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北の地へ

07 さわさわ(ノア視点)

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日暮れ前に最初で最後の村に到着した。……はずが、入村拒否された。


「随分と用意周到ですのね。まったくもう…変わってないわね、貴族って」


シルフィーヌ母さんがふう、と溜息を吐いた。


「ご…ごめん……ごめんね、俺のせいで……」

「あらあら、まあ…違うのよ、ノア。貴方が悪いんじゃないわ。腐っている心を持った人たちが悪いのよ?そして、こうやって『村に入れなかったら死ぬかも』ってわかってても言いなりになる人たちも同罪よ」

「……うん…」

「大丈夫。大丈夫よノア。貴方がたとえ聖女という奇跡の子供じゃなくなっても。貴方は私たちの家族ですもの。貴方は私の可愛い息子。貴方と離れたら、ママ死んじゃうわ。だからね、ノア。ママたちを置いて行かないで?ずっと傍に居させてね?」

「…うん」

「いい子ね、ノア」


シル母さんがギュッと俺を抱きしめてくれる。トクトクトク…心臓の音が……すごく安心する…。


「仕方ない、森に入って野営しましょう」

「えっ…」


『森は危ない。魔物や肉食動物がいる』。そう聞いていたのに…?


「ああ、大丈夫ですよノア様。私は動物使いです。竜などのよほどの危険生物じゃない限り支配下に置きます。今夜は動物たちに夜番してもらいましょう」


わあ…ビルはすごいなあ。



俺たちは森に入って野営することになった。

不思議なことに、人間が1人入るのも難しいと思われた鬱蒼と繁った森の草木が馬車一台通れるくらいまで道を開けてくれる。


「これはまた…」

「やだすごい!王都のバカどもよりよっぽどわかってるんじゃない?」

「驚ました……まさか、こんな……」

「え…えと……」


さわさわ…と草が、木々が揺れる。


「ありがとう」


さわさわ。物言わぬ植物たちが揺れる。ポン!と一輪、赤い花が咲いた。











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