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閑話

執事は暗躍する1

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その屋敷の執事(バトラー)として足を踏み入れた瞬間に思い出した。

これは……ゲームだ。

そう、18禁ゲーム【花園の守り人】のオープニングスチルだ。

妖艶な夫人に、オドオドとしたロリっ子。一糸乱れぬ使用人達。

花園の前で佇む美少女。

その少女【ローズマリー】は震えがくるほど美しかった。

確かこの少女も攻略対象だったはず…

俺は内心舌舐めずりをした。

ただの隠れオタクがエロ屋敷の執事に転生とか!最高だろ!

ゲーム攻略サイトを運営していた俺の頭の中にはハーレムルートの行動はしっかりと頭に入っている。最悪でもローズマリールートだ!





………そう意気込んでいた時期が俺にもありました…。

だが行動を起こそうと、フラグを立てようとうまくいかない。

夫人には良いようにあしらわれ、メイド達には「仕事中でございますよ」と窘められる。

ローズマリーは俺の存在などガン無視だ。

え…!? もっとこう、飢えた雌犬みたいにしゃぶりついてこないの!?

……………。

ここは【ゲームの世界】じゃなくて、【ゲームに似た世界】なのだろう。

せっかくの異世界、いつまでもバカな事やってらんないなあ…。

そう諦めた夜だった。夫人からのお召しがあったのは。

やっとエロイベント突入か!?

そう意気込んで夫人の寝室を訪ねると、エロいカッコで夫人が縛られて転がされてました。

「……コレジャナイ」

コレジャナイ感はんぱねえ!

背後でドアが閉まる音がした。しかもカチャッって!鍵wwwちょおおおおwww

「ようこそ【主人公】さん」

月明かりの下、麗しのローズマリーが微笑んでいた。

「な…なんの、こ……ってえ!!」

俺はたちまちフットマン達に押さえつけられた。

ウオオオオオオwwwメイドがwww服www剥がしてくりゅううううううwww

なにこのイベント!?隠しイベント!?でも…ちょ………

なんで…家令が……ズボンのベルト緩めてるノオオオオオオオオ!!??




………………アッー!





犯されました… _(:3 」∠︎)_

前世から守ってきた童貞も処女も奪われました。ついでに心も。

一夜にしてローズマリーへの……いや、ローズマリーお嬢様への忠誠が心に刻まれてしまったでござる。

嗚呼、さようならキレイな俺。こんにちは爛れた人間関係。

のちに知るが、ローズマリーお嬢様は生まれながらに【調教師】のスキルを持った転生者だった。

「勢いで調教しちゃったんだけど飽きちゃって…。元々この屋敷を手中に収めるのはお前だったのでしょう?お返しするわ」

そう朗らかに笑って、ローズマリーお嬢様は俺に乗馬用の鞭を手渡した。

「ああ、でも妹のメアリアンは手を出さないでね?あの子は ちゃあんと わたくしの言い付けを守って大人しくしているから。おかしなことすると殺すわよ?」 

悪人を装うお嬢様は、どこか前世の妹に似ていた。

「お嬢様を見てると、前世の俺の妹を思い出しますよ。あいつもキレて暴れてその後 猛省して、でもガキだから責任なんか取れなくて……後始末を泣きながら俺に押し付けて逃げるようなクソ妹でした」

「………わたくしの前世の兄も阿呆でしたわ。30も過ぎてヒキニート。まあアフィリエイトや動画実況なんかで そこそこは稼いでいたみたいですが、それを全部ネット環境とゲーム購入に使う阿呆でした。でも……お兄ちゃん、助けて!って言うと大抵のことは何とかしてくれるチョロ兄でしたのよ。………そんな兄が大好きでした…」

微笑む顔が妹と重なる。

「 ーーー かおる…」

「………!?」

妹の名を思わず呟くと、お嬢様が固まった。

…………は!?

ま…まさか……………!?

「と…、とにかく!義母の飼育と使用人達たちの統制はお前に任せます。わたくしは明日から寄宿舎に入りますからね!」

「……は!?聞いてないし!」

「言ってませんからね。とにかく ーーー 『お兄ちゃん、お願いね』」

うーーーーわーーーーーーー………

ないわー。ひくわー。

このクソ妹、ぜんっぜん変わってねぇわー。

でもまあ…こいつ今【ローズマリー】だし…。

うーん……クソ妹とは言え、断罪されてアレやコレされるのも良い気分じゃねえよなぁ…

「お任せください、ローズマリーお嬢様」

俺は頭(こうべ)を垂れた。

仕方ない。ここで面白おかしく爛れた生活をしながら、【ローズマリー】の最悪の事態を防ごうじゃないか。

こういう無理ゲーも中々萌える…じゃなくて、燃える…かな……?


とりあえずは夫人のネットワークを使って旦那様の悪事でも暴くとするか。





俺は顔を上げ、ニヤリと笑ってみせた。





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