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夕陽の差す部屋
しおりを挟む窓から差し込んだ夕陽が部屋一面をオレンジ色に染めている。
ここはどこだろう。
コンビニのレジ袋をガサガサやりながらあの子が今日も来る。
ああ…そうだ。ここは僕の部屋。風呂さえも共同の、古い古いアパート。璃妃が僕に与えたすみか。
「ハルさん、また食べてないの?」
あの子が笑う。
コンビニのおにぎりを僕に押し付けた。こういう時に料理でもできる子ならネタになっただろうに…。売れない小説家の僕にネタをくれよ。
逆光であの子の顔が見えない。
あの子はどんな顔をしていたっけ?とても綺麗な顔だったのは覚えている。璃妃の若い頃よりずっと整った顔。ぷるんとした瑞々しい唇の、右下に艶ぼくろ。安い氷菓に齧り付く様も艶めかしい。
「ハルさん、僕ねえ、もうすぐ誕生日なんだよ。それでね……」
ああ、その先は聞きたくない。
これは過去の光景だ。あの子はもう会えない、と僕に言った。18歳になったら、自分は売られるのだと。
僕はあの子を抱きしめて、唇を重ねる。
甘くて、苦い。あの子との、はじめてのキス。
それから……それ、から…………
ああ、思い出したくない。思い出してはいけない。だって、またあの子が……
あの子の顔が、夕陽の中で鮮明になる。あの子は泣きそうな顔で笑っていた。
「し… ーーー 」
紫苑、くん。
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