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閑話:「真の敵はここにいた」《純恋視点》

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泣いて泣いて。

一眞さんの腕の中で目が融けるかと思うほど泣いて。

いつのまにか、えーくん ーーー アリストが立っていた。



「……ブフォw ヴィオちゃん、すっごいブスになってるよwww」

「ふ゛え゛え゛ん゛ん゛ん゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛く゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」

一眞さんを突き飛ばして えーくんにしがみつく。きっとえーくんなら味方に……

「わ!ダメやめて鼻水きたなっwwww」

………なってくれない気がする…。



「ひどいのおおおおええええええくううううううううんんんんかずまさんがあああああああかずまさんがああひどいのおおおおおおおおおおおおおおおおおうわあああああああああああああああああん」

「ああ、はいはい」

私の顔にちり紙を押し付けて、えーくんは笑った。

「えっと…ごめんね?ヴィオちゃんが隠してたアルフォンスバッドエンドルートを知ってる転生者探して聞き出して、それレオに教えたの僕」




真          の          敵          は          こ         こ          に          い          た。




「うばああああああああああええくんのばかあああああああああああああ!!」

 「ごめんごめん。僕もおかしいなって思ってたけど、まさかレオが こうくるとは……。でもね?ヴィオちゃんも悪いんだよ?なんで相談しないのさ?僕とレオはそんなに信用できない?」

「……………(エッグ…グスッ……)」



アルフォンスバッドエンドルート。

唯一、ライバル令嬢ヴィオレッタが幸せになるルートだ。

でも私はそれを隠した。だってそのルートのレオンハルトは……一眞さんは………。



聖女の試練に敗れた主人公アイリは『偽りの聖女』として拘束される。そして王国の殲滅級魔道具に組み込まれて魔力を全て吸い上げられて死ぬ。

叶わぬ恋と知りながら聖女を愛していた第二王子レオンハルトは最前線に身を投じ、アイリが事切れた時間とほぼ同じくして戦死。

戦争には勝利したが、婚約者を亡くした聖女ヴィオレッタは王家の血を繋ぐべく父であるアルフォンスに嫁ぎ、王国は存続してゆく…。




「……嫌よぉ……一眞さんが…また死んじゃうなんていや………嫌なの…っ……置いてかないで………置いていっちゃいや………ぅぅ…うええええええぇぇ………」

「そりゃあ僕だってそうだよ」

えーくんは呆れたように笑った。

「…だって、そのルートしか、一眞さん、絶対……選ばないもん……っぇっく……ぅぅう……いやだもん……やだよ…死なないで…死なないで、一眞さん…………!」

「あのね、ヴィオちゃん」

えーくんは私の両頬を手で包み込んでグイッと目線を合わせる。いでででで……!相変わらず容赦ない。でもその『女の子扱いしない』ところが気持ち悪くなくて友達になった。

「僕はだれ?」

「…えっ……え、と、えーくんはえーくん…でしょ?」

「じゃあ あそこで、情けな~い顔して突っ立ってるのは?」

「………一眞さん…………」

「はいダウト!もうそこから違うから!アレはカズだったモノだけど、もうレオンハルトだから!僕だってもうアリストだよ?君も もう、すーちゃんじゃない。ヴィオレッタだ」

王子をアレとかモノとか言った!

「それにね、この世界は乙女ゲームとかいう、『誰かにとって都合のいい世界』じゃない。「ああ面白かったね」、で済んじゃう お話じゃない。僕たちにとっては紛れも無い現実なんだ。もしもエンディングがあるっていうなら、全然シナリオにない結末を探そう?お話の中で、ヴィオレッタ姫は孤立無援だったみたいだけど、今の君には僕やレオや、学園のお嬢さんたちや、君のお父さんもいるじゃないか」

ニッと笑ってアリストは私を解放して、おまけとばかりにデコピンした。




「……と、言う事で!僕から提案というか、レオに対するペナルティがあります!王家にも、この国にも、僕らにもwinwinだから良いよね?あ、レオ?君に拒否権は無いよ?……僕だって…ちょっとだけだけどムカついてるんだからね?」






 
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