【異世界大量転生4】役に立たない淫売聖女(♂)は極寒の地に追放されました。※なお、英雄王弟は即追いかけて行った模様です。

楽園と崩壊と

43 幸せになる仕事(アレクシス視点)

セツナがセバスにリクエストされた物資は思ったより早く届いた。……と言っても10日はかかったが。

板張りの床に引く布団に、衣類、雑貨、食器類、調味料、穀物。セバスとノアは「コメだ！ミソだ！ショウユだ！」と喜んでいた。異世界独特の食品なんだろう。

銀狼の準備していたのは、ほんっとーに建物だけだった。あの犬っころ、マジで脳味噌足りてねえ！

食べ物にもっと困るかと思ったが、ノアが歌ったり喜んだりすると色々な食物が急成長で生えた。根もない場所から見たこともないような作物が生えまくる。とんでもない謎現象だが、まあノアは腕や脚を生やす【聖女】だ。今更だろう。動物たちも採取や狩りに勤しんでいる。


「俺、なにかすることないかな？」


他の人間…動物までが忙しそうにしているのに、自分だけなにもしていないと思ったのか。ノアがソワソワする。可愛い。


「ノアは幸せになるのが仕事だ」

「えー…」


俺はノア抱き締めて顔中にキスの雨を降らせる。……実は最近、俺とノアは初接吻(！！)を済ませた。ノアは柔らかい。頬も瞼もどこもかしこも柔らかくて良い匂いがするが、唇は格別だ！


「ん…擽ったいよアレク……」


チュッチュと戯じゃれていると、近くの木に花が咲き、見る間に果実になった。『桃』という植物らしい。驚くほど甘く、瑞々しく、中心部分に石ころのような『種』がある。この世界では『種』というものは初めて聞いたが、異世界では本来、植物はこの『種』から芽吹き、繁殖するのだと言う。なんとも奇妙な世界だ。


「あ……桃、生なったね…。う、うん、収穫していこうか…」


俺とノアがイチャイチャすると、大体、甘くて美味しい実がなる。甘い果実を持って帰ると言うことは、俺とイチャイチャしていたということなのでノアとしては恥ずかしいらしい。……可愛すぎかよ！！


ノアは幸せになるのが仕事。


セツナにもそう言われた。だから、決して下の現状を悟らせるな、と。

オデッサ霊峰は今、セツナの強力な結界が張られている。外界とは完全に切り離され、ノアが少し鈍くなるおまじないもかけられている。

きっとそれは親心というよりは、セツナの楽しみをノアの慈悲で邪魔されないようにだろう。


『桃』という果実を捥ぎ、2人で持ち切れない分はいつのまにか足元で待っていた動物たちに渡す。動物たちもここ数日で非常に肥えた。……いや、成長したと言うべきか。旅の間にノアが抱き抱えれるくらいだった仔ウサギは、今や大型犬の大きさだ。


「ふふ…大きな桃。セバス父さんに砂糖煮にしてもらおう？」

「いいな。そう言えばこの間のゼリーとかいうのも美味かったな」












ノア。お前は笑っていれば良い。