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やらかしてるらしい

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「……見切り?」

「ええ、だって仕方ないでしょう?」


ええ~…。10年以上婚約してたクソ王太子を捨てるのお姫様?

でもごめん、俺自身も正直言って「俺が我慢すれば……」とかはない。だってもう我慢しないって決めたし。クソ王太子より自分の幸せが大事。クズでごめん。


「わたくし、今日これから、婚約破棄されるそうですわ」

「…………………は???」


こん、やく……破棄!?


「貴方が結婚してから、とある令嬢が殿下に近付きましたの」

「は…?え?ええ!?なに???なんの話!?」

「天真爛漫な下位貴族の令嬢。笑いたい時に笑い、怒り、泣く。出来て当たり前の事は「すごいですねぇ!」、相談事には「私ならそんなことしません!」……まあ、なんというか、わかりやすくて使い古されたハニートラップですわ。わたくしたち令嬢教育を受けた者から見れば吐き気がするほど下品で態とらしい女。けれどその女は、殿


あああああ……


バカなの!?バカだバカだと思ってたけど、そこまでバカだったのクソ王太子!?っていうか俺のせいにしてる!?違うよね!?俺は捨てられた瞬間から無関係ですぅ~!!


「わたくしとの婚約を破棄して、あの娘を王妃にするそうですわ。馬鹿馬鹿しい。夢を見る年頃はとうに過ぎていらっしゃるでしょうに…っ」


吐き捨てるように笑った公爵令嬢。そりゃそうだ。子供の時から王妃教育を受けて、そうあれと望まれて。立場の弱い王太子の後ろ盾として、この細い体で長い間踏ん張ってきて。

それを一瞬で壊されようとしている。


「あの娘を王妃に据えた後でわたくしを第二妃に娶り、公務や外交はわたくしが担うそうですわ」


うわああああああああ…!

だから……か。なんというか…もう、情も意地も矜持も全部吹っ飛ばす計画だ。


「ああ…えーと……その?それをまさか卒業パーティーで…?まさか、ですよね……?」

「わたくしとの婚約の破棄と、あの娘との婚約を発表するそうですわ。陛下の許可は取っておりませんが、広く周知させればとお思いのようで」

「………はあ。バカなのか、アイツ…」

愚者バカを通り越して、もう別次元の生き物だと思うことに致しました」

「王太子の手綱を取れる側近候補はいなかったのか!?なんでそんな……」

「側近候補の皆様もあの男爵令嬢に骨抜きですわ。、あの能無しどもは」

「自分たちはそのクソ女と遊びたいから、俺に仕事しろって?……はあ、人をなんだと思ってるんだあのボンクラども…。いや、なんとも思ってないからそんな頭の悪いことをしでかしたのか」


目の奥がズキズキと痛む。これはもうどうしようもないだろう。終わったなクソ王太子。王太子派閥を道連れに。



「よろしいですわ。ウィステリア様はこのまま出国なさいませ。わたくし、泥舟に乗り続けるよりはジョセフ殿下に恩と媚を売ります」


だからジョセフって誰!?あっ、まさかジョゼのお兄さんか誰か?


「通行証も我が公爵家のサインを入れて差し上げます。我が公爵家のサインさえあれば、どのような無知な門番でも二つ返事で通しますわ」

「……何が望みだ?」


ハァ…とジョゼが溜息をいた。


「まあ…察しが良くて素晴らしいわ。素敵な旦那様ねウィステリア様」

「えっ…あ、はい。…えへへ……」

「ウィス、女狐相手にニコニコするな」


えー。だってお前を褒められたら嬉しいじゃん?


「わたくし、のお兄さんの妻になりたいのですわ」

「えっ…」

「…………」


まさかのお願い。えっ。えっ……ええ~…。


「わたくし、ジョージ殿下と結婚できないのも王妃になれないのも、もうどうでも良いのです。ただ、子供らしい遊びもお友達も恋も何もかも諦めて学んだ王妃教育が全て無駄になるのが口惜しいのです。わたくしの10年…いえ、それ以上の……この国のために、家のために捧げた日々が一瞬で無駄になるなど……耐えきれませんわ!」


あっ。クソ王太子のためじゃないんだwww


「わかった、はしよう。けどな」

「十分でございますわ」


公爵令嬢はにっこり笑った。







「それではウィステリア様、様、ご機嫌よう。また?」














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