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閑話:ドーン王国外交官

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最近はクソな仕事が多すぎる。

最近独立したナイトレイ公国との外交など誰も行きたがらないから、平民出身の私にお鉢が回ってきた。最悪だ!……と思ったのは最初だけ。なぜならナイトレイは飯が美味かった。

妻の実家である男爵家は、貧乏であったが飯だけは美味かった。それが私が婿入りした決定打だったのに…。

『真実の愛』とやらで妻が男と逃げた。男爵家の借金と浪費家の義両親、年老いた義祖父母を私に押しつけて。ふざけるな。しかも勝手に離婚届を出されていた。そんな時だ。グレン・ナイトレイが私に囁いたのは。


お困りなら、うちに来ませんか?


………アレは悪魔だ。ナイトレイの大天使などと呼ばれているが、人を堕落させる悪魔だ。

グレン様はドーン国内でまともに食事が取れない私に「一緒に食べませんか?」と顔を合わせるたびに様々な堕落の食物を食べさせた。揚げた芋、塩漬け燻製肉のパスタ、生の海産物、コメと呼ばれる穀物。極め付けは生の鶏卵をコメにかけたあのおぞましい見た目の『たまごかけごはん』だ。

正直引いた。そんなもの腹を下すに違いない。生の玉子など、蛇じゃあるまいし……。真っ黒いソースをかけてそのおぞましい『たまごかけごはん』を口にするグレン様。すごく美味しそうに食べる…。じゃあ一口だけ。と口にしたそれは最大級の堕落の味だった。

旨味の強い、だがあっさりとした黒いソースと濃い玉子の味。つるりとした喉越しで、あっという間に器は空になった。

その時、思ってしまったのだ。


あっ…私、ここんちの子になりたい、と。


そうだ。元妻が捨てていった元義家族など養う義理があるのか?勝手に離婚されていたのに?労働基準法も真っ青な黒職場で、「平民、これもやっとけ」などと殆どの雑務を押し付けられ、貴族出身の外交官は私の作った資料を手に輝かしい経歴を作っているのに?何故?何故私がやらねばと思い込んでいた?私がいなくたって世界は回る。

呪縛が解けた鏡の中の私は、びっくりするくらい顔色が悪く痩せこけていた。

やっべえ死相でてるじゃねえか…。

私は密かにナイトレイ公にした。ナイトレイ公は、「また誑し込んだのか…」とか苦虫を噛み潰したような顔をしながら亡命を許可してくれた。

決行は、今日この日。『てつどう』完成の宴だ。

その宴には、恐ろしいことに秋津の王配レスト様とエルトリアの黒獅子元帥が居た。しかもグレン様と非常に仲が良さそうだ。その黒獅子レオンハルト様が口にしたのは、エルトリアはナイトレイを全面的に支援すると言った内容。おまけにレプブリカ帝国の聖女の書状付きだ。





……詰んだな、ドーン王国。














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ナイトレイ家のTKGは出汁醤油味…。
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感想 36

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