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「俺の好きな人たちが笑ってて欲しいなあ…とか思うわけだ」
しおりを挟む翌日はありったけの各種ポーションと携帯食料をインベントリ詰め込んだ。
アズに『俺たちは城にいる』という認識阻害を掛けさせて、ウキウキワクワクお出かけだ!
メンバーは最小限。
俺、副長、そしてリリィ。
リリィは肩口で切った髪を無造作に結び、魔法付与した軍服にスッピンという出で立ちだ。
元々モデル体型のスレンダーな体のラインに、化粧っ気の無い顔が美少年風だ。化粧をしてないリリィは実際の歳より幼く可憐に見える。
御令嬢は軍服のパンツスタイルとか、もっと嫌がるかと思ってた。でもドレスやスカートじゃダンジョンには連れて行けない。
そう、ダンジョンだ。
俺はこのダンジョンデートで一石三鳥も四鳥も狙っている。
メインは副長の限界突破と魔剣獲得。
すでに限界突破しまくっている『レオンハルト』の体のさらなるレベリング。
最後にリリィのパワーレベリング。
おまけでギクシャクした副長とリリィがちょっといい感じになってくれないかなあ?とか?
なにも俺だって鬼じゃない。っていうか身内には甘い自覚がある。
俺の好きな人たちが笑ってて欲しいなあ…とか思うわけだ。
さてこの『魔境』ダンジョン。はっきり言って地獄である。
境界のない森型ダンジョンなんだけど、とにかく危険だ。なんせ他のダンジョンのボスクラスが平気で雑魚のようにウロウロしている。マップも入る度に変わるので地図の意味ナッシング。
しかも安地が無い。
もう一度言う。安全地帯の無いダンジョンなのだ。
ヤバさがお分かりいただけただろうか?
このダンジョンを踏破するためには、休憩無しでボスクラスを叩きのめしながら初見のマップを進まなくてはならない。
そこでモノを言うのが自動マッピングスキルと空間魔法インベントリだ。
あとは勘と精神力。もうこれしか無い。
俺が初めてこのダンジョンをソロで攻略したのは15の時。
まだ軍の指揮権を押し付けられていない頃だ。
死ぬかと思った。初攻略は3日かかった。それでも3日。
でもね、初見で3日なんだから……となんかおかしなテンションで周回しちゃったんだよ!だってインベントリにまだ備蓄山盛りだったんだもん。
それで2~3周したらカンストしてしまった。人間としてのカンストだ。
けどまだ備蓄があるし、1ヶ月は籠ると言った手前ソッコー帰るのってなんかカッコ悪い。
レベルもスキルもカンストして、「まー、なんか新しいスキルでも獲得したら儲けだなあ」なんて思いながらハイになって周回してたら限界突破した。
……あれ?って感じだよ。
結論はこうだ。
この世界で人間がカンストだと思ってるレベルを超えるのは莫大な経験値が必要である。
大体みんな「もうこれ以上は無理」って思ったら諦めちゃうからね!
でも実際はその先にスタートがあったわけだ。
ボスモンスターはユニコーン。
殺して、殺して、殺して、屠って、屠って、潰して。
何周したかもう忘れた頃に、ボス部屋に黒いユニコーンが現れた。
……もうね?死んだと思ったよ。
限界突破して人間やめたのに勝てないってどゆこと!?
そのうち最後のHP回復ポーションを呷って瓶を投げ捨てたら、ユニコーンから「ヌシを主人と認めよう」みたいな思念が流れてきて、戦闘は終了。
そう、そのユニコーンが、今現在うちの城で馬ハーレム作ってる俺の馬だ。
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