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「じゃあ、いってきます」
しおりを挟むさて、頃合いか。
クソ王子が断末魔をあげながらゆっくりと崩れ落ちていく。
一般観客の避難誘導はすでに完了。王国の貴族はとっくに避難。指示に従わないアホ王国民は物理か魔法で昏倒させてまとめて運ばせた。うだうだ文句言う帝国側は勝手にしろもう知らん。
しかし女性は怖いね!
《無垢なる乙女の怨嗟》は重複すればするほど強力に、そして制御が難しくなる。それを7人分重ねて見せたのはリリィで、地球世界の《七人ミサキ》に因んで名付けたのは俺だ。狂気の沙汰から産まれた怪異は、未完成とはいえオリジンの末席をも削っている。
欠点らしい欠点といえば、主人であるリリィが対象に直接触れないとターゲットをマークできないところか。
リリィは「まだまだです…」などとしょんぼりしていたが、あの怪異、意思疎通できるだけでおかしいからね?!災害級どころか邪神級の存在だから!
「行ってくるよ、ヴィオレッタ」
俺の膝に乗っていた純恋さんをヴィオレッタに預ける。
「アリスト、ヴィオレッタを頼む」
「当たり前でしょ?ヴィオちゃんはレオのものなんだから」
穏やかに微笑むアリストの頭を撫でる。奴が気を利かせて屈むのがムカつくwww
「アズ」
「は、手筈通りに」
アズは今から大規模な幻術をかける。
化け物になった帝王と、王国の英雄たちが戦う一大スペクタクルエンターテインメント幻術だ。実際はドラゴン形態のアズと、副長とリリィとアイリがじゃれ合うくらいだが。
そこで王弟レオンハルトは死ぬ。
まあうちの軍部どもは知ってるから問題ない。俺がいないからって馬鹿なことした馬鹿はもれなく教育的な指導が入る。主に副長とかから。
「………レオさま?たまには帰ってきて下さいませ?えっと…うん、そう、アスターがお顔を忘れたら困りますし、お腹の子もまだお顔も知りません。えっと、それにほら、えっと…ええ……と………」
ぽろりと涙が溢れる。
「………えっ…ぅえっ…ふぐっ…………ぶぇっ…う、ぅう…ぶわああああああぁぁぁぁぁあああぁぁん!!」
………うん、その泣き方は王女としてっていうより成人女性としてどうかと思うよwww
よしよし、と抱えた純恋さんごと抱きしめる。ヴィオレッタはなんだか大きな幼稚園児のようだ。僕も僕も、とアリストが俺の上から抱きしめる。団子である。そして安定で、アズが混ざっていいものかとウロウロする。カオスwww
「…まあちょいちょい戻るから」
本当は二度と帰らないつもりだった。なのに、なんなの君たち。俺の外堀どんどん埋めて固めて…。
冒険者ギルドのマスターとは協議済みで、ちょい訳ありだから認識阻害かけて冒険者登録を、とお願いしたら、揉み手と嫌らしい笑顔で二つ返事だった。こええ。商業ギルドとはアリストが話し合い済みだ。更にこええ。
視界の端では、帝国側観戦ブースで帝王が笑っている。狂ったように。灼け崩れて断末魔をあげる実の息子を見ながら。これさあ、放映されてんだよ?それをもう気にする必要もないと言うことか。
最後の欠片が ーーー 灰になり、消滅する。
《シチニンミサキ》たちは惨たらしい姿ではなく、7人の黄金に輝く少女たちとなり、美しくも完璧なカーテシーをして空へと消えていった。
「じゃあ、いってきます」
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