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買った喧嘩からの交渉人

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テッド兄ちゃんはレイの実のお兄さんより兄ちゃんらしい兄ちゃんだ。俺とレイがケンカしてたら2人を小脇に抱えてブン回して、あれ?俺たち何ケンカしてたんだっけ?っていうような仲裁もされた。今考えると犬猫扱いじゃね?

実のお兄さんよりレイと一緒にいた時間は長いテッド兄ちゃん。オヤジさんを亡くしたばかりのレイがテッド兄ちゃんまで亡くすのは避けたい。人ごとみたいに言っちゃってるけどぶっちゃけ俺が嫌だ。


「蛆虫とはまた…それは侮辱ととってよろしいかグレン・ナイトレイ殿」

「ん?ああ、思わず口から出たか。まあ取り敢えずソレ、返してもらおう。のものだ」

「商人テッドの引き渡しにはドーン金貨500枚又はグレン・ナイトレイ殿、あなたの身柄をドーン王国は要求します」

「……ふーん?あっ、その前にこの交渉は記録して構わないのか?」

「ええ、構いません」

「オーケーオーケー。じゃあ公式記録、と」


ダン ーーー ナイトレイこっちに亡命した前任の外交官の代わりに就任したのだろう、貴族らしい貴族の交渉人は不敵に笑った。うん、いいね。その取り澄ました顔の泣きっ面が見たくなる。俺は記録型魔道具を取り出して関所のテーブルに置く。境界線を挟んで交渉開始だ。挨拶してー、所属と名前聞いてー、今日の日付を聞いてー。

見えるところに転がされているテッドは顔色が悪い。《八雲》特製の回復薬と解毒薬は渡していた。……と、なると。


「呪い、かな?」


だったらすぐにどうこうなるものじゃない。すっげえ苦しいだろうけど。


「さあ、私にはわかりませんね」

「ふぅん?まあいいや。で?テッドの通行料がドーン金貨500枚ってなに?高くなったね通行料?」

「レイモンド商会のテッドは現在、とある事件の重要参考人になっています。保釈金のようなもの、と思っていただければ」


ドーン金貨は日本円で言うと大体1金貨=10万円くらいだと思っていい。5000万円?そりゃあすげえなテッド兄ちゃん、どこの富豪だよ?


「事件?なに、それ?」

「捜査中なので言えません」

「言えないの?俺の身柄と交換ってことだから俺も関係してるんでしょ?殺人?詐欺?横領?密輸?禁止薬物?国家転覆?」

「黙秘します」


ふ  ー  ん  ?


要するに、だ。言えないことで拘束してんだ?重病人を?手当てもしないで?石畳の床に転がしとくんだ?ふーーーーーーーーーーーん?

テッド兄ちゃんに寄り添うようにして膝枕してくれてる女子はペリウィンクル。褐色の肌のハーフエルフ。因みに背の高い巨乳美人だ。最近移住してきたらしいんだが……テッド兄ちゃんめ!上手くやりおって!!涙目でオロオロして見てるのは3人目の従業員ウィス。こっちは子供の頃からマーキュリー商会で働いてて、レイの独立と共にレイモンド商会に移った古株の青年。


「……まあ当然俺は行かないよ?聖魔法持ちの俺が今ドーンに行ったら干からびるまで使われるか、犯されて種馬にされるかだもん」


普通わかるよね?俺がのこのこ行ったらどうなるか。それでもお仕事なんだよね交渉人さん。わあ、残酷ぅ!






「いいよ。で払おう。ドーン金貨1500枚を手形でなく即金で。今すぐ解放して頂こう」







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