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目の前が晴れた
しおりを挟む目の前が晴れた気がした。どんよりと黒ずんでいた世界が明るい。
『公爵家』と『側近候補』という枷が一気に無くなって俺はハイになった。
良く考えろ?平民になったって、王立アカデミーに通ったという実績があれば職業なんて引く手数多だ。たとえ卒業できなくても。
だが幸いにも、公爵家は卒業までのあと3ヶ月は面倒を見てくれるらしい。まあ婚約者のいるメイドを襲って孕ませて、その子供を蔑ろにしたと噂されたりしたら質のいい使用人は来なくなるからな。
覚醒した俺は、まず自分のために勉強した。
頭の悪い側近候補時代の俺は「王太子の側近になるんだから勉強なんか二の次」だと思っていたが市井に降りるのが確定した今、勉強は非常に大事だ。なにせ成績がいいと就職の選択範囲が広くなる。首席を取れば平民だって王宮に就職できるだろう。しないけど。
王太子の細々とした世話をせずにしっかりと授業に出た俺を見て、クラスの奴らも教師も初めはビックリ、次第に憐れみ、10日もすると普通に接してくれるようになった。
前世でも変人扱いされていたが、俺は勉強するのが好きだ。
自慢だが、元々の脳味噌のスペックは高かったらしい。少しずつ上がっていく点数と、昨日出来なかったことが今日は出来た喜び。やればできるって素晴らしい。小テストではカンニングを疑われたが、俺の点数が一番良いのに何をどうやってカンニングするんだよ?
友達らしいものも出来始めた。俺が庶子で、卒業と同時に平民になるっていうのはアカデミー中に知れ渡っていた。王太子が触れ回ったせいだ。ありがとう王太子。アンタのおかげで友達ができたよ。
1ヶ月もすれば親友っぽい感じの友達もできていた。覚醒した俺に、最初に話しかけてくれた友人だった。商家の8男で、気楽な人生を送るだろう男だ。
2ヶ月後に、そいつはいつのまにか恋人に、その後すぐに旦那へとランクアップしていた。
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