、ウルリカ・バッヘム嬢が泣きながらそう言っていた」と。私からは以上だ」
「う……う、ぅ………!!」
「……くっ!ま、まさか…そんな……!」
糞王太子と糞売女は否定ができない。女神ザリエルの前で嘘は通じない。
「私からも報告だ」
ギルド長が手を挙げた。
「ウルリカ・バッヘムは『愛の秘薬』を使用し、盗賊ギルド構成員ディータを籠絡。構成員ディータは事実を改竄、虚偽の報告を2年と半年の間、繰り返していた。なお、ウルリカ・バッヘムが王立学園に入学する以前の報告は正しく為されている。虚偽の報告内容は『ロゼマリア・カーディナル公爵令嬢に異常はない』というものだった。これはロゼマリア嬢がルドルフ王子やその側近候補、ウルリカ・バッヘムに奴隷のように扱われ、虐げられていた事実を隠そうとしたものと思われる」
「ちっ…違う!!」
糞王太子が声を上げた。
「私はロゼマリアを虐げてなどいない!!」
何言ってんだこの糞が。殺すぞ?
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