【異世界大量転生4】役に立たない淫売聖女(♂)は極寒の地に追放されました。※なお、英雄王弟は即追いかけて行った模様です。

楽園と崩壊と

71 酷い奴(ノア視点)

忘れていることを忘れる。それはとても怖いことだ。

じわりと脳の中を侵食するそれは、間違いなく父様のチカラだった。

アレクもみんなも、知っているのに何も言わない。


《考えてはいけないよ、ノア。それが最適解だ。父様に逆らってはいけない。皆みなを悲しませてはいけない。……《鹿島》を、アレクとやらを悲しませてはいけないよ》


うん……わかってる。わかってるよ。


《目を閉じ、耳を塞ぎ、口を閉ざしなさい、ノア。たったそれだけでいい。お前はもう傷付いてはならない。私の可愛いノア》


………でもね？俺って結構図太いんだよ？


《……ノア…》


みんなね、俺は優しいって言うけど、すっごく狡くて酷い奴なんだよ？だって、本当は俺、自分以外はどうでもいい。自分の大切な人だけ守れればそれでいい。ごめんなさいって言いながら、その他は切り捨てることができる酷い奴なんだよ。人を傷付けて。自己嫌悪で泣いて、後悔して。それでも時間が経てば、ご飯おいしいねって笑えるんだ。酷いでしょ？


《………》


ね、《白妙》？俺って酷い奴なんだ。みんなが寄って集って守るような存在じゃないんだよ。だからね？













俺は、みんなのために生きていこうと思う。