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11 ガラス工房に行った
しおりを挟む最近、兄上が険しい顔をしていることが多い。そんで、手紙を握り潰して踏んづけてる。怖い。まじ怖い。そんな時は兄上の口に蜂蜜飴を放り込む。眉間の皺がちょっと取れるから嫌いじゃないみたいだ。
エル兄に聞いても「政治的な事らしいから、クリスは気にしなくていい」の一点張り。うーむ。俺が兄上に心配かけて領地に引き篭もっちゃったからかなあ。
今日はガラス工房に来た。俺が思いつくままに作ってアイリーンちゃんに送ったプレゼントが話題になって、アイリーンちゃん経由で売ることになった。これはアイリーンちゃんのお父さん公認のビジネスだ。
売るなら可愛い瓶が良い。丸っこくてシンプルな色のついてない瓶と、指で摘めるくらいの丸い小さな瓶。王都の流行りは瓶に色が付いてたりすんげえ装飾してあったりする。エーヴェルシュタインも流行りで色付き瓶が多い。でも俺はあえて透明がいい。透明な丸い瓶に赤いイチゴの砂糖煮が入ってたら。小さな瓶に紫と白の小さなスミレの砂糖菓子が入ってたら。絶対可愛いと思う。俺が女子なら買う。女子じゃなくても買う。
数が多くなかったせいか、すんなり作ってもらえることになった。
ホクホクと帰路につくと、屋敷の前に見慣れない馬車があった。
「……………」
エル兄の馬がピタって止まる。俺は馬なんか乗れないからエル兄の前に乗せてもらってるんだけどね。
「クリス、今日は俺の実家に行こう」
えっ。
え……いや、なんで?おばさん優しいし、おじさんはめちゃくちゃ甘やかしてくれるから好きだけど……なんで!?
「嫌か?」
「ううん、嫌じゃないよ?でもお土産とか取りに……」
「見つけたぞ、クリスタリア・エーヴェルシュタイン!」
……えっ。だれ?
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