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ルーカス・フェリエーラと断罪劇(ファルス) 8
しおりを挟む「水が…怖い……?」
「そう、朝、顔を洗う盥の水でさえ怖いんです。医師の診断書もあります」
「うそよ!そんな設定なかった!!」
「おや、聖女様、『設定』とは?」
「……っ!…よ、予言、よ!私の予言ではロゼマリアは水なんか怖くなかった!だっておかしいでしょ!?『水』の魔法適性者が水が怖いなんて…っ」
「………聖女様?ロゼマリアの適性をどこでお知りに?」
「えっ…」
「戦時中でもない限り『魔法適性』は秘匿されます。他国や特定の団体により誘拐や殺害などが予想されるためです。それをこのような場所で暴露されるなど……はあ、神殿の聖女教育はどうなっているのでしょう。…まさか神殿が態と……?」
「よっ…!予言よ!それも予言なの!神様のお告げなのよ!!」
「神様の?」
「そう!全部お告げなのよ!スラムのインフルも暴動も、国境の壁の壊れてたのも、魔物の暴走も地震も!全部予言してあげたでしょ!私は聖女なの!なんでもお見通しなの!」
馬鹿なのか、この女?全部ロゼマリアの予言じゃないか。
「ねえルーカス様!もうやめて!ロゼマリアは魔女なの!このままだと世界が終わっちゃう!だから私…私……」
「さて、ではその予言から答え合わせです」
「え…」
「聖女様が『予言』なされたのは12月の初めの頃。間違いありませんか?」
「え……わ、わかんないわ…」
「取り寄せた神殿の記録ではそうなっています。ですが、王家主導の零番地区の再開発は10月に始まっています。それはロゼマリアがあなたより先に零番地区の暴動と流感を『予言』していたからです」
「違う!違うのルーカス様!!私、ロゼマリアに予言を奪われたの!本当は私の予言だったのよ!!」
「奪われた?」
「ええっ、そうよ!私が予言していたものをロゼマリアが奪ったの!!」
「どうやって?」
「え……えっ、と…か、紙に書いてたの!それを…」
「証明はできますか?記録は?証拠は?」
「フェリエーラ!聖女であるウルルが言っているのだ!疑うなど貴様!首を刎ねられたいのか!?」
「証明できない、と……まあ良いでしょう。ではその予言。どうして早めに対策を取らなかったのです?」
「え」
「対策ですよ」
「だ…だって……」
「仮にも王族である王太子殿下と側近候補の皆様、そして優秀な校医がいつも傍に居たのでしょう?なのに対策も取らなかった。王太子殿下がいらっしゃるのに陛下に相談さえなかった。宰相のご子息、騎士団長のご子息、大神官のご子息。錚々たる顔触れがいらっしゃったのに、何故?」
「え……だって、そのぅ…」
「ロゼマリアが零番地区の流感と暴動を予言して、それは王弟殿下から陛下に伝わった。陛下は半信半疑ではあったものの、すぐに対策を取られた。どうしてあなたは王太子殿下に予言を伝えて零番地区の異変を陛下のお耳に入れなかったのか」
「えー…でもぉ……」
「魔物暴走も国境の壁の破損も、緊急でした。なのに何故、終わった後で予言されたのですか?火山の噴火は直前でしたが、あれはすでに麓の村の避難が終わっていました。ロゼマリアは噴火する日時まで予言しましたからね」
「そ…れは!ロゼマリアはやっぱり魔女で…!」
「魔女が人助け?それは本当に『魔女』なのですか?」
「私たちを油断させるためよ!ねえルーカス様ぁ!もう良いじゃない!ね?ロゼマリアは世界を滅ぼす魔女なの!」
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