【7人の魔王5】魔王様の食卓 〜今日も嫁(おれ)の飯がマズいらしいが、愛があるなら乗り越え(あきらめ)てくれ〜

羊のフローラルスライム漬け、薄衣を纏わせて

最初に髪をバサーッとやられた。踝まであった黄ばんだ白髪は肩の辺りで切られ、適当に摘んで捻ってチョキチョキと。前世でいうといわゆるショートボブってヤツか。傷んだ髪がボンバーだけどな。

そのあとにやたら良い匂いのする浴槽に突っ込まれ……って、待て。この水動いてねえ！？ヌルッヌルして纏わりついてくるんだけどオオオオオオオ！？


「フローラルスライムよ♪お尻の穴まで綺麗にしてくれるの」

「アッー！…ちょっ…う、うそ！待っ…！！」


アンアンアアアアンらめえええええええ♡

ピンクなスライムに弄ばれてる間、美女が爪にヤスリをかけてくれたり、髪に回復薬入りらしいトリートメントっぽいのを塗り込んだり…。


「うーん…私はこのシルクのリボンシャツがいいと思うんだけど……ねえモコモコくん？《地球》の男子的にはどっちが良い？」

「あ、こっちで(シンプル綿シャツ)」


真っ赤なフリルとレースのシャツを華麗に回避。


「あんっ♡我ながら良い仕上がりじゃな～い！」


………これが…わたし……？


とか言うんだよ。小説のヒロインは。

まあある程度は予想してた。だって双子のアンドレアスは美形だし、父ちゃんも母ちゃんも美形だしな。

鏡の中のアマルテイアは、緩いウェーブのかかった白に近い金髪。前世のどっかで見たパワーストーンみたいな緑と紫の混じった目。一つ一つが整った顔の各パーツが絶妙な位置で配置され、ちょっと俺様な表情が儚さを打ち消してる。


「あ、なんだ、奏オレじゃん」


そう。色合いこそ全く違うけど、それは前世でよく見知った未谷湊の顔だった。


「やぁん！メルの渾身の作なのにぃ…感動うっす～い！」

「や～？だって俺の顔だもん」

「もぉ～！つまんないっ」


ぷうっと膨れてみせる美女は可愛らしい。俺がさっきの天使に一目惚れしてなければ恋に落ちてた。うん。


「しょーがないわね！じゃあ陽咲様のとこ行こっか」







だからそのヒナタサマってだれだよ！？