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ひとでなしと半年
しおりを挟む俺が紫苑に買われ、蘇生されて半年が経った。
最初は驚きと戸惑いの連続だった紫苑との生活も落ち着きつつある。紫苑の着物だって上手く着付けができるようになったし、紫苑を抱いて歩くエルドラドの道も見世もほとんど覚えた。
俺の着る物は紫苑とセルヴァンス、それに何故かエリザベスが選んで揃えた。軍服のようなものから着流しまで幅広いが、基本、紫苑のその日の装いに合わせて選ぶ。髪も伸びた。奴隷だった頃は引き千切られたり燃やされたりで常に短い髪だったが、今は結ばないと邪魔になるくらいだ。そろそろ切ろうかと思うのだが…。そう言うと紫苑が眉をへにょっと下げたので保留のままだ。
植物魔法で召喚する異界の植物たちは、異界からこのエルドラドに移した。特にエビルローズはエルドラドを囲むように、生垣としてグルリと配置した。防犯と食料生産で非常に役に立っている。アビスウィローはエルドラドに隣接する『深き太古の森』に放し飼いにした。20年前までエルフ族が住んでいた森だが、魔獣を間引くエルフの王国が滅亡したために魔獣が溢れてくるようになった。魔王の配下が定期的に大討伐隊を組んでいたのだが、アビスウィローを放つことで大量発生を抑制。食い尽くさないか心配だが、そこは紫苑の親である邪神が調整するそうだ。
エビルローズの実は、妓楼の女たちの栄養事情を劇的に変えた。肌艶が良く疲れにくくなり、脚気や壊血病、夜盲症が減った。だがエビルローズの実を食べている女は妊娠の傾向が無くなり月のものもなくなったらしい。不妊…と聞くとあまり良くない傾向かもしれないが、エルドラドの殆どの女は妊娠を望んで居ないし、望んでいれば実を食べなければ良い……ということで落ち着いた。
紫苑が笑う。
ハルさんはすごいねえ、……と。
紫苑が俺を呼ぶたびに、甘やかな痛みが胸に走るのは何故だろう。
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