【7人の魔王シリーズ 番外】ルーカス・フェリエーラは妹を愛でるのに忙しい。

ルーカス・フェリエーラと陛下

今日のアレクシス様は午後から陛下との謁見があったが、俺が持つ報告書で朝一番に繰り上げられた。謁見というよりは兄弟水入らずの茶会。陛下とアレクシス様の関係は良好だ。いつもは俺はアレクシス様の背後に控えているのだが、今日の茶会では席が用意されていた。


「ああ、これかぁ…」


陛下は報告書を速読してテーブルに置いた。


「私の方にも昨夜未明に上がってきてね？王家の影までが虚偽報告したらしい。前代未聞だよ」

「ああ…」


魅了によるものか、それとも王太子の指示かはわからない。だが事実、『王家の影』が君主であるレーヴァンシュタイン国王の意に叛いた。通常、影は報告の偏りを防ぐために交代制だ。だが学園の監視は何故か人員が固定されていた。


「とりあえず全員拘束させている。あとはよろしく頼むよ、アレク」

「承知した」


そこらの政治犯を尋問するのとは違う。王家の影ほどの隠密力と戦闘力を持つ人間を尋問するのだ。アレクシス様が統括する二八にいはち部隊に任せられるということだ。


それは俺が直接訊くことができるということだ。


陛下もすごいな。妹の件で俺が怒り狂うことがよくわかってらっしゃる。


「今日の予定は全て午後に回して、今から息子に厳重注意と1週間程度の謹慎処分を言い渡す。今のところはそれで勘弁してくれないか、フェリエーラ子爵？」

「……は」

「それから、1週間後からフェリエーラ子爵はカーディナル公爵令嬢の護衛に就いてくれ。この件に関して、全ての裁量を与えよう。息子やその側近たちも、私が今日直接言って聞かないようならきつい仕置きを与えても構わん。息子は一人だが、王位継承権を持つ者はまだ居るのだから」


じっと陛下が俺の瞳めを見つめる。


陛下と同じ、紫の瞳。殿下に遺伝しなかった瞳の色。






「では私は息子を謁見の間に呼びつけているので失礼するよ。アレク、フェリエーラ子爵、あとはよろしく頼む」