51 / 68
深淵の、その先に【1】
しおりを挟む
なにか、境界を越えたような気がした。
気がついたらそこは真っ暗な暗闇で、時空の中のはずなのに、時間の流れが途絶えていて…それに、身体が鉛のように重たくて動かない。
水底に沈んでいくような感覚に襲われる。それでも、抵抗するような気力はもう残されていなかった。
金縛りにあったように、身体は動かなくて。
私の意識も朦朧としていて。
ああ、私、もう駄目なんだ。って、なんだか妙に納得していた。
婆様、みんな、
ローディー…。
もう、会えないのかな。
「……っ……てを、………」
次の瞬間、小さな手が見えたと思ったらぐいっと引っ張られた。その瞬間、私たちの立ち位置が入れ替わる。
彼女が、見えた。
私は彼女に必死に手を伸ばそうとするのに、身体は動かない。それどころか彼女は満足げな笑みを浮かべている。笑っている場合じゃない!と怒ってやりたくなった。けれど、私にはどうしようもなくて、呆然と彼女を見つめている。
次第に見えている景色が掠れていっていることに気づく。
ーー今度はどこに飛ぶ。
瞬間。私はフラッシュの光と共に消えた。
……ここは。
「アイシアナ!」
不意に呼ばれたと思ったら、私は自分の部屋のベッドの上で、みんなが心配そうに覗き込んでいた。
「婆様!みんな…」
「おお。目覚めたか」
みんなは気を遣ってか、部屋を出ていっていまった。
「心配かけてごめんなさい。戻りました」
「よく戻ってきた。しかし…一体何があった」
「…身体が消えて、戻ろうとしたとき、私は暗い闇の中にいました。きっと、何処か過去に落ちてしまったんだと思います。過去の映像をみました」
「そうか…。よく戻ってきてくれた。練習と仕事は違う。今回の件でよくわかったであろう」
「はい」
妙な引っかかりを覚えつつも、アイシアナはそれ以上聞くことをしなかった。
きっと、自分が見たものは自分には関係のない過去の映像。これ以上踏み込んでいてもしょうがない。婆様が部屋を出た後、私は筆を取った。
気がついたらそこは真っ暗な暗闇で、時空の中のはずなのに、時間の流れが途絶えていて…それに、身体が鉛のように重たくて動かない。
水底に沈んでいくような感覚に襲われる。それでも、抵抗するような気力はもう残されていなかった。
金縛りにあったように、身体は動かなくて。
私の意識も朦朧としていて。
ああ、私、もう駄目なんだ。って、なんだか妙に納得していた。
婆様、みんな、
ローディー…。
もう、会えないのかな。
「……っ……てを、………」
次の瞬間、小さな手が見えたと思ったらぐいっと引っ張られた。その瞬間、私たちの立ち位置が入れ替わる。
彼女が、見えた。
私は彼女に必死に手を伸ばそうとするのに、身体は動かない。それどころか彼女は満足げな笑みを浮かべている。笑っている場合じゃない!と怒ってやりたくなった。けれど、私にはどうしようもなくて、呆然と彼女を見つめている。
次第に見えている景色が掠れていっていることに気づく。
ーー今度はどこに飛ぶ。
瞬間。私はフラッシュの光と共に消えた。
……ここは。
「アイシアナ!」
不意に呼ばれたと思ったら、私は自分の部屋のベッドの上で、みんなが心配そうに覗き込んでいた。
「婆様!みんな…」
「おお。目覚めたか」
みんなは気を遣ってか、部屋を出ていっていまった。
「心配かけてごめんなさい。戻りました」
「よく戻ってきた。しかし…一体何があった」
「…身体が消えて、戻ろうとしたとき、私は暗い闇の中にいました。きっと、何処か過去に落ちてしまったんだと思います。過去の映像をみました」
「そうか…。よく戻ってきてくれた。練習と仕事は違う。今回の件でよくわかったであろう」
「はい」
妙な引っかかりを覚えつつも、アイシアナはそれ以上聞くことをしなかった。
きっと、自分が見たものは自分には関係のない過去の映像。これ以上踏み込んでいてもしょうがない。婆様が部屋を出た後、私は筆を取った。
31
お気に入りに追加
1,804
あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。



【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる