悪役令嬢の末路

ラプラス

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深淵の、その先に【1】

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 なにか、境界を越えたような気がした。

 気がついたらそこは真っ暗な暗闇で、時空の中のはずなのに、時間の流れが途絶えていて…それに、身体が鉛のように重たくて動かない。
 水底に沈んでいくような感覚に襲われる。それでも、抵抗するような気力はもう残されていなかった。
 金縛りにあったように、身体は動かなくて。
 私の意識も朦朧としていて。
 ああ、私、もう駄目なんだ。って、なんだか妙に納得していた。
 
 
 婆様、みんな、

 ローディー…。

 もう、会えないのかな。


「……っ……てを、………」

 
 次の瞬間、小さな手が見えたと思ったらぐいっと引っ張られた。その瞬間、私たちの立ち位置が入れ替わる。

 が、見えた。
 私は彼女に必死に手を伸ばそうとするのに、身体は動かない。それどころか彼女は満足げな笑みを浮かべている。笑っている場合じゃない!と怒ってやりたくなった。けれど、私にはどうしようもなくて、呆然と彼女を見つめている。
 次第に見えている景色が掠れていっていることに気づく。

 ーー今度はどこに飛ぶ。
 瞬間。私はフラッシュの光と共に消えた。


 ……ここは。


 「アイシアナ!」

 不意に呼ばれたと思ったら、私は自分の部屋のベッドの上で、みんなが心配そうに覗き込んでいた。

 「婆様!みんな…」
 「おお。目覚めたか」

 みんなは気を遣ってか、部屋を出ていっていまった。

 「心配かけてごめんなさい。戻りました」
 「よく戻ってきた。しかし…一体何があった」
 「…身体が消えて、戻ろうとしたとき、私は暗い闇の中にいました。きっと、何処か過去に落ちてしまったんだと思います。過去の映像をみました」
 「そうか…。よく戻ってきてくれた。練習と仕事は違う。今回の件でよくわかったであろう」
 「はい」

 妙な引っかかりを覚えつつも、アイシアナはそれ以上聞くことをしなかった。
 きっと、自分が見たものは自分には関係のない過去の映像。これ以上踏み込んでいてもしょうがない。婆様が部屋を出た後、私は筆を取った。



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