転生したらビッチ悪役令息だったので

19 噂になった

俺とエル兄の結婚は瞬く間に噂になった。娯楽の少ない田舎……げふん。辺境の地だ。領主の弟が同性婚って事でめっちゃ話のタネになった。

取材に応じちゃダメって兄上が使用人たちに言ったのに、どこからともなく情報が漏れて地方版大衆紙の見出しを飾る。俺が呪われてあれやこれやも暴露されたが、それを耐えて俺を支えたエル兄がロマンスの騎士様みたいに書かれてる。俺も悲劇のお姫様(超不本意…)みたいに書かれてて、収まりかけてた元王太子婚約破棄(された)事件が再燃。フィクションですって言いながら明らかにそれっぽい大衆小説が出回ってるらしい。(アイリーンちゃんに一冊おすすめを送ってもらったらめっちゃ面白かった…)

俺とエル兄の話はよくわかんないうちに創作小説になり、吟遊詩人が歌を歌い、お芝居の話まで出てる。さすがにお芝居は兄上がストップかけてくれてるけど、旅をしながら歌ってまわる吟遊詩人のお口はチャックできなかったらしい。吟遊詩人は冒険者が多いから、冒険者ギルドが保護してるしね。

これで王家はますます俺に「嫁に来い」って言い難くなった。だいたいね？『渡界人』っていっても俺なにもできないよ？素敵なチートスキルもないし、この物語知ってます系の予言能力もない。兄上にぶら下がって、たまに計算とかのお手伝いしてお小遣いもらってるニートだよ？養蜂は完全に自分の欲望だし。前世はチューブ入り蜂蜜を直でちゅうちゅうやっちゃうクマのポーさんだったし。ちなみに前世の家の台所は、俺が直に口をつけるから俺専用蜂蜜と練乳があった。我ながらよく糖尿にならなかったと思う。


俺たちが結婚して1ヶ月くらい経った頃。アイリーンちゃんから「遊びに行く」と手紙が来た。っていうかもう手紙これ出すと同時に出発するって……。ええええ～…事後報告やめい。

この世界、手紙とか荷物は検閲通れば転移魔法で送ることができる。お高いらしいけどね。検閲通すってことはめっちゃ内容見られてるけどね。でもほら、俺とアイリーンちゃんに色っぽい話ないから。食べ物の話ばっかなんだよ。なんかアイリーンちゃん、前世の妹と同じノリなんだよね。………まさかね？(ハハッ)