側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。

ママのオッパイでもしゃぶってろ

卒業式は制服で出ようと思っていたのに、旦那がちゃっかり礼服を準備してた。流行りの隣国風の礼服で、サイズがぴったりすぎて怖い。俺が寝てる間に測ったりとかしたんだろうか…。

この国での流行はパートナーのお互いの色を纏うらしいけど、ジョゼは着回しがききそうな黒を選んでくれていた。センス良い。好き。

卒業式が終われば、俺はジョゼについて海の向こうの皇国に移り住むことになっている。なんでも永住権持ってるんだって。爵位も持ってるんだって。

聞いてないよ！俺は「パートナーとして行商についてきてくれ」って言われたから頷いただけなのに…。


「驚かせようと思ったんだ……ダメだった？」


叱られた大型犬みたいにしょんぼりする旦那を見て「ダメ」って言える奴の顔が見たい。や…うん、居るだろうけどさ？居るだろうけど俺は無理。甘やかして抱きしめてヨシヨシしたくなる。



で、卒業式当日。

王太子の読む答辞が引っ掛かりまくって笑えねえ。文法おかしいぞ？接続詞！おーい、高位貴族の側近候補さんたちよ、ちゃんと原稿書いてやったのかよ？何度かリハーサルしたのか？殿下は「私は完璧」みたいな顔してるけど意外とポンコツだぞ？

……まあ良いか、もう俺には関係ない。

関係無いんだけど、何故か式が終わると元同僚の高位貴族の坊ちゃんたちに囲まれた。

曰く、戻ってこい……と。


「はあ？お断りだ。バッカじゃねえのお前ら？あんだけの事を10年もされた俺に戻れって？自分を犠牲にして8歳のガキの頃から尽くして尽くして尽くしたのにあっさり捨てやがったクソ野郎の世話をまたしろってのかよ？お前らクソなの？マジクソかよ？クソだから俺がいねえと王太子の世話も出来ねえ無能なの？馬鹿なの死ぬの？じゃあ死ねよ。俺の気が変わるかも知れないからいっぺん死んでみろ低脳。あー、でも死んでもらっても無理。もー無理。だって俺もうダーリンと結婚してるし。貴族じゃ無いし。今人生で一番幸せだし。お前らが明日から就職する王宮で「ボクたち無能でポンコツです♡」って大きな文字で書いて首から下げてずっと仕事するんなら考えてやってもいい。できるか？できねぇだろバーカ。わかったら諦めて家に帰ってママのオッパイでもしゃぶってろチンカスが」


側近にランクアップしただろう元同僚たちは、俺の下町言葉に青くなったり赤くなったりで大忙しだ。ジョゼが「やだうちの奥さんマジカッコいい！！抱いて！！」と叫ぶと、見物人たちが口笛を吹いたり「やっちまえー！」と野次を飛ばし始める。わぁお、めっちゃ嫌われてるね君たち。この国大丈夫？


「……まあ、では本当にこの者たちを晒し者にすれば戻っていただけるのかしら？」






ラスボスが現れた。「にげる」の選択肢が見当たらない。