13 / 29
閑話
執事は暗躍する1
しおりを挟むその屋敷の執事(バトラー)として足を踏み入れた瞬間に思い出した。
これは……ゲームだ。
そう、18禁ゲーム【花園の守り人】のオープニングスチルだ。
妖艶な夫人に、オドオドとしたロリっ子。一糸乱れぬ使用人達。
花園の前で佇む美少女。
その少女【ローズマリー】は震えがくるほど美しかった。
確かこの少女も攻略対象だったはず…
俺は内心舌舐めずりをした。
ただの隠れオタクがエロ屋敷の執事に転生とか!最高だろ!
ゲーム攻略サイトを運営していた俺の頭の中にはハーレムルートの行動はしっかりと頭に入っている。最悪でもローズマリールートだ!
………そう意気込んでいた時期が俺にもありました…。
だが行動を起こそうと、フラグを立てようとうまくいかない。
夫人には良いようにあしらわれ、メイド達には「仕事中でございますよ」と窘められる。
ローズマリーは俺の存在などガン無視だ。
え…!? もっとこう、飢えた雌犬みたいにしゃぶりついてこないの!?
……………。
ここは【ゲームの世界】じゃなくて、【ゲームに似た世界】なのだろう。
せっかくの異世界、いつまでもバカな事やってらんないなあ…。
そう諦めた夜だった。夫人からのお召しがあったのは。
やっとエロイベント突入か!?
そう意気込んで夫人の寝室を訪ねると、エロいカッコで夫人が縛られて転がされてました。
「……コレジャナイ」
コレジャナイ感はんぱねえ!
背後でドアが閉まる音がした。しかもカチャッって!鍵wwwちょおおおおwww
「ようこそ【主人公】さん」
月明かりの下、麗しのローズマリーが微笑んでいた。
「な…なんの、こ……ってえ!!」
俺はたちまちフットマン達に押さえつけられた。
ウオオオオオオwwwメイドがwww服www剥がしてくりゅううううううwww
なにこのイベント!?隠しイベント!?でも…ちょ………
なんで…家令が……ズボンのベルト緩めてるノオオオオオオオオ!!??
………………アッー!
犯されました… _(:3 」∠︎)_
前世から守ってきた童貞も処女も奪われました。ついでに心も。
一夜にしてローズマリーへの……いや、ローズマリーお嬢様への忠誠が心に刻まれてしまったでござる。
嗚呼、さようならキレイな俺。こんにちは爛れた人間関係。
のちに知るが、ローズマリーお嬢様は生まれながらに【調教師】のスキルを持った転生者だった。
「勢いで調教しちゃったんだけど飽きちゃって…。元々この屋敷を手中に収めるのはお前だったのでしょう?お返しするわ」
そう朗らかに笑って、ローズマリーお嬢様は俺に乗馬用の鞭を手渡した。
「ああ、でも妹のメアリアンは手を出さないでね?あの子は ちゃあんと わたくしの言い付けを守って大人しくしているから。おかしなことすると殺すわよ?」
悪人を装うお嬢様は、どこか前世の妹に似ていた。
「お嬢様を見てると、前世の俺の妹を思い出しますよ。あいつもキレて暴れてその後 猛省して、でもガキだから責任なんか取れなくて……後始末を泣きながら俺に押し付けて逃げるようなクソ妹でした」
「………わたくしの前世の兄も阿呆でしたわ。30も過ぎてヒキニート。まあアフィリエイトや動画実況なんかで そこそこは稼いでいたみたいですが、それを全部ネット環境とゲーム購入に使う阿呆でした。でも……お兄ちゃん、助けて!って言うと大抵のことは何とかしてくれるチョロ兄でしたのよ。………そんな兄が大好きでした…」
微笑む顔が妹と重なる。
「 ーーー かおる…」
「………!?」
妹の名を思わず呟くと、お嬢様が固まった。
…………は!?
ま…まさか……………!?
「と…、とにかく!義母の飼育と使用人達たちの統制はお前に任せます。わたくしは明日から寄宿舎に入りますからね!」
「……は!?聞いてないし!」
「言ってませんからね。とにかく ーーー 『お兄ちゃん、お願いね』」
うーーーーわーーーーーーー………
ないわー。ひくわー。
このクソ妹、ぜんっぜん変わってねぇわー。
でもまあ…こいつ今【ローズマリー】だし…。
うーん……クソ妹とは言え、断罪されてアレやコレされるのも良い気分じゃねえよなぁ…
「お任せください、ローズマリーお嬢様」
俺は頭(こうべ)を垂れた。
仕方ない。ここで面白おかしく爛れた生活をしながら、【ローズマリー】の最悪の事態を防ごうじゃないか。
こういう無理ゲーも中々萌える…じゃなくて、燃える…かな……?
とりあえずは夫人のネットワークを使って旦那様の悪事でも暴くとするか。
俺は顔を上げ、ニヤリと笑ってみせた。
55
お気に入りに追加
3,924
あなたにおすすめの小説


美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

お義兄様に一目惚れした!
よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。
なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。
仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。
そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。
クリステルはセドリックに一目惚れ。
けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。
クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。
ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。
その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら……
全38話
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません

可愛げのない令嬢は甘やかされ翻弄される
よしゆき
恋愛
両親に可愛がられず、甘え方を知らず、愛嬌のない令嬢に育ったアルマ。彼女には可愛らしく愛嬌のある自分とは正反対の腹違いの妹がいた。
父に決められた婚約者と出会い、彼に惹かれていくものの、可愛げのない自分は彼に相応しくないとアルマは思う。婚約者も、アルマよりも妹のリーゼロッテと結婚したいと望むのではないかと考え、身を引こうとするけれど、そうはならなかった話。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる