10 / 11
最終話
しおりを挟む皇国行きの船は、それはもう豪華な客船だった。広々とした個室に洗面所や風呂、クローゼットまで付いてる。食事も部屋に持ってきてもらえるし、毎晩パーティーとかやってるらしい。行かないけど。小さなサーカスやお芝居もあるらしい。……サーカスはめちゃくちゃ楽しかった。
えらく豪華だと思ったら新婚旅行を兼ねてるんだって。なんというスパダリ。好き。
海の旅を満喫して皇国に着くと、なんか護衛っぽい騎士さんがお出迎えしてくれた。んで、すげえ立派な馬車で新居に連れて行ってもらった。家でけぇ…。家っていうより屋敷?お屋敷だ。
そのお屋敷で何が何だかわかってないうちにメイドさんたちから風呂に突っ込まれ、やたらといい匂いのするオイルでモミモミされてピラピラの服に着替えさせられた。どうやらジョゼの兄ちゃんにご挨拶に行くらしい。ジョゼは「疲れてるのにごめんなぁ」とかションボリしてたけど、こちとら10年以上激務で鍛えてるからな。大丈夫!
ピッカピカにされた後にこれまた4頭立ての凄え馬車に乗る。商人の財力凄えな…とか思ってると、なんか城みたいなとこに降ろされた。……って城じゃん、どう見ても!!
………ジョゼの兄ちゃん、皇帝陛下でした。
ウッソだろ!?だってジョゼ、商家の8男って……!?
「そっちの身分もホント。俺の母さんが先代陛下の子供産んで、俺は商人の方の祖父ちゃん祖母ちゃんの養子になってんの」
……うそやん…。
ジョセフ・ディグレシア・エルメニア皇弟殿下。
それがジョゼの貴族としての身分らしい。
なにそれ酷い詐欺かよ!?そう噛み付くと「皇位継承権は放棄してるし、皇弟って言っても幻の珍獣みたいな感じだし」って……。
皇帝陛下の前で俺とジョゼはケンカをおっ始めて、ジョゼにチュッてされてとりあえずは黙った。くぬう。家に帰ったら正座させて説教してやる。
ジョゼは皇弟としては殆どと言っていいほど表舞台には現れないらしい。だから安心して暮らしてくれ、……っていうのが皇帝陛下の取り成し。皇帝陛下は歳の離れた弟のジョゼが可愛くて仕方ないみたいだ。
それからのんびりと過ごして、たまに皇家直轄の領地の経営をお手伝いして。いつのまにかあの公爵家のお姫様が皇帝陛下の14番目のお妃様になってた。
お妃様になったお姫様とは、たまに皇帝陛下とジョゼと4人でお茶をする。コーヒーとジューシーな鳥もも肉をガッツリ挟んだサンドイッチも用意されてる。幸せだ。
あの後。
クソ王太子は廃嫡されて、今は第二王子が立太子したらしい。元同僚の側近候補たちも当然城勤めの内定が取り消された。それでもまあなんとかやっているらしい。あれから貴族の間では婚約の破棄は行われていないそうだ。話し合い、だいじ。
筆頭公爵家の当主は、皇国の妃に娘を送り出して更に地位を固めたらしい。転んでもタダでは起きない筆頭公爵家。筆頭公爵家はお姫様が産んだ子供が継ぐことになってるらしい。王国の乗っ取りの序章か…。怖すぎる。
マクラーレン公爵からは手紙が来るようになった。いまさらなんなの?とは思うんだけど、公爵 ーーー 父上も色々あったらしい。俺を虐め抜いてたマクラーレン公爵夫人が事故で亡くなったらしい。愛人と一緒に。それでやっと俺に手紙が出せるようになった、と…。屑か、父上。……そういや父上、婿養子だもんね。仲良くはしないけど相手だけはしてやるよ。そう言うとジョゼはニヤニヤ笑った。くっそ!なんなんだよもう!恥ずかしいから書いてる手紙を覗き見すんな!!
側近候補を外されたら旦那ができた。人生ってなにが起こるかわかんないもんだ。
491
お気に入りに追加
3,803
あなたにおすすめの小説
初恋を諦めるために惚れ薬を飲んだら寵妃になった僕のお話
トウ子
BL
惚れ薬を持たされて、故国のために皇帝の後宮に嫁いだ。後宮で皇帝ではない人に、初めての恋をしてしまった。初恋を諦めるために惚れ薬を飲んだら、きちんと皇帝を愛することができた。心からの愛を捧げたら皇帝にも愛されて、僕は寵妃になった。それだけの幸せなお話。
2022年の惚れ薬自飲BL企画参加作品。ムーンライトノベルズでも投稿しています。
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした
水瀬かずか
BL
仕事をクビになった。住んでいるところも追い出された。そしたら恋人に捨てられた。最後のお給料も全部奪われた。「役立たず」と蹴られて。
好きって言ってくれたのに。かわいいって言ってくれたのに。やっぱり、僕は駄目な子なんだ。
行き場をなくした僕を見つけてくれたのは、優しい騎士様だった。
強面騎士×不憫美青年
妹を侮辱した馬鹿の兄を嫁に貰います
ひづき
BL
妹のべルティシアが馬鹿王子ラグナルに婚約破棄を言い渡された。
フェルベードが怒りを露わにすると、馬鹿王子の兄アンセルが命を持って償うと言う。
「よし。お前が俺に嫁げ」
【完結】僕は、妹の身代わり
325号室の住人
BL
☆全3話
僕の双子の妹は、病弱な第3王子サーシュ殿下の婚約者。
でも、病でいつ儚くなってしまうかわからないサーシュ殿下よりも、未だ婚約者の居ない、健康体のサーシュ殿下の双子の兄である第2王子殿下の方が好きだと言って、今回もお見舞いに行かず、第2王子殿下のファンクラブに入っている。
妹の身代わりとして城内の殿下の部屋へ向かうのも、あと数ヶ月。
けれど、向かった先で殿下は言った。
「…………今日は、君の全てを暴きたい。
まずは…そうだな。君の本当の名前を教えて。
〜中略〜
ねぇ、君は誰?」
僕が本当は男の子だということを、殿下はとっくに気付いていたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる